67 《主人公:オレ》仮面
説明された通り、ペンダントに念じるとグラドールは、すぐにオレの元にやってきた。
「その女性は?」
背中に乗せるため、地に伏せながらもグラドールは長い首をもたげた。
「竜王城で仲間になった天使だ。カッコいい翼だろ」
受肉したことで、リュシエルは可視化される存在となり、グラドールにも認識されるようになった。
説明すると長くなるので、囚われの身だったという設定にしておく。
「うむ。確かに」
「無理して話を合わせなくてもいいんだよ」
リュシエルはオレの案内に従って竜の背に乗った。
「そうではない。異質なものの組み合わせは、互いを引き立てるものだ。その翼がいい例だ」
「分かってるじゃないか、グラドール」
「どれほどでもない」
グラドールは背中の二人を確認すると、巨大な翼を広げた。
「では、竜王討伐はうまくいったのだな」
「ああ、あいつか。竜王は勇者エミルに討伐された」
「勇者……エミル……?」
「そうだ、この世界は勇者エミルによって救われた」
過程はどうであれ、エミルが竜王を倒し筋書きを守ったのは事実だ。
平和はエミルによって、もたらされたこととなる。
これで勇者エミルの竜王討伐物語は完結だ。
「オレは偽勇者だったってことだな。残念ながら、お前の仲間の復讐を果たしたのはエミルってことだ。どうする、俺たちを降ろすか?」
「みくびるな」
グラドールが足を踏ん張り飛び立った。
地鳴りがするほどの風を引き起こし、上空へと舞う。
「お前は仲間の魂を解放してくれた。それだけで十分だ」
眼下に竜王城があった。その先では青空と新緑の境目にある地平線が太陽に照らされていた。
「さあ言え。どこへ行く?」
「もちろん……」
オレは亀裂から垂れる、光に絡みつく糸を掴もうとした。
糸は手をすり抜ける。だが確かにそこにある。
ここでの地平線は見納めだ。
オレとリュシエルには、まだ自分の物語があるんだからな。
さあ、この牢獄から脱出するぞ。悪役令息の仮面をこの世界に脱ぎ捨てて。




