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第五話   橘 十蔵(後編)

橘三兄弟の養い親である十蔵の事情、後編です。

俺は135年ぶりに元の世界に帰ってきた。


あまりに変わり過ぎていて、俺がいた頃の欠片も残っていなかった。


……ムンドゥスの野郎が殴られた腹いせにまた別の世界に飛ばしたのかと思った。



召喚された時と同じ場所に還すと言っていたが、山ですらない。


本当に元の場所・・・・に還したらしく、俺は200m近い高さから落ちた。


山が削られて街になっていたらしい。


イムプーベースと違ってオドでできることが限られているが、それでも200mくらいなら問題なく着地できた。


ちなみに今は「オド」っていうのは日本では合わないなと思って「気」と呼んでいるが。


……街中に降り立ってちょいと騒がれたが、適当に誤魔化した。



それからまあ、道場破りや用心棒などをやりながら日銭を稼ぎつつ、この135年の間に何があったのかを調べていった。


徳川が天下を取ってからの250年ではそれほど大した変化はなかったっつーのに、この135年はとんでもない変化が起こっていたらしい。


徳川幕府は終わり、身分はなくなり、何度も戦争をやって、最後に大負けして、さらにそこから復活。


そもそも「日本」なんて言葉は水戸学を齧ってるやつらしか使ってなかったのに、あれだけあった藩が一つにまとまって国になったんだな。




仁蔵も定吉も俺が住んでいたところからそれほど離れた場所に住んでいたわけではないという話だったし、ここら一帯がイムプーベースと繋がってるんだろうと当たりをつけ、ずっとほったらかしになっていた武家屋敷を二束三文で買い取り、少しずつ直しながら、金を稼いでは戻ってくるという生活を続けていた。



そして22年前。


街を歩いていて、何か気になる、違和感のようなものを感じた。


その違和感を感じる方に向かったら、赤ん坊が捨てられていた。


えんえん泣きやがるが、俺の顔を見ると泣き止んだ。


分かるはずもないだろうが、「俺と来るか?」と聞くと、にっこりとそいつは笑った。


俺はそいつに「龍一郎りゅういちろう」と名付けた。



それからが大変だった。


俺は子育ては連れ合いにまかせっきりで、たまに子供の相手をするくらいだったから、一から育てるとなると初めてで本当に困った。


あんまり近所付き合いとかもなかったんだが、その時から周りにいろいろ教えてもらいながら、何とか育てていった。


まー、武術のために磨いた気配察知が、子育てに大いに役立ったぜ。


小便も大便も察知できるからオムツいらずときたもんだ。


……俺を「武神」と崇めていたヤツらが見たらどう思うかは知らんがな。




次に同じような成り行きで「虎次郎とらじろう」も見つけた。


2人目だったからもう慌てたりはしなかったな。


何より、もう気の修行などを始めていた龍一郎が、まだ小学生だっつーのに虎次郎の面倒を結構みてくれた。


なんか、元々甘えてくる方じゃなかったが、急に兄になったっつーか。


俺の兄貴もこんなカンジだったかもしれないな、と随分と昔のことを思い出してみたりしたもんだ。


……まーそのせいか、虎次郎は一番俺に似ていると言われるように育っちまったんだが。




龍一郎が15歳になり、北海道で熊と勝負させた後くらいになって、また同じ違和感を感じたから探しに行くかと思っていたら、龍一郎が先に見つけていた。


龍一郎自身もよくわからない感覚に戸惑いながら、その感覚に従って歩いていると赤ん坊を見つけたそうだ。


「俺が面倒を見る」なんていって、ペットを飼うように軽く言うもんだから、「やってみろ」ってまかせたら、本当にほとんど面倒を見てくれた。


もちろん龍一郎が学校に通っている間は俺が面倒を見たが、まあお世辞抜きでよくやってたと思う。


その龍一郎のおかげか、「凰太おうた」は随分と素直な子に育った。


いや、まあ龍一郎も虎次郎も素直っちゃ素直なんだが。



龍一郎が高校3年になってから、少し考えがあって、プログラミングを勉強させてみた。


龍一郎の性格にも合っていたのか、メキメキと上達し、高校を卒業した後は大学に行かずにそのまま仕事にしやがった。


……なんつーか、生活力という意味では龍一郎はその時点でとっくに俺を超えていたな。




ま、そんなカンジで、俺はこの三人の兄弟を今まで育て、鍛え上げてきた。


最初はイムプーベースに残してきた家族のためっていうのと、稀人になっちまうこっちの世界の子供に俺たちと同じような苦労をさせないために、そう簡単には死なないように鍛えてやろうか、というくらいの考えだった。


だが、まあ、龍一郎を拾ってから過ごしてきたこの22年。


いつの間にか、この三人に情が移ってしまっていることを自覚してる。



この「稀人の紋章」が俺の右手に現れた以上、龍一郎たちの手にも直に表れることは間違いないだろう。


そうすれば、ついにイムプーベースについて話すことになるな。


そして、一ヶ月もすれば別れの時か。


ムンドゥスには大体の時期も聞いていたし、最初から分かっていたことだが、なかなかクるものがあるな。



……まあ、あいつらにしょぼくれた顔を見せるわけにはいかねーし、三人とも「稀人の紋章」が出た時点で、しっかり話すとするか。

やっとタイトル通りの話ができてきました~

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