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始まるセカイ chapter1  作者: 黒華
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 俺たちの生きる世界はちっぽけで、代わり映えのしないものだ。同じ景色、同じ音、同じ匂い、毎日毎日同じ世界に囲まれて生きていく。それは明日も、明後日も、その先も、変わらない。

 だが、今となってはその”変わらない世界”は”変わらないはずだった世界”と言うしかない。何故なら、変わってしまったから。

 「なに突っ立ってんだよ、お前も行くぞ!」

 右腕を力任せに引かれる。全ての感覚が遠い。脳の周りに薄い膜が張っているかのような、そんな感覚。

 俺は今どこにいるんだ。俺の腕を引いているこいつは誰だ。なにもかもが曖昧でわからない。どうして俺たちは必死になって校内を走り回っているんだ。どうしてあちこちから悲鳴が聞こえるんだ。どうして、人が人を食べているんだ。

 「紅弥! どうしちまったんだよ、しっかりしろ!」

 肩が強く揺さぶられる。正面には九月も終わるというのに汗だくになっている男がいた。俺の足が動かなくなっていることに今さら気付いた。

 「いつまで寝ぼけてんだよ! こうなりゃ力ずくで起こして」

 振り上げられた拳を掴んで下ろさせる。

 「わるい優真。少し混乱してた」

 「ったく、心配させんじゃねえよ。行くぞ」

 優真を先頭に数人が廊下を走っていく。

 ――混乱は今でもしている。いや、混乱するなって方が無理な話だ。

 俺の知っていた世界は、いつの間にか俺の知らない世界に侵食されていたようだ。変わらないと思っていた世界は、いとも簡単に壊れてしまった。


  

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