くま
「わたしのターン! 熊さんに羽衣をあたえる!」
ゲームの手札が交際中の男女の掌の中で飛び交っていた。
女は、沈まない熊、のカードに飛行可能効果をつけた。
熊は、泳げるし走れるし賢い生き物。
それに翼を授けて万能たらしめんと、女は画策していたのだ。
「さらに! 熊さんで攻撃!!」
女は男の手札から、天使属性の戦士カードに熊の手で挑んだ。
飛行可能効果がなければ、この熊の手は天使属性カードには当たらないというルール設定だった。
「いいのね?」
「うん! ターンエンド!!」
男は女によって物凄く強化された、沈まない熊、のカードを指定した。
「まず」
熊のカードのレア度はいちばん低かった。
「羽衣を無効。泳ぎ特性も無効化。熊は無防備となる」
「え」
女は熊を最大限強化していた。
しかし、熊はノーマルカードであった。
「飛行をこの補助カード、天使の矢で落とす」
「あ」
熊は地面に叩き落された。
「つぎにこの補助カードに付随する、四つ足特効を発動」
「え」
「指定された熊のカードは全ての持ち合わせたプラスの効果を、狩人のため息、により剥奪される」
「ちょ」
「攻撃指定された天使の戦士による『裁き』を発動。自分よりレア度の低いカードの体力をマイナス1200する」
「まって」
「天使の戦士による攻撃、沈まない熊へ」
「やめて」
「防御力200,こちらの攻撃力2000」
「くまが!」
「ターンエンド、はい、どうぞ次」
「あたしの! 最強生物の熊になんてことを!!」
「いいのね? って聞きましたよ自分は」
「いや、だって生物学的にみて絶対にこの種は生き残って繁栄するようにしたのに」
「無駄なことしてるなー、って思って見てましたよ」
「生物学上! 最強の!! あたしの熊が……」
「負けましたね、地に落ちて溺れました。デッドエンド」
「おまえなんか!」
「お、やるか」
「おまえとはもうゲームしない! カードゲームしない!!」
「笑」
女は熊のカードを涙でふにゃふにゃにするまで、離さずに寝た。
「つおい、くま、いいこ、ごめん、つおいのに」
「無駄なことを」
「お前には心がない!」
「いや、自分、エーアイなんでね(笑」
――うそつけ、じんるい!
「笑 笑 笑」
女は、悔しくて、熊の絵をたくさん描いた。
男の目から、見えないように、気を付けながら。




