1章-ex
申し訳ありません、これの前に2章を投稿してしまいました。
「…まさか、こんなことになるとはな」
とある洞窟の中。20人以上の集団が全員土下座をする中、普通に座る2人のうち黒づくめの男がつぶやく。
男の名はレン。盗賊集団・「七色の神器」のパーティの1つ、「黒の短剣」のリーダーだ。
「ああ。まさかあんな化け物が来るとは思わなかった。とはいえ、失敗は失敗だ。処分は俺1人でいい、部下に責任はねぇ」
もう一人は同じく「七色の神器」のメンバー、「黄の槌」のリーダー、イッシュ。
結界から逃げ出したのち、治癒魔法で足を治してもらってすぐに逃げてきたのだ。秀清がもし追いかけてきたら、と、この2日間気が気でなく、夜も眠れていない。
「いや、報告を聞くにその男が現れた時点でどうしようもないな。作戦決行日時を決めたのは俺だし、双方に責任があろう。擬神器を持って帰れたなら損失は複製済みの亜法陣だけだしな」
「…そう言ってもらえると助かるぜ」
黄の槌の構成員たちは安堵した。初めての作戦失敗でどのような罰を与えられるか想像できなかったからだ。殺されることを覚悟していた者も少なくない。
七色の神器とて組織である。一度の失敗で構成員をむやみに殺して人財を減らしたところでさらなる損失を生むだけなのだから、失敗をいかにしてこれからに活かすかを考えたほうがよほど生産的だと考えている。
だからといって当然甘いわけではないが。
「しかし、あの炎を素手でつかむ人間…? 本当にそれは人間だったのか。もしかしたら竜種の変身だったのかも」
竜種はリューオにおける絶対的な強者である。5個体が確認されており、その中に他の種族に化けて交流を図る友好的な個体も存在する。
いくら耐性が高くとも、あの炎に付与された貫通効果にたかが人間の肉体で耐えられるはずがない。そう考えての発言であった。
「あの馬鹿力と言い、化け物としか言いようがなかった。正直、あのエルフには近づきたくねぇ。あいつがまた現れると思うと…」
「…わかった。とりあえず、お前たちは拠点に戻れ。その謎の男の正体が判明するまで、キリュー家に関わらないことにしよう。すでに抱え込まれている可能性もあるからな」
こうしてこの件に関してはほぼ終わった。イッシュが化け物と呼ぶ人物。劣化品とはいえ、《赤の杖》の魔法をその肉体のみで受け止めるとは、明らかに普通ではない。今後も妨害される可能性があるし、《白の本》に相談し、調査してもらう必要がありそうだ。
あとは、オーナーに今回の失敗を報告しに行く必要があるが、それは別にどうとでもなると気楽に考えるレンであった。
こいつを入れるのを忘れていました…。
毎回、章の終わりに「ex」という話を入れさせてもらいます。