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悪役令息に転生したオレは、勇者のために死ぬべきか~それは処刑前夜に始まった。世界に殺されるなら、運命に抗い脱獄する――これがオレの物語だ~【2/2完結予定】  作者: 未玖乃尚
第六章 勇者、悪役と観察者そして……

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56 《勇者》確定した未来

「それさえあれば、僕たちは……」

 真理の剣はエミルの心をかき乱した。竜鱗の剣を手にしてもなお、真理の剣はエミルを焦がす。


 想いから逃れるようにして、見上げた天井には無機質な空間だけがあった。

 まるで自分の鏡を映しているようだとエミルには思えた。


 ふと、夢を見ることがある。

 ジュリアンの処刑に違和感を覚え、真贋の目でグスタフの正体を見破る。

 そんな世界だった。


 真実を暴くため、リリアの試練を突破して真理の剣を授かり、ゴードンやキュロと肩を組んで笑い合う光景だ。

 ジュリアンの冤罪を白日の下に晒して、竜王軍の四天王たちを次々と撃破する。最後は仲間と助け合って竜王を倒し凱旋する。


 故郷を旅立つ前夜も、そんな夢を見た。

 きっと、それは確定した未来だった。夢とはいえ、真実を示すこの目が見たのだから。


 狂いが生じたのは……

 エミルは視線を戻す。


 ジュリアン、君がその剣を巫女から受け継いだからだ。

 白銀の剣は、この白銀の鎧にこそふさわしい。

 あれさえあれば、鎧はこれほど血腥ちなまぐさく穢れなかっただろう。


 ゴードンもキュロも死なずに、もっと華やかな旅を続けてこれたはずだ。

 かつての夢が希望の未来なら、現実はまるで悪夢だ。


 いや、もしかするとこの瞬間こそが夢なのかもしれない。どこかで精神攻撃を受けて、悪夢をさ迷っている可能性だってある。

 目覚めると真理の剣で戦う自分がいるのではないか。


 そんな考えがよぎったとき、エミルは希望の世界が自分の名を呼ぶように感じた。

 勇者エミル、勇者エミル、とパレードを見守る群衆が、エミル一行を拍手で出迎える。


 暗闇に浮かぶのは理想の未来だった。

 理想の現実へ戻る手段は一つだけ。真理の剣で、この絶望の世界を引き裂くこと。


 そうすれば悪夢から解放されるはずだ。

 暗闇がそう語り掛ける。

 真理の剣は僕が持つのにふさわしい、エミルはそう確信した。


 だから貰う。

 勇者は一人いれば十分だ。


「勇者は二人もいらない。どちらが本物か決めようじゃないか」

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