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カフェオレ  作者: ヤマト〆
第2章 共に
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その真実は

行き着いた先は、古ぼけた酒屋だった。木で作られた建物はあちこちが腐り、看板は傾き、描かれたビールのマークは酷く荒んでいる。


そんな酒屋に、二人はそっと暖簾を潜り中に入って行った。


「え…俺達入っていいのか?」


「いいわよ。さ、早く入りましょう!」


何だか少しテンション高めなカエデは、少しスキップ刻みで暖簾を潜り抜けて行く。


それを見つつ、溜め息を吐きながらアレンもそれに続く。


「うぁ…」


中に入ると、やはり外見相応の内装で、木の板を張ってる地面は、踏むと若干凹み、腐っている所を踏むと踏み抜いてしまいそうだ。


「うあぁ…すっごい汚いね」


「そんなどストレートに言うものじゃないと思うけど…」


カエデの真っ直ぐ直球な感想に冷や汗を掻きながら、二人を探すと、奥の店主と何やら話している。


「おーい、こっちこっち」


するとカイルが二人を見ながらクイクイと手を振り此方に来いと合図している。


「行こっかアレン」


「あぁ」


足元に気をつけつつ__


「ぶべらっ!?」


気を付けようと一歩踏んだ先を踏み抜くという惨事を犯しながらも、アレン達は何とかカイル達の元へ。


「だっせぇなおい」


「言うな!!そして笑うな!!」


クックックと笑うカイルにツッコミを入れつつも、ある疑問を口にする。


「なぁ?何でこんな__」


「ねぇ、このいかにも崩れそうな酒屋で何するの?」


「ぐは!?」


カエデの言葉に合わせて奥の店主がぎょっとしながらこっちを見つめた後、周りに負のオーラを漂わせながら食器を拭いている。


「あのなぁ…まあいいや。取り敢えず着いてこい」


カイルがやれやれと溜め息を吐いた後、店の奥のカウンター横、そこにある奇妙な赤塗りの扉を開ける。


「入れや」


その中は、とても綺麗だった。


一つ一つ仕切りで区切られていて、外から中の人が何をしているか見えなくなっている。


その部屋が全部で10個。そしてポツポツと扉が閉まっているので、中に人がいるのだろう。


因みに、中の人の声は全く聞こえてこない。何かしら処置が施されているのかもしれない。


四人は一番手前の部屋に入り、カイルとゼロ、アレンとカイルの二対二で座る。


ポーっと頭上で光るライトに照らされた二人を見て、アレンは初めてちゃんと顔を見た。


二人とも、一言で言えば容姿端麗だ。


カイルはツンツンの短い紅い髪、笑う時の八重歯がやんちゃっぽさを感じさせる。


一方ゼロは殆ど笑わない。いつも片目が銀髪で隠れていて、少し物憂げな感じが漂っている。


そんな太陽と月のような組み合わせの二人と今、向かい合わせで座っているのは何とも奇妙な話だ。


「さて…取り敢えず席に着いた訳だが…って、一人凄いウキウキしてる奴がいるな」


カイルは話始めようとしたのだが、一人だけウズウズと浮き足立っているであろう少女を見てしまったので、突っ込まずにはいられない。


「いや、だってここお酒飲めるんでしょ?一度飲んでみたいと思ってて!」


「…お前達歳はいくつだ?」


「俺は16」


「私も!」


「一個下じゃねーか!そんな奴にお酒何て飲ませるか!なぁゼロ?」


「あぁ……そうだな」


カイルが同意を求めてゼロを見ると、ゼロはウイスキー片手にコップに並々のロックを飲み干したあとだった。


「いや、いつの間に飲んでんだよゼロ!」


「さっきここに来る時に拝借してきた。カイルも飲むか?」


「いいねーでも俺はロックより炭酸水で割って飲むのが好きだから…って違う!ここには飲みに来たんじゃないんだよ!」


顔が朱色に染まってるゼロを横目に、カイルは頼もうとした腕を抑え、取り敢えず落ち着くべく深呼吸を一つ。


その間、アレンとステラは遠い目で見守っていたのだった。






「さて…なんか待たせて悪かったな」


「いや、別に…」


結局カイルもお酒を頼み、酌をしながら話は始まった。


大丈夫かと心配になるアレンだが、思ったより二人はお酒に強かった。


「そういや名前教えて貰ってなかったな?教えてくれるか?」


「あぁ…俺はアレン。アレン=アウストラ」


「私はステラ=カルヴァン」


「アレンにステラか。よし、これからは真剣な話だ。二人共心して聞けよ」


若干頬を朱色に染めながら笑うカイル。何だか気が抜けてしまうが、真剣な話なのは事実だ。


「取り敢えずアレン。お前から行こう」


「俺か…分かった」


最初にカイルにビシッと指差されたのは、アレンだ。アレンは緊張の面持ちで、カイルの話を聞く。


「アレン、お前は__天使の血を継いでる」


「天使の血…?」


アレンはいまいち実感が持てず首を傾げた。


天使とは、言わば神様の類に近い。空のもっと上にある天界と言われる場所に住む頭に金色の輪を浮かばせた空想の種族。


この人間界ではそう伝えられている。


「あぁ。実感が湧かないのは無理は無い。天使の血も人間の血も全く変わらないものだ。例え自分の体にそれが通っていても気付くことはありえないだろう」


ゼロが冷静に言葉を付け足す。それにカイルが頷き、続ける。


「その天使の血は確かに人間の血とは変わらないが、ある能力はある。それが使羅。天界の天使達が使う魔法みたいなものだ。

とはいえ、天使だから体に物理的な傷害は与えない。与えるのは精神の話だ」


「精神攻撃…?まさか…ずっと相手に向かって罵倒するのか?それとも唾を吐きまくるとか?」


「そんな天使想像するお前の想像力を賞賛するな…そんな訳ねーだろ」


アレンの子供っぽい答えに溜め息を吐いて、カイルは人差し指と中指をピンと立てた。


「天使には二つの固有の武器がある。それは__翼と矢だ」


「翼と矢…?」


確かにアレンが思い浮かべる天使には翼が生え、矢の先がハート型の矢とそれを射るための白い弓が思い浮かべられる。


まあ、これは恋のキューピッドと呼ばれる天使の話ではあるのだが。


「そう。翼と矢。これは武器というより固有スキルみたいなものかな。

翼は空を自由に飛ぶためのもの、矢は相手の心の闇を浄化させるもの。これを行使するための魔力を使羅と呼ぶんだ」


「しら…?」


アレンはぽかんと口を開けたまま固まってる。それを見たカイルは要約する。


「要は翼と矢を使うための魔力、それが使羅だ」


「なるほど…そんなものが俺にあるのか?」


「そうなるな。でも…お前はもっと上の力を持ってるんだよ」


「え…それより上があんのかよ…」


アレンは訳も分からずその話を聞く事にした。


「あぁ。普通の天使ってのはな、この使羅を使うのは天界限定なんだ。この使羅を操る魔力は天界にしか存在しない。

けれどアレンはこの人間界で普通に使羅の力を発揮している。これは結構凄い事実なんだよ」


「な…何か俺そんな凄い人間だったのか!?」


自分で自分を省みてもそんなスキルを持ってたなんてこれっぽっちも気づけなかった。


「…あぁ。そうだ。お前は凄い人間だよ」


この時、少しカイルの言葉に間があったことにはアレンは気付きもしなかった。


「ねぇ、どうしてこんな事を二人は知ってるの?不思議じゃない?天界なんて普通に出てきた言葉だけど存在するかも分からない世界の__しかもその能力なんて…」


ステラの疑問に対してカイルは、やはりとでも言いたげに満足気に笑う。


「そう言われると思ったよ。まあ、詳しい話は置いといて、俺達は過去の遺跡を発掘して色々な事象を調べてる探検家なんだ」


「探検家…かっこいいな!」


「その過去の遺跡から天界の存在やスキルを知ったってことなの?」


「んまあそんなとこだ」


少し曖昧な表現にステラは訝しげるが、これ以上迫っても意味はないと見たのか、無理矢理納得したようだった。


「色々と呑み込んでくれるのは此方としても助かるな。さて__今度はステラ、君の番だ」


カイルはおちょこに入った焼酎をグビッと一気に呑むと__


「ステラ、お前の生まれは魔女だ。間違いない」


「あ、ゼロ!俺が言おうとしてたのに!」


焼酎を呑んでいる所を遮られ、ゼロはそう言い放った。


「今度は俺の番だ。魔女の事は俺の方が詳しいしな」


「ま、それもそうだな」


カイルはゼロの言葉に納得し、さらにおちょこにお酒を並々注いでいく。


その音が響きながら、ゼロは話し始める。



「俺は相手の魔力の質が分かるんだ。だからこれは過去の文献何かではない。

ステラの内に秘めているその魔力は__魔女そのものだ」


「魔女…ね。うん、何となく気付いてたよ」


ステラは薄く笑っていた。納得仕切れなかった最後の一押しを貰った、アレンはそう感じた。


「そうか。なら、魔女の性質や能力は分かるか?」


「うん、何となくだけどね。でもアレンが分からない顔してるから教えて欲しいかな?」


ステラはゼロとの会話に置いてけぼりのアレンのため、そう言った。


「あぁ、良いだろう。一応ステラも聞いておけ」


こう前置きして、ゼロは続けた。


「魔女の特徴はまず、瞳の色だ。魔女全ての瞳は紫色で統一されている。それはステラも同じだ。

そして、魔女は黒の三角帽とマント、これを着ていつも生活している。場所は分からないが、この世界とは少しベクトルが違う世界で暮らしていると話は聞くが、詳しいことは済まないが分からないな。

そして魔女の魔法は天地魔法だ。天空と大地を司る精霊魔法を得意とする箒を攻撃の媒介とした種族となる」


捲したてるように言葉を放ったゼロは、疲れたと一言言い、何も喋らなくなる。


「ゼロはマイペースなんでな、許してくれ!とまあ、言いたい言葉を全部言ったが…アレンは大丈夫か?」


「多分頭がパンクしちゃったのかも…私は大丈夫。大方当たってたから」


「そうか。なら良かった」


カイルは満足そうに笑うが、アレンは頭がついて行かず口が開いたままだ。


「まあ、アレン。お前には全部分からなくたって良いんだから、取り敢えず落ち着こうな?」


「あ、あぁ…取り敢えず魔女が黒の三角帽でマントを着て生活してるのはわかったよ」


「分かったの一番要らないとこだけどな…」











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