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悪役令息に転生したオレは、勇者のために死ぬべきか~それは処刑前夜に始まった。世界に殺されるなら、運命に抗い脱獄する――これがオレの物語だ~【完結】  作者: 未玖乃尚
第六章 勇者、悪役と観察者そして……

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60 《反逆者》焦げた指先

 リュシエルの魔力が周囲を巻き込み、天上へと突き上げた。

 ここが竜王城ならば、壁が瓦解していたはずだ。


「できれば殺したくない。聞くのは、これが最後だよ。ねえ、一人で死んでくれる?」

 リュシエルの射抜くような瞳は、言葉が懇願ではなく強要であることを語っていた。


「断る」

「今さらだよね。私はずっと言ってきたもんね」

 オレの返答にリュシエルは笑おうとして頬を引きつらせた。

「最初から言ってたよね。死んでって」


「いやいや、死にたくないって」

 あえて軽く答えた。

 いいから早く死になさいよ、なんてリュシエルがいつものように言い返してくることを期待してたんだが。


「私を、エミルや竜王と同程度だと思わない方がいいわよ」

 誇張ではない。オレはエミルに勝ってレベルが上昇したはずだ。

 それでも無意識に、リュシエルの威圧感から距離を取ろうとしていた。


 関係を改善する、その希望も潰えたのか。

 天使がオレを殺せる次元に立った。つまり、オレもリュシエルを殺せるはずだ。

 相手が神なら躊躇はなかった。


 だが、オレは今でもリュシエルと……


「リュシエル、オレの物語はまだ閉じちゃいないぞ」

 剣を抜く。オレは諦めの悪い男なんだよ。


「イズルらしいね」

 六枚の翼が輝き、それぞれ魔法陣を展開する。その輪郭は光に溺れてしまいそうなほど朧気だった。


 霞みがかった純白の槍が射出された。

 オレは魔力を空間に干渉させた。


 領域が揺らぎ、神槍の軌道を変更させる。

 妨害を逃れた槍が肩口に迫った。

 薙ぎ払って弾く。


「それで逃げられたと思う?」

 目標を見失った槍先が突如進路を変更した。オレに向かって刃が輝きを持った。

「自動で修正すんのかよ」

 防御障壁を発動させる。連続して襲い掛かる槍を、剣と障壁で防ぐ。


 荒野の開けた場所だ。身を隠す場所もない。全て計算尽くか。

 かわし切れなかった槍が、腕を穿った。即座に薬草を口に押し込んだ。

 エミルの二刀流と比較しても、攻撃力、スピードが桁違いだ。回復を怠れば、死に直結する。


 剣と空間干渉、身体強化で槍を交わす。

 魔力が削られ続ける。

 竜鱗ペンダントを盾代わりにして攻撃を跳ね返す。


 一瞬だった。

 連撃のリズムに狂いが生じた。反射的に視線を走らせ、原因を探った。

 槍が魔法陣に沈み、飛び出す。

 魔力を補充したのか。


 だったらリュシエルの槍は永久機関ではない。

 リュシエルもそのことは承知のようで、攻撃が途切れないように、魔力切れの槍を順次魔法陣に戻していた。

 追尾する槍数が六本から五本になったところで、余裕などできるわけではない。


 それでも、行動するなら魔力を補充する瞬間だろう。

 槍は自動追尾だ。リュシエルの意識は介在していない。

 この特性を利用できればいいのだが。


 地表は槍の攻撃によって荒らされ、足元が不安定になっていく。行動する範囲が狭まる。

 爪先を足に沈める。体勢を崩した。


 今のオレは絶好の的だろう。

 刃が一斉にオレを標的にした。


 神槍がオレの周囲を囲んで空気を貫く。

 よし。

 刃先が一点に集約する。空間に干渉し、軌道を歪めた。


 一、二、三、四、五。

 五本の軌跡が弧を描き、次々と槍がオレの足元に沈んだ。

 歯を食いしばる。


 魔力操作で凝縮した空気を暴発させた。オレの背中を押し出す。

 痺れをきたすほどの加速に身を委ねた。リュシエルに迫る。空気の圧力に瞳の水分が奪われる。


 六本目の槍は魔法陣の中だ。魔力の補給にはまだ間がある。

 リュシエルの開かれた瞳孔に、オレの姿が浮かんだ。


「イズルなら、この隙を狙うと思ってた」

 魔法陣から刃が覗く。神槍が装填された。

「半分程度の燃料でも、槍は起動するよ」


 槍が打ち出された。リュシエルが魔力の充填を控えたことが、オレの目論見を崩す。

 オレの行動も計算してたのかよ。


 眼前に刃先が迫る。

 咄嗟に剣の側面で槍を受けた。

 リュシエルが目を細めた。


 槍の貫通力が真理の剣の耐久力を破ろうとする。

 リリアがオレを信じて託した剣だ。


「折られて……たまるかよ!」

 体内の回路に魔力を迸らせ刃に集める。手首を捻って、軌道を強引に逸らした。

 自動追尾が始まる。


 槍より先にオレが……


 リュシエルの……


 手首を掴もうとした。

 指先で電流が走り火花を散らした。


「あんたは……何をしてるのよ」

 抑揚のない響きが、リュシエルの唇から冷たく零れる。


 オレの指は焼けたように疼いていた。

 彼女の障壁はオレが触れることを拒み、焦げついた臭いを刻む。


 リュシエルは魔法陣を解除し、戻ってきた槍をオレの胸元に突き付けた。

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