表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/60

釈然としない決着

 相川に投げ飛ばされた先で瑠璃は現状を把握し、そこが相川の拠点であるということを理解すると同時にそこでどうやら実況と思わしき音声が流れているモニターを至近距離で見つめているコトハを発見した。


「どうなってるの⁉」

「……どうなってる……えぇと、一先ず、無事……なのかしら? 貴女が飛ばされてから特に変わった様子はないけど、強いて言うのであれば相手の残数と思わしき数を相川が言い当てて戦いが佳境を迎えてるのかもしれないというところね……」


 コトハは自身も混乱しながらそう答えたが、瑠璃はそう言われてもよく分からなかったらしく、急いでモニターの方に駆け寄る。そのついでに知らない人に気付いて瑠璃は困惑した顔で挨拶した。


「えぇと……? あれ、どこかで……?」


 しかし、相手は色々と忙しそうで瑠璃のことなど気にしていない。どうやら瑠璃には何があったのか知らないが、ショッキングな出来事があったらしく何やら考え込んでいるらしい。そんな彼女のことなど瑠璃はあまり気にしていないので挨拶は一応したということで瑠璃はモニターを見た。


「……スルー……? 何と言うか、流石ね……私だって相川のアレは受け止め難いというのに……」

「何が? 別に仁が何しようと儀式に問題なければコトハにはあんまり関係ないでしょ? 寧ろ頑張ってる仁に何か落ち度でも?」

「そうじゃないけど……流石に小さな女の子になったり変なことし過ぎじゃないかしら……? いや、別にその状態は相川自身が嫌っているみたいだから滅多に出てこないだろうしいいのだけど……」

「ふん。ボクなら全部受け止める。」


 豪語する瑠璃だが実際に相川が幼女状態になった時は半分心が壊れて笑っていたのをこの場にいる面々に見られている。それはさておき、モニター内では青年状態に戻った相川がドエスノ相手に攻撃と思わしき何かを仕掛けているところだった。






「さてさて、そろそろ君の術式無効化スキルに関しての解析が終わりそうだよ。したらば、君はもう用済みだ。ディープキスから仕込んでショタ好きのおっさんに売り飛ばそう。なぁに、直に気持ちよくなるから安心しろ。」

「ッざっけんなァッ!」


 己が沽券に関わる問題を格下相手に舐めた調子で告げられ吠えるドエスノ。その口を相川は自らの口で封じ込めた。入り込む舌の感覚に極度の混乱状態に陥ったドエスノだがその直後に相川の口からひねり出されたミサイルによって爆裂し、頭を失う。


「燃えるようなキスの味とはよく言ったもんだ。さぁ、後4回。おきばりやす。」

「キッメェんだよ! 死ね! 死ね! 死んでしまえ!」

「なんだかんだで可愛い顔してるのが悪い。ところで、キスして気付いたがお前……哀れだなぁ。何かもう悲しくなってくる。世界の原神ともあろうものがこの程度とは……」


 この嘲笑と憐憫の籠った相川の一言にドエスノはブチ切れた。そして、目を血走らせると高速で詠唱を始める。


「んー? 何か言い終わる前に殺しておくか。」

「肉を抉り、骨を断つがいい。この身体が朽ち果てようとも次の躰で貴様に絶対なる死を!」

「……じゃ、こうしよう。」


 ただならぬ空気を感じ取った相川は笑いながらブレた。その直後、相川の両脇に仁奈と仁美が現れて相川の両頬にキスをしながらドエスノに微笑んだ。


「くくく。言われた通り自分の肉を削って俺を増やし、恐らく本来の俺に戻った瞬間に今の俺を恨み骨髄に徹すレベルで何らかの処置を下す状態に持って行ってやったぞ? ん? そしてこいつらも俺だから同じレベルで……」


 相川はそこで話を切った。いや、違う。頭から上が消し飛ばされ、問答無用で言葉を話すことが出来なくなったのだ。


「ハーッハッハッハッハァッ! ザマァ見ろゴミ屑がぁっ! 油断してるからだカス! 【消滅術式】、【ない】ことを創り出す、絶対なる能力だ!」


 【消滅術式】。死という概念を超えたその一撃。これが決まった時点でドエスノの勝利は間違いのない物であり、青年の相川という存在は消滅した。


「すごーい……!」

「さて、メスの相川どもか……ダルマにして女になったことを後悔するように犯してやる……!」

「え、私たちだって元は相川なのに……キモくない?」


 仁奈とドエスノに聞こえるように話す仁美。それを嗜虐的に見据えたドエスノは杖から不可視の一撃を放とうとして……背後から肩を叩かれた。


「あぁん? ……まさかっ!」

「Oh Yes, Come on! Univeeeeeerrrse!」

「アッグ……てめ、本気で……」


 再び死ななければならないのか、こんなに厄介な存在がいるなど知らなかったとドエスノが嫌そうな顔をして1度死に、そして蘇ると……目の前に信じられない光景があった。


「バカな……何で、お前が……」

「【消滅術式】……まさか、使えるやつがいるとはなぁ……それ、いただきます。」

「ァ相川ァァッ! テメェ何でここにッッ!」

「【等価交換式】……情報原理、小括。……うん、通ったから言おうか。」


 いつの間にかそこに復活していた相川はその黒き瞳に様々な文様を浮かばせ、気味が悪い状態で発光させながら簡潔に告げた。


「まぁ、俺のことを簡単に言おうか。俺は、【欲】を扱う化物だ。この世に欲がある限りは俺はなくならない。例えば、【消滅】っていう絶対的な力を用いたとしても【俺】を消すことが目標な時点でその欲を狂わせることが可能。また、仮に通ったとしてもここにいるバックアップの【私たち】がいる限りは……」

「何だそれは……そんな俺が考えた最強の能力みたいな……」

「うん? 別に最強じゃないよ。この能力をきちんと使うためには俺が最低2人は要るし、同時に殺した状態で無心になってこの辺り全ての魔素、素氣、原子の類に粒子なんかとエネルギーを取り除いて殺せばいい。それだけで、死ぬ。」


 そんなことできる訳がない。殺すためには何らかのエネルギーが必要であるのにそれを完全に遮断しておかなければいけないなど……少なくとも、さっきまでのドエスノには不可能だった。


「ふん……長々と解説ありがとうよ! おかげで術式行使の時間が稼げた! 理ごと捻じ伏せて全て【消滅】させればいいだけの話! さぁ消え失せろ!」

「別に解説したくてしたわけじゃないからお礼はいいよ。」

「遠慮せずに喰らえ……【nadaclear universumnichts】!」

「食べないよー! 【な「双方、そこまでです!」……⁉」


 光も闇も存在しない無の波動が、何も感じられないままにドエスノから発されようとしたその時。凛とした声が場に降り、その波動が奇跡的に収束してドエスノを封じた。


「……チッ! 【運命神】か!」

「口を慎みなさい。そして、死になさい。」


 ドエスノが悪態をついた次の瞬間、彼の首が刎ねられて鮮血が舞う。何が起こったのか分からないままドエスノは首を落とし……その首を【運命神】に捉えられる。


「こりゃマズいわ。逃げろ!」

「てっしゅーでごぜーますよ!」

「ここは私に任せて先に行け!」


 先程まで拮抗していた争いを繰り広げていた相手がいとも容易く捕まったのを見て相川は逃走を図る。しかし、その目の前には既に【運命神】が回り込んでいた。


「うふふ……初めまして。ですが、まだ早いので……お休みなさい。」

「ッ!」


 相川が反応するよりも早く蠱惑的な笑みを浮かべて挨拶し、相川に魅了を発揮。それに抵抗するために相川が目を閉じると彼女もそっと目を閉じて即座に詠唱に入る。


「……【斯くして運命は収束し、彼の者は一つに戻る】……おめでとうございます。試験は文句なしのクリアとさせていただきますので……それでは。」


 優しげな声音でそう告げると【運命神】はその場から消え、青年の姿だけに戻された相川も数秒後にはその場から転移して別の拠点へと飛ばされるのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ