68 《主人公:オレ》脱獄物語
「ここでいいのか?」
グラドールは怪訝そうに尋ねた。
亀裂を前にして竜はゆっくり翼を動かした。きっとその目には澄んだ青空が映っているだけだろう。
ノイズであるオレとリュシエルにしか見えない領域だ。
「ここが、オレとリュシエルのゴール地点だ」
リュシエルが頷く。勇者物語がエミルのものなら、脱獄物語はオレとリュシエルのものだ。
牢獄から始まったのなら、脱獄で終焉させる。
青空に生じた裂け目には、永遠の闇ともいえるほどの暗黒があった。オレの体くらいならすっぽりと飲み込めるほどの大きさだ。
どこまで続いているのかを確認することはできなかい。
ただ、金色の糸が道を示すかのように揺れ、存在を主張していた。
「入るの?」
問いかけるリュシエルに目配せをして、俺は真理の剣を引き出した。
勇者物語が完結しても、ノイズという毒物は残っている。
修正力が毒を排除する手立てはなくなった。このままでは崩壊を待つだけだ。
毒が自ら出て行ってやるって言ってるんだ、案内くらいしろ。
切っ先を亀裂に突っ込んだ。刃が暗闇に消えた。光となって深淵で瞬く。
風が吹き出す。オレたちを吸い込もうと、体を引きずった。
ここが、境界だ。
真理の剣がオレとリュシエルに真実を与える。
白光が亀裂から溢出した。意識が白光に、融けた。
オレは剣を手放した。
真理の剣よ、リリアの元に戻れ。
リリアの笑顔を思い出し、少しだけ未練を感じた。それでもオレは現実へ還る。オレの居場所はここじゃない。
そして……




