その歌は
「なにぃ!?歌が場所の手掛かりになるかもしれないだとぉ!?」
朝一からテンションの高いカイルが、朝食を食べながら大声を上げた。
「うん…取り敢えず口の中のもの呑み込んでから話そうよ」
そう言われて、カイルは口の中のものを全部一気に呑み込んで、水を一気に飲み干した。
「なにぃ!?歌が場所の手掛かりになるかもしれないだとぉ!?」
「いや、別に初めからやり直そうって訳じゃないよ!?」
朝からツッコミをしてるアレンをゼロは平坦に、ステラは苦笑いしながら眺めている。
取り敢えずカイルとゼロに、アレンの昨日から気になっていた部分を全て説明した。
それをうんうん頷く二人は、
「要するに二人で良い眺めの屋上でいちゃついてた訳だな?」
「うん!大切な事が何も伝わらない!言葉って怖いね!」
何故歌の方ではなく、シチュエーションに目がいくのか。まあ、確かに良いシチュエーションではあったのかもしれないが。
「あ、今確かに良いシチュエーションだったけどって思っただろ?」
「読心術でも心得てるのかよ!?」
「否定しないアレンもアレンで、可愛い奴だな」
と、カイルとゼロに弄ばれ、アレンの顔は真っ赤になる。
「〜〜!!くそぉ!!!」
とまあ、アレンが遊ばれた所で話は最初に戻る。
「ステラの覚えてる歌がローズランドへの手掛かりになるって事だよな。そんな上手い話があるもんかねー」
爪楊枝で歯を綺麗にしながら、カイルは訝しげにそう言った。
「まあ確かに信じられない話かもしんないけど…本当なんだよ!」
「まあいいや。それは、ステラの歌を聴けば分かるって訳だよな?」
アレンを突っ撥ねて、カイルの視線はステラに向く。早い話、本人に直接聞くのが一番手っ取り早い。
「まぁ…そうなのかな?でも…ここで歌うのはちょっと…」
周りの視線もあり、ステラは歌うのを拒否。それを見かねてアレンは、
「いや、俺多分昨日の覚えてるからさ!そんで歌じゃなくて紙に書くから、それを見てくれよ!」
と、一つ提案する。
「んまあそれで良いならそれでいい。とにかく早く見せろ」
「さっきまではあんなに弄ってきたくせに…横暴だ…」
世の中の理不尽を嘆きながら、アレンは紙に昨日の歌を書き込んでいく。
そしてそれは出来上がり、机の真ん中にバンと叩きつける。
その書き記された歌詞は次のとおりだ。
「いつもいつも暗がりの夜。君はそこで迷子になってしまったね。月明かりに照らされて、狂った眼光は迷い人を惑わせて、深い深い闇に引きずり込んでしまうよ。頼りになるのは木々のざわめきだけなのさ。果てにいるのは鼻の高い大柄な男。さあ行こう、そこを抜ければまた日は昇る…か。
何か物語みてーな歌だな」
歌詞を一通り読み上げたカイルは感想を一つ溢して椅子にふんぞり返り、腕を組んだ。
ゼロも同様に静かに座り込んで腕を組み始める。二人共唐突に静かになり、何だかアレンは居心地が悪くなる。
「なぁ、何か分かったか?てか、俺の推測間違えてなさそうだろ?」
「……」
「俺昨日の歌をこの歌詞で聞いて、これはもしかするともしかするんじゃないかと思って言ってみたんだけど…」
「……」
「ガン無視!?」
「うるせーな!考え中なんだから静かにしろや!」
文句を言われシュンとなるアレンに、遠目で見ていたステラは苦笑いしか出てこない。
「多分、常闇の森の事かもしれないな」
ゼロがポツリと呟いたその一言に、カイルはハッとなる。
「お前よく覚えてたなそんなとこ…そう言えばあそこは年中真っ暗な森なんだよな?」
「あぁ。まあ確信は無いが、行ってみる価値はありそうだぞ」
「良いね。価値があるなら行くべきだろ」
カイルは嬉しそうに笑う。どうやらワクワクしているらしい。
「つー訳で、今から常闇の森に出発するけど、良いよな?ここに思い入れがある訳とかじゃないんだろ?」
カイルの提案に、アレンもステラも快く同意した。反対する理由なんて皆無だ。
「でも、一体どこにあるんだ?ここから近いのか?」
「遠いな。歩きや馬車等使っても一週間以上掛かる。何せ北端だからな」
さらりと、とんでもない事を言ったゼロにピンと来てないのはアレン位だ。
「おいアレン…お前ここがどこら辺なのか知らねーのか…?」
「え…ま、まぁ…教えて貰った事はあるけど…忘れた…」
カイルの恐る恐るの質問に、アレンは顔をひくつかせながら、そう言った。
カイルはそれを聞いて、一つ溜め息を吐くとこの世界についての説明を始める。
この世界は大きく分けて三つの島国がある。それぞれアランド、ドルイノ、ベースタと名が付いている。
その中のアランドという南の方の国が今いる島国である。そして、その中の南方に位置するのがここ商業都市アガウシテン。
他にも王立国家都市エビスノキ。機械都市ギガントルミ。この島国で代表するのが今挙げたその三つの都市だ。
そして常闇の森があるとされる場所は北の島国ドルイノだ。年中雪が積もりやすく、日の沈みが早いその島国は、とても住みにくく、あまり人気はない。
もう一つのベースタという島国はここでは割愛しよう。
「まぁ要は取り敢えず、俺達はこのドルイノっていう国の、常闇の森って所に行けば良いんだろ?」
「んまあ端的に言えばそういうこった。取り敢えずこれから準備して、さっさと行きますかね」
「そんな軽い感じなの!?」
カイルはこれから呑気に買い物にでも行くかのような口ぶりに、アレンは過敏に反応した。
「やはりツッコミ役は必要だな」
「う〜ん、俺的にはもっと笑いを取りに行こうっていう姿勢があればもっとツッコミ役として良くなると思うけどな」
「批評家か!?てか、別にお笑い芸人になるつもりもツッコミ役になるつもりもないからね!?ってツッコミを入れてる俺は本当になってしまうかもしれない!」
一人嘆き悲しむアレンにカイルはやれやれと言わんばかりに溜め息を吐く。
「まあ、俺達がこんな余裕そうなのは策があるからだ。ツッコミ役のアレン君。ちゃんと安心しろ?な、ゼロ」
「あぁ。そこら辺は俺達に任せておけ。ツッコミ役のアレン大佐」
と、二人はアレンを小馬鹿にしつつも胸を張りその場を離れて行った。
「はぁ…俺寿命縮まりそう…」
「何か…大変だねアレンは…」
ステラもツッコミ役を否定することなく、慰める事も出来ず、ただ苦笑いするだけであった。
「取り敢えず…部屋戻ろっか?」
「おう…」
アレンとステラは一旦部屋に戻り、着替えを済ませ支度を終える。
「よく考えると…何も持ってねーや俺…」
「私も…」
何故かその現実に悲しみを覚えていると、カイルとゼロがやって来た。
「おーいお前ら。支度は出来たか?…って言っても支度するもんなんか持ってねーよな」
「そう言うと思ったよ!!そうですよ!!支度するもんかないよ!」
半ば逆ギレのアレンにカイルは含み笑いすると、外に出ろと合図した。
三人が外に出ると地面に一つ、幾何学的に描かれた落書きのようなものが描かれていた。恐らくゼロが描いたのだろう。
「え…これは?」
「魔法陣だよ。見た事位あんだろ?」
「へ…?あ、あぁ…あ、あるよ?ナスカの地上絵みたいなものだろ?」
「…一体どういう生き方したらそんな無知で過ごせるんだ…?」
アレンが当てずっぽうに見当違いの事を言い、カイルはもう呆れ果てていて、最早若干引いてるくらいだ。
「魔法陣っつーのはな?魔法を顕現させるための式みたいなもんで、それを予め書く事によって詠唱せず、且つ魔力の消費を抑えて発動出来るんだよ。
これが一般解答で、これを使って魔法を使うってのがアレンのための解答だ」
「うん、魔法を使うって事だけは理解出来た」
「お前の頭の中に脳みそがあるのか俺は問いたい!」
そんなやり取りをしていると、ゼロが此方にやって来た。
「さぁ、位置の調整も終わった事だ。行くとするか」
平坦に、これから未知の領域に踏み込もうとしているアレンにとってある意味羨ましい限りだ。
「ステラ準備は良いか?」
「う…うん…」
緊張しているのはアレンだけでは無いらしい。ステラも顔を強張らせて頷く。
これから自分の記憶に無い故郷に帰るのだから無理も無いのかもしれない。
「__なら行こう。四人共魔法陣の中へ」
ゼロの静かな掛け声に、三人は魔法陣の中心に移動する。
「転移!」
刹那__そこから人影は無くなった。




