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カフェオレ  作者: ヤマト〆
第2章 共に
13/19

ステラとは

ステラが連行された場所は、一番この辺りで大きく長い柱の上で佇んでる不気味な館だった。


紫を基調としたその装飾は、占いの館を思い出させるような仕様で、異質な雰囲気を醸し出す。


因みにここにどうやって来たのかと言うと、率直に言えば飛んできた。


その飛ぶ道具は、箒と呼ばれる長い木でできた柄の先に笹のような茶色い木を何本も差し込んだ物である。


それに跨るとフワリと浮き、ここまでやって来た訳だ。


(これって私も出来るようになるのかな…?)


何て考えながらここに辿り着いた。


「さあ、こっちに来い」


「…はい」


黒装束に連れられて、茶色い扉を開け、中に入っていく。


ギギギギと擦れる音を立てながらその扉は勝手に閉まっていく。


もうここから逃げられない__そう言ってるかのようだった。


「さぁ来い」


黒装束もとい魔女は、螺旋の階段を上に登っていく。


それに続いてステラもそれを登っていく。白で造られたその螺旋は上へ上へとステラを誘っていく。


「ここだ」


螺旋階段を登り終えて、少し奥に進んだ先に、それはあった。


重厚な紫の扉に、漏れる紫の光。奇妙なその光景にステラはどぎまぎさせられながらも、扉に手を掛け、一気に押す。


するとその紫の光は強くなり、ステラは前が見えなくなった。


「う…」


扉が閉まり、ステラは慣れてきた目を少しずつ開ける。


先ず見えたのは地面に描かれた謎の魔法陣だ。紫光を明滅させるそれは、まるで生物のようだ。


「来たな。魔女の子よ」


地響きのような嗄れた声は、前から聞こえてきた。


「貴女が大婆様…?」


「如何にも」


この部屋は魔法陣を中心に円になるような部屋の造りをしていて、今ステラは魔法陣の中心辺りにいる。


そこから前を向くと教壇のような茶色い机があり、そこにその大婆様は立っていた。


そして魔法陣を中心に部屋の壁側には席がたくさん設けてあり、チラチラと魔女達が座って此方を見ている。


一言で言うならば、裁判所のような造りに近いのかもしれない。


「お前は何しにここに来た?増してや人間共を連れてきて…何をする気だ?」


大婆様の顔は険しく、ステラに対して猛烈に警戒心を抱いている様子だった。


だが、それは逆にステラには不思議な事に思えた。


先程の魔女達もそうだったが、酷く人間を怖がっているように見える。


その事についても聞きたいが、先ずはやる事がある。


「私は__記憶を取り戻したい。自分がここで生きていた時の記憶を」


「何…?記憶を取り戻したいと?何故だ?」


「自分自身をもっと知りたい。最初はそれが大きかったけど、今は周りにいる人達の力になりたい」


謎が多いが、とても頼りになるゼロとカイル。


そして、ステラ自身を救ってくれたツッコミ役のアレン。


「誰がツッコミ役だ!って言われそう…ふふっ」


その姿が容易に想像出来て、ステラは思わず笑ってしまう。


それを見て、大婆様は言った。


「なるほどのう。分かった力になろう」


「え!?本当に!?」


頗る簡単に了承した大婆に、ステラはつんのめりになる。


「あぁ。だが、記憶を戻す事はもう出来ぬのだ。その代わりに、お前の父親の所への地図を捧げよう。

そこに行けば、お前の人生が分かる筈じゃ」


「私の父親…分かったわ」


ステラの父親__今の記憶の無いステラにとっては赤の他人同然になってしまう。


自分はどんな顔をして会えば良いのだろう。


そんなモヤモヤした気持ちになっていると、事は運び始め、ステラは一枚の古ぼけた地図を貰い受けた。


「そこに行け。そこに行けば父親に会えるだろう」


「うん。分かったわ」


ステラはそれをクルクルと丸めると、ポケットにしまい、大婆様を見上げる。


「ありがとうございます。感謝します」


「あぁ。素敵な1日になるだろう」


ぺこりとお辞儀をして、ステラはその部屋を後にした。


「うひひ…ひひひひひ…ひゃはははははは!!!」


ステラが部屋を出て行った後、大婆は顔をくしゃくしゃにしながら高らかに笑った。


それに釣られて、周りに座っていた魔女達もくすくすと笑い始める。


「あぁ!何て楽しい日だよ!久々だよこんなのは!」


叫ぶ大婆の瞳は紫が広がっている。だがその奥は__


「人間を呼んだ罰を受けるがいい…ひゃはははははは!!!」


どす黒く、濁りきっていた。




***




ステラは今、館から出てきた所だ。


ここから見ると、最初の崖から見た景色とはまた違った景色が見えてくる。


あちこちにある支柱の上にあるのは、家や色々な施設。それが高低差をつけて各地に存在している。


そしてそれを行き来するのは決まって箒だ。ここに暮らしている皆の移動手段は箒一つ。


エスカレーターやエレベーターなどの物理的な移動方法は、歩く以外には見当たらない。


「ていうかこれ…どうやって行くの!?」


辺りを見渡しても橋などは付いてないので、完全に孤立している。


これにはどうにも困った状況である。


「も、もしかして…私も箒とか出せるのかな…?

物は試しにって言うし…」


ぶつぶつと独り言を言いながら、ステラは取り敢えず試してみることにした。


右手を前に突き出して__


「出でよ箒!」


有りそうな言葉を吐いてみて、凄く恥ずかしくなり顔を真っ赤にしながらも様子を見る。


「…何も出ないじゃない!!」


地団駄を踏もうとした矢先、目の前が白く光り始め、するりと光の中から箒が姿を現した。


「本当に出た…十六年生きて初めて知ったわ…って記憶失ってるから当然か」


記憶を失う前は箒を出す度にこんな掛け声をしていたのかと思うと恥ずかしくて穴に入りたくなる。


「取り敢えず…早く行こ…」


周りからの視線が気になってきたので、箒に跨ってさっさと行こうと思ったが、ここである事に気づく。


「どうやって浮かせるのよこれ!!もう!一人漫才やってる訳じゃないんだから!」


と、自分に言い聞かせ試しに魔力を流し込んでみる。


普通、物質に魔力を通わせるのは時間がかかるのだ。それが見知らぬ物ならもっと難しくなるのだが、この箒はすんなりと出来た。


魔力が通い始めると、その箒はまるで重みが無くなったように軽くなった。


これは行けると確信したステラは、勢いよく上に飛び跳ねる。


すると、その箒もステラにつられて上に上がり、そしてその位置を保ったまま浮き始める。


ステラはその上に跨っているのでこれは成功だろう。


「わ!出来た!」


初期ステップを難なくクリアしたステラは、今度は動かす事に集中する。


「イメージ…イメージ…」


魔法を行使するにあたって一番大事なのは、想像力と言っていい。自分が出来ると思い込む。それが一番の上達方法だ。


ステラは自由に動くことをイメージしながら箒を魔力で操作する。


すると、箒は前へすうっと動き始める。


「よし!これさえ出来れば!」


ステラは取り敢えず下が森になるまで前へすうっと動かし、そして下にゆっくり降下させていく。


(下を見たら終わり…下を見たら終わり…)


ステラが目を瞑ってただ魔力操作に尽力していると__風が吹いた。


「あら、ごめん遊ばせー!」


「え…」


この時点で二つ問題が起きた。


一つは集中が途切れたこと。そしてもう一つは下を見てしまった。


「ひいぃ!」


高いと思った刹那、箒が揺れ始め重力の影響を受け始める。


「うわぁ!!うわぁぁ!!」


ステラは恐怖と焦りで箒から滑り落ちそうになり__


「きゃぁぁぁ!!!」


真っ逆さまに下の森へと落ちていった。


「ちゃんと…しなさい!!!」


箒に力を入れ、浮く事だけを考える。だが、中々浮かない。


「このぉぉぉぉ!!」


こんな事で死んだら死んでも死に切れない。ステラは全身全霊を掛けて魔力を箒に流し込んだ。


すると__箒は止まった。


「良かっ…」


何とか勢いは止まって、ステラはホッとした。すると、箒はあろう事かそのままギュンと真っ直ぐに高速運動を始めてしまった。


そして高速運動では物足りず、上へ下へ、右へ左と方向転換を加えながら、まるでジェットコースターの如く空を徘徊する。


「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」


両手で箒を抑えながら、ステラは泣きべそをかきながらも取り敢えず箒を握り締める。


するといきなり箒は動きを止め__一気に森へと落ちていった。










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