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交錯する思いーー前編

後編は蛇足になります。雰囲気が変わりますので注意してください

「あの、保月さん!」


 可愛らしい声が聞こえて振り向くと、水戸様が意を決して声をかけましたという雰囲気。

さすが少女漫画の主人公。本気でで恥じらう姿は可愛いですね。

失礼ながらやはり、麻人様にはもったいない。恭弥様にのりかえませんかね。


「どうしましたか、水戸様」


 表情に考えてることが出ないように微笑んで、水戸様をうながすと水戸様は私を見上げて……上目使い可愛いわー!この子本当に可愛い!恭弥様にの(ry


「あの!お願いがあるんです!」


あ、そういえばあったような気がしますこんなシーン。うん、原作にあったような気がする。



※※※※



「ここまで来ておいてどうかとも思うのですが……よろしいのですか?私と二人きりになって」


 空き教室を借りて中から鍵をかけ、懐紙を取り出して使用する机と椅子をさっとふく。そこに水戸様を座らせてからそうお聞きします。

 麻人様の交際相手が、一見男性に見える私と二人きりになってるのを見られるのは些か外聞が悪いと思うのですが。さらにいえば。


「……いや、それよりもあたし的には、なんで鍵をしめたのか気になるんですが……」

「ん?煩いのが乱入してこないようにです。麻人様はともかく、櫻井様のほうがよかったのではありませんか?私と二人きりになったなんて知ったら櫻井様と遠見様が気を揉むと思いますよ」


 なにしろ、保月瀞は水戸愛華苛めの急先鋒だったはずです。年末に一応和解したもののまだ一月も経ってない。そんな中で密室に二人きりとか危ないだろうに。この子は本当に危機感がありません。

 

「大丈夫です!というか……あの、実は12月にあった試験が壊滅てきでして……」


 ああ、そういえばそうでした。

苛めやら嫌がらせやらなんやら、あのときの水戸愛華の頭の中は考えることがいっぱいすぎて試験まで気が回らなかったはずで。なので、ギリギリ赤点は免れたものの、本当にギリギリな点数で通過していましたね。

 その件は私もキツく注意をしました。色々なことで気をとられていたからといって、こんな点を麻人様のお側にいる女性が取るなんて、麻人様の恥にしかなりませんから。


「それで……さすがに莉子ばっかりに負担かけるのも可哀想だし、でも、麻人君にこんな恥ずかしい点数見せれないし、保月さん首席ですし、あたしの点数知ってるし……あの!手前勝手なお願いでごめんなさい!勉強教えてください!」

「……いや、ここにお連れした時点で勉強見て差し上げる件はよろしいのですが……麻人様、試験の結果ご存知ないんですか?」

「恥ずかしくておしえれませんでしたぁぁっ!」


 水戸様は机に突っ伏して叫びました。

私が点数をなんで知ってるかと言えば、発表された順位(うちの学校は全員分の順位が校内のネットワークで発表される鬼畜仕様)に不思議に思い、恭弥様がハッキングして彼女の点数を見たという、決して声を大にしては言うことのできない理由なのですが、もちろん水戸様には先生から聞いたとごまかしましたよ。


……そうか、恥ずかしかったのか。


「では水戸様。とりあえず、持ってきていただいた今までの試験の回答用紙見せてください」


 水戸様は、ムクッと起き上がって鞄からファイルを出そうとしーー私を見つめた。


「水戸様?」

「……愛華って、二人のときは愛華って呼んでくれるんじゃないんですか?」


 いつか襲われますね、この人。あなたの彼氏は麻人様なんですが……


「愛華、見せて?」


 水戸様が真っ赤になって私にファイルを渡します。くどいようですが、あなたの彼氏は麻人様ですよー。

 赤いファイルを受け取って、中身を確認すると見事に回答用紙しかはさまってません。

こういうものは、問題用紙も一緒に挟むことで見返すことができるというのに。まぁ、わたしも同じ試験を受けていますから回答用紙だけでもどんな問題がでてきたかわかるんですが。


「まずね、愛華。こういうものは問題用紙も一緒に挟むんだよ。あと、赤で答えだけを書くんじゃなくて先生の説明も一緒に書いておくと、見返したときに思い出せるよ」

「ふんふん」

「あと、基礎はできてるけど見返しができてない。見返しができないからひっかけ問題に全部ひっかかってる。ここまで綺麗にひっかかってるって可愛い」

「だって……だって!」

「思い込みで答え書いたんだろう。最後まで見てなかったね?」

「……はい」


 これは……問題をとにかくさせるしかないですね。水戸様は真面目なのだろう、回答用紙を見てたらわかる。一番から順に答えを書いているし、何種類かはタイムオーバーしてるし。

はい。とりあえず、試験のやり方から教えましょうね。


「とりあえず、どの教科も問題に当たってみましょう。それからわからないところを重点的にやってみましょうね」

「はい!お願いします!」

「ふふふ。しかし役得ですね」


 私が笑って言うと水戸様がキョトンと私を見つめてらっしゃる。


「本当に麻人様にあなたはもったいない。恭弥様に乗り換えませんか?」

「ええ!?ええええ!?いや、あたしは麻人君が好きなんで!」

「そうですか。でも、麻人様にあなたは本当にもったいない……」


 私が残念そうに言うと、水戸様はキョトンとされた。本当にもったいない。まだまだ至らないところはたくさんあるが、向上心があって癒される。恭弥様さえ望んでくれれば……望んでくれれば……


「もしかして保月さんって、麻人君のこと……」

「ふふふ。不安にさせてしまいましたか。これは失礼しました。……そうですね。それでは」


じゃあ……と私は立ち上がって水戸様の近くに寄り、耳元に顔を近づけーー


「ーー私はどうですバンバンバンバンバンっっ!


 ドアが大きい音をたてて揺れ、私はニヤリと口元が緩むのがわかりました。水戸様の顔は真っ赤。音の方をみると必死な表情でドアを叩いてる麻人様。その横で遠見様も必死で叩いてらっしゃる。後ろには櫻井様と恭弥様が……あれ、恭弥様も顔が強ばってる?

 水戸様も弾かれたようにそっちを見てキョトン。

私は顔がにやけるのを必死に押さえてドアに近より鍵をあけーー


扉がスライドしてものすごい音がしました。


「麻人様、ドアは静かに……」

「お前ら二人だけか!?」

「は?……はい、二人ですよ?」

「最初から最後まで二人だけか?つーか、メール送ってきたのはお前か瀞!?」


 麻人様がスゴい剣幕で詰め寄ってきます。ちょ、待って、待って待って。


「私のアドレスから送られたものでしたら、私が送ったものですよ麻人様」


 なんで、私に詰め寄るんですか?ここは水戸様に懸けよって「なにもされてないか?」と慌てるとこでしょう。

 麻人様は私の返事を聞くと、水戸様を見て、大きく息を吐き出しました。その安堵の息とともに力が抜けてヨロヨロと水戸様の方に近づいて行きました。


「ど……どうしたの、麻人君」

「もうやだ、あいつ……」

「どうしたの?莉子、沙穂」


 水戸様の問いかけにご友人二人は私を軽く睨み付け、遠見様が教えてくれました。


「保月さんからメールで『如月麻人。お前はまだ自分の立場がわかっていないのか』ってきたんだよ。愛華の後ろ姿の写メ付きで」

「……保月さん……」

「こっちは!いつもの保月さんのかんじじゃないから、もしかしたら保月さんも襲われたんじゃないかって!ケータイ取られたんじゃないかって!心配したわーっ!」


……あら。やりすぎましたか。

 ちらっと恭弥様のほうを看ると、恭弥様が額に手をやって少し俯いてました。目をつむってなにかを考えてる表情。これは、本格的にやりすぎたみたいです。

と、麻人様がこっちに歩いてきて私の顔をロックオン。

 

「あのなあ、瀞。メールが来て、お前が送ってきたのかわからなくて電話したのにとらないし」


……電話とったら危機感なくなるかなーって思いまして。


「恭弥にお前の居場所聞いたら、愛華に勉強教えにいったって言うし」


恭弥様には許可頂きましたし。


「恭弥が青くなって探しに行くところから恭弥の仕込みじゃねえし」


いつも恭弥様の仕込みだと思ってはいけません。



とか、頭の中だけで反論していたら、麻人様が凄絶に微笑みました。


「……で?こんなことやった理由は?」

「定期的に麻人様に危機意識をもって頂こうかと」


すかさず答えると、麻人様の額に青筋が浮かび。水戸様を抱き寄せてーー


「お前二度と愛華に近づくんじゃねええ!」

「やりますねえ。さりげなく水戸様の腰を抱くなんて」

「保月。反省してるの?」

「大変申し訳ございませんでした」


 氷点下の声が聞こえて、即座に深々と謝罪をしました。恭弥様のご機嫌が底辺です。これ以上は、ふざけてはいけません。いや、今回はふざけてはいけないというのは承知してるのですが、麻人様が相手だと……

 睨み付けていた麻人様がふぅ、と息をつくと横から櫻井様がボソッとつぶやきました。


「もちろん、愛華は心配だったけど、保月さんのことも心配だったんだからね」


おや。


「申し訳ございません。悪ふざけがすぎました」

「本当よ」

「本当だよ」


櫻井様に遠見様に。まさか、こんな心配をさせてしまうとはおもいませんでした。


「おい、本当にみんな心配したんだからな。これに懲りろよ」

「はい、麻人様。しかし、あまり使用人に気をとられてはいけませんよ。麻人様は水戸様だけを心配していればいいのです」


櫻井様に頭を叩かれました。平手じゃなくてよかったです。


 そして頭を叩かれた衝撃で麻人様の言葉はきこえませんでした。



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