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第三話   橘 凰太

橘三兄弟の三男、凰太の自己紹介を兼ねた話です。

ツン


「うわっ!」


いきなりワキをつっつかれて驚いた。


こんなことをするのはウチでは……


「虎兄ちゃん!」


「ハッハッハ! 隙アリだー」



「このー」


僕も虎兄ちゃんにやり返そうとするけどヒョイとかわされる。


「むー」


ヒョイ


ヒョイ


ヒョイ


「むむー」


片手だとダメなので両手で!


と両手をかまえて虎兄ちゃんにトツゲキしようとすると、


ツン


「ひやっ!」


誰もいなかったはずなのに後ろからワキを右も左もつっつかれた。


目の前の虎兄ちゃんじゃなければ……


「おじいちゃん!」


「ハッハッハ! 隙だらけだぞー」


もー!




僕の名前は「たちばな 凰太おうた


今は7歳で、小学校の2年生。



虎兄ちゃんの名前は「たちばな 虎次郎とらじろう


15歳で今は中学校の3年生。


さっきみたいにしょーもないイタズラをよくしかけてくる。


武術の稽古の時はカッコいいときもあるけど、いつもはこんなカンジ。


でも、本当にイヤなことはしてきたりしないし、何かあったら心配してくれるし、いいお兄ちゃんでもあるんだけどね。



おじいちゃんの名前は「たちばな 十蔵じゅうぞう


今は……確か80歳?


でも学校の友達のおじいちゃんやおばあちゃんの方が、僕のおじいちゃんよりも歳下だけど、僕のおじいちゃんの方が若く見える。


おじいちゃんも虎兄ちゃんとおんなじようにイタズラをしかけてきたりする。


それに武術の稽古の時はマジメに教えてくれたりするのも虎兄ちゃんみたい。



僕や龍兄ちゃんが「2人とも似てる」って言ったら2人とも「こいつほどじゃない!」「じじいほどじゃない!」って言う。


でもその言い方もそっくりなんだけどなー



龍兄ちゃんの名前は「たちばな 龍一郎りゅういちろう


22歳でもうはたらいてて、今日ももう仕事にいってる。


いつも落ち着いててカッコいいお兄ちゃんだ。


怒った時はすんごく怖いんだけどね。




「行ってきまーす!」


おじいちゃんと虎兄ちゃんに挨拶して家を出た。


虎兄ちゃんも学校があるけど、いつもギリギリにならないと家を出ないみたい。



いつも待ち合わせてる場所で、先に2人がきてたから「おはよー!」と挨拶する。


「おはよ!」


「おっす!」


と2人も挨拶してくれる。


女の子の方はみっちゃん。男の子の方はシゲ。


2人とも、小学校1年生の時から仲良しの友だちで、いつもここで待ち合わせてから一緒に学校に行ってる。



さー今日も学校!がんばるぞー!




授業ではちゃんと先生の話を聞いて、授業が終わってからクラスのみんなとドッジボールをやってあそんだ。


最後はみっちゃんとシゲの2人の勝負になって、シゲが勝ったからすんごくよろこんでる。


僕はおじいちゃんやお兄ちゃんたちに「手加減しろよ!」って言われてるから、はじめから外野にいたんだけど、見ててなかなかいい勝負だなって思ってた。



シゲが「俺の勝ちだぜー」とみっちゃんに言って、「うるさい! 今日だけよ!」って言われてる。


まあいつも2人はこんなカンジなんだけど。



向こうから、頭が黄色だったり、道路にツバを吐いたりしながら歩いてくる、虎兄ちゃんよりちょっと年上くらいの人たちが歩いてきた。


シゲもみっちゃんもまわりを見てないから「危ないよー」って声をかけようとしたんだけど、向こうからきた人たちの中で頭が黄色の人がニヤニヤ笑いながら、わざとシゲの方に向かって歩いてボンって当たった。


シゲが尻もちをつく。


その頭が黄色の人が、「邪魔なんだよクソガキ!」って、自分から当たりにいったのにシゲを蹴ろうとする。


僕はちょっとだけ「気」を足に使ってシゲの後ろまで動いて、シゲの服をひっぱって頭が黄色の人の蹴りが当たらないようにした。


「あぁ! なんだこのガキ!」


と頭が黄色の人が怒る。



僕は「さっき自分から当たりにきてたよ!」ってその人に注意した。


「るせーんだよガキ!」


っていいながらまた蹴ってきた。


こっちは後ろにシゲがいるから避けずに受け流す。


「この! んだ! コラ!」


ともっと殴ったり蹴ったりしてきたから全部受け流す。



「ハハッ! おめーガキにナメられてんじゃねーか!」


とさっきツバを吐いてた人が笑って頭が黄色の人をからかう。


「はー、はー いや、こいつなんかおかしいぞ」


と頭が黄色の人がもう息を切らせながら言い返す。



おかしいってこの人たちに言われたくないなーと思う。



頭が黄色い人だけじゃなく、ツバを吐いてた人も僕の方に歩いてきた。


2人かー この人たちが相手ならカンタンに勝てるけど……と考えていると、残りの2人がみっちゃんの方に走る。


マズイ!


後ろのシゲはちょっと離れてるから、みっちゃんを助けに行こう!


と向かおうとしたら「行かせねーよ!」って頭が黄色の人が邪魔してきた。


腹を蹴り上げる!


「ぐふっ」って頭が黄色の人が前のめりに倒れるけどそれがまた邪魔になって、みっちゃんが残りの2人に捕まった。



頭が坊主の人がみっちゃんの腕をひねり上げて、「いたっ」とみっちゃんは悲鳴を上げる。


しまった!


僕がそっちに走り出そうとすると、頭が坊主の人が「動くな! 動いたらこいつの骨を折るぞ!」と言ってきたから立ち止まるしかなかった。



失敗した!


最初から本気でこの人たちを倒しておくべきだったのかな。


僕はまだ「気」の扱いが苦手なので、「気」を込め過ぎて相手を殺してしまうかもしれないから、攻撃するときは使うなって言われてたけど……でも……


頭が黄色の人が「ぐ……」とお腹をおさえながら起き上ってくる。


「やってくれたなぁテメェ」


と顔を真っ赤にして怒ってる。



「へへっ 動くなよ……」


みっちゃんを捕まえている頭が坊主の人がまた言ってくる。


しかたない。


手を下げて「気を付け」の姿勢になる。


こっそり気を体内に巡らせて強度は上げてる。


「オラ! オラ! オラ!」


頭が黄色の人が必死な顔で殴ってくるけど、ちょっと痛いだけ。


途中でツバを吐いていた人も参加してくる。



「クソッ! なんだこいつは!」


と頭が黄色の人がぜえぜえ息を吐きながら言ってくる。


みっちゃんの近くにいる耳に何かつけてる人が「お前、名前は?」と聞いてくる。



「橘 凰太」


って答えると、4人が怒った顔になる。


みっちゃんの近くにいた2人はさっきまでへらへら笑ってたのに。



「てめえ! 『橘 虎次郎』の弟か!」


と頭が黄色の人が言ってくる。


僕はうなずく。


「あいつにはひでー目に遭わされたんだよ! あのクソ野郎の弟かよ!」


とツバを吐いてた人も言ってくる。



虎兄ちゃーん!


虎兄ちゃんの弟ってだけでこんなに怒るって何をやったんだろう。


……でも、虎兄ちゃんはふざけたりはするけど、悪いことや間違ったことはしないんだ。


きっとこの人たちは虎兄ちゃんを怒らせることをやったんだろうな。


それにこの人、さっき虎兄ちゃんを「クソ野郎」って言った!



「あん? なに睨んでんだコラァ!」


って頭が黄色の人がまた殴ってくる。


耳に何かつけてる人も僕の方に歩いてくる。


頭が坊主の人も手に力が入ったのか、みっちゃんが「いたい!」って悲鳴を上げる。


なんとかしたいけど、頭の中がグルグルして何も思いつかない。



その時、パンって乾いた音が鳴って、みっちゃんの腕をひねり上げてた頭が坊主の人が、みっちゃんを離し、白目をむいて膝をついた。


そこに立ってみっちゃんを支えているのは……


「龍兄ちゃん!」


龍兄ちゃんが助けてくれたんだ!


他の3人もパンッ、パンッ、パンッと音を立てて、さっきの頭が坊主の人と同じように膝をついた。



龍兄ちゃん、気弾を飛ばしたのかな?


気の放出から飛ばすところまで、速すぎて全然わからなかった。



みっちゃんと龍兄ちゃんがいるところに、僕とシゲが走っていく。


龍兄ちゃんは、


「大丈夫だったか?」


ってあったかい目で僕を見ながら聞いてくれる。


僕は「うん!」ってうなずいた。



「よし、後は凰太が2人を家まで送ってやれ。


……あいつらは俺に任せろ」



龍兄ちゃん……すんごくキレてる。


龍兄ちゃんは僕とか子どもが嫌な目にあうのがイヤだって前に言ってた。


じごーじとくだと思うけど、あの人たち大丈夫かなってちょっとだけ思う。




あのあと、2人を家まで送っていった。


みっちゃんは気が強いから最後まで泣かなかったけど、シゲの方が泣いちゃって大変だった。


「助けれなくてごめんよう」って言ってたけど、しかたないと思うし、離れるだけで逃げなかっただけでも勇気があってえらいと思うんだけどな。




家に帰ったら龍兄ちゃんはまだ帰ってなくて、虎兄ちゃんが居間にいた。


虎兄ちゃんは僕が殴られたりしたところを見て「どうした!」ってあわてて聞いてくる。


ほらね。虎兄ちゃんもいつもはふざけてるけど、何かあったら心配してくれる、大好きなお兄ちゃんなんだ。


4人の変な人の話をしたら、「どこだそいつら!」って怒って外に出ようとしたけど、「龍兄ちゃんがつれてった」って言ったら「そっか」ってすぐにもどってきた。



それから一時間くらい経って、龍兄ちゃんが帰ってきた。


「どうなったの?」って聞いたら、


「ん? ああ。


『丁寧』に説教して帰したぞ」


って言って、くわしく教えてくれなかった。



でも、あの人たちがすんごい目にあったのは僕でもわかった……

小さい子の視点で書くのは初めてだったんですが、結構大変ですね(^^;


地の文と凰太とその友だちの会話文は漢字を減らしましたが、武術用語っぽい言葉はあえて漢字のままにしています。それは学校以外で知ったってことで。

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