私の、私だけのメイド
暗い感じにしたくて、挑戦したものの見事に失敗した駄作です。
ついでに、久々に書いたため、リハビリも兼ねてます。
結果は以下の通りですが……。
「な……なりません……こんな……こと……あっ」
私が組伏せている女の子が可愛らしく鳴く。
彼女はメイド。
私は遠慮なく、彼女を責め立てる。
私に逆らうことは、決して出来ないのだから。
「大丈夫よ。あなたが経験したことのない世界へと連れていってあげる」
私は我慢できずに、美味しそうな彼女の唇に自分の唇を重ね、貪る……。
──それは、甘美な虚無。
目を逸らす為だけの、身勝手な行為。
──────────────────────────────────────────────────────
起きれば、昨日抱いた女の子はもういない。
それも、いつものこと。
きっと、今頃泣いているのでしょうね。
メイド達は私に目を付けられないようにと、あまり私に近付いてはこない。
そうだろうな、とは思う。
私に呼ばれれば、処女を散らされるのだから。
そして、私は一度抱いた女の子を2度は呼ばない。
一度抱けば、それで終わり。
それも、近付いてこない理由の1つなんでしょうね。
昨日の夜に感じていた温もりは、ここには存在せず、彼女がそこにいたという証拠となるものは、ベッドのシーツに残る染みだけ。
あれ程高鳴っていた心臓も、今は枯れ果てたかのように物静か。
私は、私の中身をそのまま写したかのように、モノに溢れた、なにも無い部屋で自分を嘲笑う。
そんな時、ドアを手で叩く音が聞こえ、それを聞いた私の中で、音が跳ねる。
昨日よりも大きく高鳴った心臓に呼応するかのように、顔も火照りはじめるのがわかる。
「ふふ。私ったら、馬鹿ね。たった、これだけで、こんなにも胸が踊るなんて」
そう言葉に出してみれば、それは、驚くほどあっさりと虚空に消え去った。
晩秋に、木に残るたった1枚の枯れ葉を思い起こさせるような響きを持ったそれがまるで、お前には無理だねと、そう突きつけてくるような気がして、少し苛立つ。
そんなことはないわ。
彼女は必ず───。
「お嬢様。失礼いたします」
そう言って入ってきた彼女は、肩まであるさらさらとした黒髪を誘うように揺れさせながら、一礼する。
彼女の髪に指を通したい衝動に駆られるけれど、それは、まだよ。
「……また、抱いたのですね」
シーツの染みに目を向けてから、こちらに向く。
それだけの行動で、私は、息が出来なくなる。
その夜を想わせる黒い瞳に射抜かれるだけで、どうしようもないほどに、心焦がれる。
けれど、私は、彼女には手を出さない。
本当に欲しくて欲しくてたまらない、唯一のものなのだから……。
貴女から、その身を差し出させたいのよ。
だから、今は────。
「別にいいでしょう?彼女達は私のものよ。ここで働くということは、そういうこと。そのために、給金を高くしているのだから」
彼女の無表情な顔に、僅かな嫌悪の表情が浮かぶ。
そんな彼女を見ると、心が痛むけれど、それを無理矢理抑え込む。
私は、貴女が欲しいわ。
けれど、優しくなんてしない。
口説いたりもしない。
でも、貴方は必ず私を求めることになる。
「……そうですね。朝食は如何なさいますか?」
貴女の、その大き過ぎる力は、禍を呼び寄せるのだから。
それを知っている貴女は、ここから出ていくことは出来ないでしょう?
聖女である私でなければ、禍女である貴女を受け入れる事は出来ないのだから。
皆から疎まれる貴女とその力を、私だけは愛してあげるわ。
生まれたその時から、愛された事のない貴女に、飲み込めない程の愛をあげる。
「そうね。食べるわ。用意してちょうだい」
だから、早く堕ちなさい?
貴女は、気付いているのよ。
私が貴女を本気で愛していることに。
貴方自身が、それを欲していることに。
それを、見ようとしないだけ。
「かしこまりました」
貴女が食卓に料理を並べる時に響く、食器の擦り合う音が鳴る度に、貴女の心にヒビがはいっていくのよね?
私の側に居れば居るだけ、貴女は、我慢できなくなっていく。
愛を知らない貴女は、誰よりも愛を求めている。
そして、同時に、禍は振りまく自分は愛されてはいけないと、そう思っている。
愛されたい、でも、愛されることが許されるはずがない、そう思っている貴女は、いつまでその矛盾に耐えられるのかしら。
「どうぞ。お召し上がりください」
貴女は壊れ始めているわ。
私が抱いた女の子を、慰めるように抱いているのがその証拠。
目を逸らし、偽りの愛を得、そして、最後に虚しさに襲われて、更に壊れていく。
早く私を求めなさい。
水面に着地した紅葉が水に飲まれていくように、私に溺れさせてあげる。
「相変わらず、いい腕ね。満足よ」
ふふ。
限界なのね。
こうして、少し褒めるだけで、苦しそうにしちゃうなんて。
瞳に写る、歓喜の色を隠せていないわよ?
「ありがとうございます」
貴女には、私しかいないのよね。
─────────────────────────────────────────────────────
夜。
窓から外を眺めながらしばらく前のことを思い出していた私の耳に、ドアが開く音が届いた。
雲に隠れていた月が、暗闇を切り裂くように照らした先に見えた顔を見て、思わず微笑んでしまう。
そう。
そこまで、壊れてしまったのね。
「あら。いらっしゃい」
私の可愛い可愛い、私だけの、メイドさん。
この部屋を優しく照らしていたはずの月は、いつの間にか、再び雲に隠れてしまっていた。
百合が欲しいです!