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ぎりぎり

多分、R-15です……?

「……これでいいのよ、これで……」


 部屋を出たコトハは誰もいないというのにそう呟いて、自嘲した。


「……いいの?」


 誰もいない。誰も聞いていないはずと思っていたところにるぅねが現れてコトハにそう告げる。コトハは少しだけ驚いた様子を見せたがるぅねが来るのも予想の範囲内と言わんばかりに笑いかけ、そして二人が居る部屋から離れながら頷く。


「でも、コトハは……」

「最初から二人の間に入り込む余地なんてないくらい、お似合いの二人よ。」

「……やっぱり……」

「大丈夫よ。まだ、深入りする前だったから……」


 色々言いたげなるぅねだが、当人を差し置いて彼女の心情を語ることも出来ず、部屋の様子を気にしては項垂れた。そんな彼女にコトハは告げる。


「……ごめんなさいね?」

「……何が……」


 なぜか急に謝罪を受けたとるぅねは首を傾げてコトハにその言葉の意図を確かめようとし、それを遮られる形で答えを受け取った。


「色々、話してくれたのに全部無駄にして……」

「それは、別に……」


 るぅねからすれば利己的な態度でそれを行ったのだ。無駄に考えさせられたと責められることがあっても謝罪を受けるとは思わなかった。


 しばしの沈黙。そして、コトハはるぅねに吹っ切れた様子で告げたのだった。


「さ、二人がよろしくやってる間に私たちは離れておきましょう?」

「でも……」

「いいのよこれで……」


 コトハは語気こそ強くなかったが、拒否させないような口調でそう告げた。るぅねは後ろ髪を引かれる思いを隠すことすら出来なかったがこれ以上は【言霊】を使ってでも思うようにしそうな相手だと判断して黙って引き下がるのだった。






「えへ……えへへへへ……あつい、ね?」


(マズいまずい、まずい……頭が、壊れる……理性が……【白蘭冷氣却法】……ダメだ、瑠璃相手じゃ、役に立たない……!)


 一方、これではよろしくない展開に引きずり込まれそうだと室内では相川がほぼ死に体の理性を総動員して体を動かそうと頑張っていた。そんな相川の上に覆い被さっている瑠璃は胸元をはだけさせ、魅惑の果実を相川に擦り付けながら蠱惑的な笑みを浮かべている。


「ま、て……」

「んーん、だめぇ……おっきくなーれ、おっきくなーれ……」

「【呪われろ】」

「いやー♪」


 体内に収納していたモノを魅了で体外に露出させられ、弄られる。散発的に呪いや攻撃を加えるが、その程度は意にも介されない。相川の頭は正常な判断が出来ないまま半分なすがままだった。


「……あー、これ本当マズいな……どうしよ、後でコトハを〆るのは確定としてんぐっ……」

「……ぷは、……いまぁ、ボクとえっちしてるのー……他の子、だめー……激しくしちゃうよぉ……?」


(……あー、また魅了の体液が……これでしばらく口を開けないな……体液猛毒の俺より厄介なんじゃ……?)


 舌を絡ませ、流し込まれた甘い液。相川からは表皮からでも吸収できて触れて1秒せずに卒倒できる劇薬を送り返してやったが瑠璃には効かない。相川の方に流された瑠璃の甘露の効果はばっちり効いている。


(まぁ……最悪挿入さえ凌げればいいか……瑠璃だし。後で記憶を毟り取って全身消毒させて少し表面を溶かしてから回復させれば別にいい範囲だ。)


 世間一般的に別にいい範囲では済ましていない事後処理方法を考えて為すがままにされている相川。この状態に瑠璃がなったのは2度目であり、今の状況は相川が今まで生きてきた中でトップ10に入る程度の慌て具合だ。割とまずい。


 因みに、最初に瑠璃がこんな状態になったのは瑠璃が相川のことを好きだと認識した後、もっといい相手がいると瑠璃にしつこく勧めた時で、壊れてハイライトを失った瑠璃の相手をするのは相川の生の中でもベスト5に入る慌てようだった。その後は1月ほどご機嫌取りをし、二度と無理矢理他の相手にくっつけようとはしないということを誓わされた。


(まぁその時も局部を舐める程度で済んだし……入らなければいいでしょ。絶対に記憶は毟り取って八つ当たりするけど。)


 諦めて時間が過ぎるのを待つことにした相川。しかし、ふと上を見上げると影が下りて来て……


(え、嘘……)


 顔に、瑠璃が乗った。どうやら二つ巴の体勢で首固めに持ち込まれたらしい。濡れた下着から垂れた粘液が顔に付着し、相川は逃れようとするもホールドは解けようもなければ文字通り急所を掴まれているのでどうしようもない。仕方ないので視覚情報で興奮するのだけは避けようと目を閉じると、急に劣情を催し始めた。


「ッッッ! しまっ……」

「あはっ! 大きくなったぁ♡」


 下の唾液は、上よりも数千倍か。気付いてボケた頭で反射的に解毒のために息を吸おうとし……相川は大量に摂取した媚薬で蕩ける脳で失策を悟る。その時には既に遅く、瑠璃は歓喜して体勢を素早く正常に戻した。そして酩酊状態にある相川の顔を丁寧に舐めて味わい、下も味わおうと腰を下ろす。


「やめっ……」

「あはっ♡ あぁ……入って……」


 先端が、温かい感触に包まれ、脳が痺れ、体が弛緩する。


(ダメ、やば、これ……賭ける、か……)


「~ッッ!」


 声にならない声を上げ、相川は白目をむいた。流石にその状態になると瑠璃は動こうとするのを止めて劣情を更に煽るようなきょとんとした顔で相川の顔を覗き込む。


「……?」

「……アは……アハハハハハハハ!」

「あはははははは!」

「え、ちょっと待って? そぉい!」


 挿入……膜を破っていないことなどの総合判定でギリギリしていない。何とか間に合った相川は瑠璃の尾骶骨目がけて膝蹴りを叩き込んだ。まさしく鬼畜の所業。瑠璃は衝撃で相川から浮き、抱き着きから解放することこそないが、下に関してはそれを完全に解放した。


「ぅぐ……るぅ~っ……!」


 しかし、瑠璃は涙目になるだけで仕切り直しと言わんばかりに元の体勢に戻る。今度は何だか相川の上で正座するかのような体勢で、蹴りが放てない。その様子を未だに瑠璃の甘い毒が残って動けない相川は見るしかできなかった。


「えぇ……こういう時は狂ったか? みたいにちょっと引いて様子見……あ、待って。お願い。俺、このモード一か八かでまさか出せるとは思ってなくて、初披露なのに。ねぇ聞いて? まだ入れるなって……」


 別人格、新技。全部台無しにされた相川は会話を試みつつ魅了を逸らして何とか術式を行使した。対する瑠璃は言いたいことはそれだけか? と微笑みを浮かべたまま聞いてキスをした後に応える。


「だって、好きなんだもん。愛してるの。だから、ね? いっぱい出して♡」

「こ、こんなムードのないところで、しかも床で、瑠璃はそれでいいのかな? ねぇ待って。話してるよねぇ?」

「……何か段差がある……いれられない……じゃまぁっ!」


 決して相川を傷つけないように暴れる瑠璃。それは相川を封じ込めるに当たって最適解だ。攻撃であれば反撃のために能力が上がるの。何らかの悪意であれば呪いの力が満たされる。だが、単純な愛情では反撃のしようがない。せっかく、焦りや感情の高ぶりを操作して殺意に変換した【殺人皇帝】という別人格まで形成したのにこれでは単なる痛い子だ。


「……まぁでも、変な名前だけど役には立ったな……注意を逸らすことが出来ればいいよ。はぁ……」

「あれぇ……?」

「解毒完了だ。そして忌まわしき俺からのファーストキスだ。受け取れ。【ダウナーキス】」

「あむぅ……ぅぇへへぇ……」


 初めて瑠璃からではなく、相川からキスしてきたことで受け入れられたのかと瑠璃は挿入を急ぐのを止めて相川に顔を寄せ、嬉しそうに唾液交換を行う。その直後、相川の鼻に頭突きを入れた。


「……セーフ。セーフ……はぁ……童貞剥奪かと思った……術式判定は……OK。いや、焦った……」


 腰骨周辺に空気のブロックを作っていた術式を移動させ、安全に引き抜くことが出来る環境を生み出してから瑠璃を浮かし、術式で両者の身嗜みを整える相川。局所は著しく元気だ。


「……しばらく、体内収納は難しいな……これは何らかの処置を……流石に切るのはアレだしやめておくか。それにしても、瑠璃が本気じゃなくてよかった……」


 立ち上がり、瑠璃を抱っこしてそう呟く相川。屹立した部分に関しては酷くキツイ呪いをかけて不能にしておきつつその目は過去、自身が窮地に陥った際に瑠璃の魅力を一部封印するために付けた目元の黒子に向けられている。


「これを外されてたら理性溶けてただろうなぁ……瑠璃はいい子だなぁ……」


 1度目、本気で瑠璃が嫌がることをしたために反撃を受けた時にはその呪いは瑠璃が相川がつけるように言ったから付けているだけでその気になればいつでも解除できることを知り、本気で焦ったものだ。

 相川は瑠璃の頭を撫でながら遠い目をする。あの時は、理性どころか知性を半分くらいまで溶かされて交渉すらギリギリだった。それでも、一線を超えなかったのは偏に瑠璃が相川の意思を尊重したからに過ぎない。


「まぁ、それはそれ。これはこれ。」


 色々思うところはあったが、相川は撫でる手を止めてそのまま瑠璃の記憶を消し飛ばしにかかった。後は、目が覚めたら八つ当たりだ。瑠璃は顔を顰めつつ相川にしがみついている。


「……甘える時間はなしにしよう。」


 自分でも器が小さいなと思い、苦笑しながら相川は瑠璃を自分のベッドに運んで降ろし……邪悪な笑みを浮かべて呟いた。


「さて……余計なことしてくれた奴にはお仕置きだなぁ……」




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