プロローグ
これは今より少し未来、世界は二人の科学者の手により創られた、新たなる世界と邂逅した。
その世界の名は『エレメンティア』。そこでは『エレメント』と呼ばれる、人間と遜色無い知能を持った生命体が暮らしている。その異世界の存在が発表された時、世界は混乱に包まれた。しかし、その混乱は科学者の一人、自ら人間を辞め、エレメントの母となった少女――『世界』によって収束することとなる。
「色なき世界は終わりを告げました! これからは子供たちの時代なのです!」
そう語った少女は一つの紙切れを取り出した。……それは、トレーディングカードゲームと呼ばれる、対戦型コミュニケーションツールだった。
「これはこの異世界と同じ名前、『エレメンティア』というカードゲームです。このカードの中には、無害なエレメント達が宿っているものがあります。これを私たちが開発した装置を使うことで、その世界で実際にエレメント達と一緒に戦って遊ぶことが出来るのです!」
彼女の言葉をもう一人の男性が引き継ぐ――彼がもう一人の科学者であり、エレメントの『審判』だった。
「安全面は僕が保証します。実際に僕の後輩たちが『エレメンティア』に向かい、実際に帰還しています。僕たちはこの異世界を皆さんに最大限解放したいと思います。この世界は先程、『世界』が言ったようにこれからの子供たちのためにあります。これからは、窮屈な世界に縛られず、広々とした世界で精いっぱい遊ぶことが出来ます」
「もちろん、安全だけではなくいろいろなモノにも配慮をします。平日は滞在時間を設定し、遊びと勉強のバランスを取れるようにしますし、この世界はとあるルートで通ることによって、お互いの世界がお互いの世界を傷つけないようにプロテクトが張られるようになっています。これで、親御さんの心配にもがっちり答えますよ」
「これからは世界がガラッと変わります。この世界を通じて新たな知識を学び、健やかな体を維持することもできるでしょう。初めは恐ろしいかもしれません。でも、僕たちは子供たちの可能性に賭けてみることにしたのです」
だからこそ、彼女はもう一度世界に向けて宣言した。
「これからは子供たちの時代! この新しい世界で、様々なことを学び、見識を広げ、新しい世界を導くのです!」
初めは、子供たちも『エレメンティア』に疑心暗鬼になっていたが、一人がそこに行き、その楽しさを広めると、次々と人づてに広がっていき、いつしか一大ブームとなっていった。
そしていつしか、『エレメンティア』と共にある日常となっていったのである。
これは、一人の少年と、『エレメンティア』からやってきた一人の妖精の物語。