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1章-9 緊急依頼

今回下書きからこちらにコピペしたのち、大幅な改稿をしたために文章が雑になっていたり、構成がめちゃくちゃになっているかもしれません、申し訳ありません。

「この度は、わたしどもの命を救っていただきなんとお礼を申し上げたらよいか…」


 エルフの女性とその侍女、さらに意識を取り戻した護衛の女性2人が全員頭を下げる。

 ペルナさんいわく、あの結界は生き物に魔法を使わせない強力な物であり、ペルナさんも例外なく魔法を使えなくなるそうだ。

 もし外側にある式に迷彩だけでなくマナ浸透不可もついていたら、今この翻訳魔法も使えなかったそうだ。まあ、もしそうであっても結界の外に出るだけだし問題ない。


「わたくしはミーア・キリュー。アシュルト帝国の一卿、シノ・キリューの娘でございます」


「やはり、あの紋はキリュー家の物でしたか」


 ギラル、お前そういうのわかるキャラだったんだ。


「ええ。あなたは昨年までアシュルトで戦士業をなさっていたリザードマンさんですね。サティがお世話になったと言っています」


 ちらりと侍女、サティさんを見るキリュー様。サティさんは顔を赤くして軽くうつむく。


「え、あ! あなたはキリュー一卿令嬢のおつきの方だったのですか!」


「ええ。そうです。あなた、言ってなかったの。…でもよかったわね。またこうしてお会いになれて」


 なにかいたずらのように微笑むキリューイチキョウ令嬢。


「こ…今回も助けていただいて…。ギラル様にはなんとお礼を申し上げてよいか…」


「いや、今回は自分でなくシュウセイ様なのだが…」


 過去にも2人に近いようなことがあったらしい。

 それと、彼女を直接解放したのはギラルなので彼女の言うことも間違えてはいないだろう。


「わたし知ってますよぉ。個人としては帝都1の前衛でぇ、助っ人を依頼したパーティは依頼達成率100%ってことで有名なリザードマン。二つ名は『孤竜』」


「いやはや、それは周りが勝手に言い出したことで…」


 ローブを着たいかにも魔法使いっぽい女性に、ギラルが有名人だったと知らされる。彼女が魔法師という職種であろう。

 というか二つ名ってなんだ、随分と偉いようである。そんなものを付ける人を仲間にできたのだから、やはり仲間スキルは有能だと再認識する。


「して、こちらの方は…どうやら人間のようだが」


 護衛の一人の弓使いと思われる女性に素性を尋ねられる。キリっとした顔立ちの美人だがかわいらしい狐のような耳と尻尾が生えておりギャップを感じる。


「はじめまして。皆杜秀清と申します。皆杜は家名なので、秀清とお呼びください。人間ですが、魔人の方々にどうこうという考えはございません」


 魔人領にも人間がいることはいるが、かなり珍しい上によほどの変わり者だそうだ。あまりいい目で見られないかもしれない。


「シュウセイ…ふむ。寡聞にして存じ上げないのだが、君はどこの戦士ギルドに所属しているんだい。ギラル殿がいたとはいえ、あの絶望的な状況を素人でどうこうできるとは思えん」


 どうやらあまり疑われたりはしていなさそうだ。一応命の恩人だからであろう。マッチポンプだと言われたらどうしようもなかったが。

 ここで、ひとつひらめく。異世界人です、といきなり言うと昨日のリザードマンの集落のときのような白い目で見られるからそのことを隠そうと。ちょうど有名なギラルもいるのだ。


「いえ。まだ戦士ギルドにはいませんが、ギラルさんに見込まれて同行させてもらってます。今回はたまたま通りかかったのですが、お役に立ててよかったです」


 立場をギラルより下だということにした。ギラルのほうが知名度もあって社会的地位も高いのだから、彼を立てたほうが今後楽に物事が進むのではないか。悪い言い方をすればギラルに面倒そうなことを押し付けた。

 ギラルが「は?」といいたげな顔でこちらを見てくるが目と手で制す。腕の中のペルナさんは特に何も言わない。


「そうでしたか。ギラル殿は腕の立つ戦士で、学べることも多い。頑張ってください」


 ありがとうございます、と礼を言う。ギラルは苦虫を噛み潰したかのような表情だ。

 この後、侍女のエルフ・サティさん、魔法師の魔人・ケリーさん、弓使いの獣人・ミラさんと自己紹介を終え、これからのことに話題を移す。


「ここから1日ほど歩けば、ニマル村があります。そこにいけばアピスを譲っていただいて再び帝都への移動もできるのですが…」


 馬車はボロボロにこそなっているが、車輪は破壊されていない。牽引する動物さえ殺してしまえば移動もできなくなるとはいえ、不幸中の幸いである。


「護衛が取りに行くと、もう一人だけで2日間護衛をしなくてはならない。私たちは不運なことにどちらも後衛職で、それにここからまた帝都まで無事護衛ができるかというと正直なところ不安だ」


 キリュー様の言葉をミラさんがつなぐ。確かに、こんな何もない平原で護衛2人だけというのも不安になる。もともと11人いたそうだしな。


「実はこのままシュウセイ様とギラル様に緊急依頼として帝都までの護衛をお願いしたかったのですけど、ギルドに所属していないとなると…」


 サティさんが言葉通り困り顔をしている。ギルドに所属していないと頼めないようだ。

 あまり魔人の、というよりこの世界のルールを知らないオレには解決策も浮かばない。


「今回は自分にだけ依頼していただければ問題ありません。シュウセイさ…は、まあ、あまり褒められたことではありませんが、ただの一般人であり、たまたまずっと同じ道を通っていたとすればよいのです。この依頼を達成し、自分だけで処理を終えた後に新規パーティ申請すれば、ギルドの規律違反にもなりません」


 しかし、ギラルがすぐにまとめてくれた。

 オレはただ働きとなってしまうが、今はギラルの貯金があるのですぐお金を必要としているわけでないのだし、偉い人に恩を売れるなら悪くないとも思った。

 それに、彼女の本拠地という帝都にはいつか行くつもりであったし、ちょうどよい。


「ところで、そのかわいらしい猫さんは、シュウセイ様のペットでいらっしゃいますか」


 帝都に思いをはせているところに、いきなり地雷を踏むお嬢様。

 さっと顔を青くするギラル。どうフォローするか悩んでいるところにペルナさんの一言。


「にゃぁ」


 ギラルが大口を開ける。いったいどういうつもりだこの人、いや猫。

 ギラルがこの場を誤魔化すようにまくしたてる。


「そうです、ここであったのも何かの縁です。先ほど言ったように自分と彼が護衛につきましょう。ただ、ちょっと相談したいことがありますので一度2人きりにさせていただけますか」


「まあ。もちろん、かまいませんわ。ありがとうございます!」


 深々と頭を下げるキリュー様。この人はえらい立場だろうにあまりそれを感じさせない立ち振る舞いをする。賛否両論だろうが、オレは好感を覚える。




 ギラルがオレの背を押してこの場を離れる。ある程度歩いたところでギラルが声をかける。


「ふぅ。申し訳ありません。勝手に依頼を受けてしまって。しかもシュウセイ様とペルナ様はただ働きになってしまいますし…」


「いや、ああするしかなかったんだろう? オレは責任をギラルに押し付けたんだから、文句は何一つないよ」


 この言葉でギラルがハッとした顔をする。


「そう、それですよ。どういうことですか、シュウセイ様」


「あはは、いやギラルを表に立てたほうが話もこんがらがりもしないし、いいかなーなんて」


「異世界から来ましたなんて言うと昨日みたいに白けちゃうかもしれないし」


 オレとペルナさんの説明で、理解はするも納得はしていない様子のギラル。


「というより、オレよりもペルナさんですよ。なんですかさっきの」


「うん? あなたと同じことしただけよ。私はペットなのだから、あなたたちが失敗しようと私に責任追及はされないわ」


 先にやったのはオレだ。この件に関して文句を言える立場にない。


「あと、秀清。あの程度ならあなたでも運べるでしょ」


 ペルナさんの目線の先にあるのは巨大な馬車。いや、何を言っているのだこの猫。まさかこれを運べと言う気か。

 確かに筋肉自慢がトラックを牽引するようなテレビ番組もあるが、あれはそれよりも大きい。


「いや、さすがにあれは無理でしょう…」


「大丈夫、あの馬車は重量軽減の術式が編まれてる。見た目ほどの重さを感じないわ」


 なるほど。この世界は魔法や亜法があったか。そろそろこのような存在に慣れないといけない。


「魔法とか使ってエンジンみたいな動力つけられないんですか」


「理論ではできるでしょうけれど、私は専門外だから無理ね。彼女たちももともと動物に牽かせてたみたいだし、できないでしょうね」


 まあ、そうだろうなと思っていたさ。そうだ、わからないことがあった。


「ギラル、イチキョウってなに」


「ああ、貴族のことですね。階級がありまして、一卿から四卿と階級を数字で表します。一卿が一番格上となりますが、四卿も十分にえらい方々です」


「なるほど、つまり一卿の彼女はとてもすごく超偉い人ってことか」


 我ながら頭の悪い解釈である。


「そうですね。ミーア様はまだご息女ですので強い権力をお持ちではありませんが、お母様のシノ一卿閣下はアシュルトの貴族の中でも最有力と言われております」


「意外っていうと失礼だけど、ギラルそういうことも知ってるんだね」


「ランク4を超えると貴族の相手もするようになりますので、貴族に関しての最低限の知識が必要になります。シュウセイ様もすぐに覚えますよ」


 他愛のない会話もしたが、このときの相談で方針がおおよそ定まった。オレとギラルが護衛を兼任して馬車をニマル村まで牽いていく。その後、通常通りの護衛をして帝都まで行く。その後、戦士として登録し、依頼をこなす生活を送る。

 うん、まさに「異世界」を体験出来るプランだ。今後も楽しみである。






 先ほどの場所へ戻ると、ケリーさんが魔法で死体を処理していた。このまま放置するとゾンビになってしまうからしっかり浄化さなければならないが、ケリーさんが僧侶も兼ねていて神聖属性を扱えたことは幸運だったそうだ。

 死体の身体が光の粒になって天へと昇っていく。なかなか神秘的な光景にまた異世界を実感していると後ろから声をかけられた。見ると青い大人な雰囲気のドレスに着替えたキリュー様がサティさんを従えて出てきた。髪の毛はさっきまでロングストレートだったのを今は後ろで夜会巻のようにまとめている。馬車の中で着替えたのであろう。


「シュウセイ様、ギラル様。このたびは本当に助かりました。改めて、ありがとうございます。それで…あの…シュウセイ様」


 オレのほうを見ながら口をモゴモゴさせるキリュー様。どうした。


「不躾なお願いだとは思いますが…わたくしのことを是非ミーア、とお呼びしていただけますか」


「…え、それはミーア様、とお呼びしてもよろしいということですか」


「ええ。この場にいる皆様もぜひそう呼んでいただきたいのですが。でも、シュウセイ様にはいつか、ミーア、と呼び捨てにしていただければ…」


 赤面を両手で隠すキリュー様。耳もどんどん赤くなって垂れていく。

 護衛2人が「キャー」という黄色い声を上げ、サティさんも目をまん丸にして自分の主人を見つめる。

 ペルナさんとギラルは…うわっすげえニヤニヤしてこちらを見ている。


「さすがシュウセイ様、自分以上の色男ですね」


 小声でそう言われても、お前を基準にされてほめられているのかわからないぞ。

 これは…護衛以外にとんでもない依頼を受けてしまったものだ。

ギラルは「特例貴族」という、四卿と同程度の権力を持っています。

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