表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令息に転生したオレは、勇者のために死ぬべきか~それは処刑前夜に始まった。世界に殺されるなら、運命に抗い脱獄する――これがオレの物語だ~【2/2完結予定】  作者: 未玖乃尚
第六章 勇者、悪役と観察者そして……

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/62

55 《悪役》絶えない笑み

 煌びやかだった白銀の鎧は、無数の傷ですすけて、光を失っていた。初めて会った時の優雅さはなく、鈍く濁った影が鎧を染める。


 赤味を残す頬の傷が、歪んだ。

 勇者エミルが戦闘を楽しむかのように、口元を吊り上げて笑った。


 廊下でぶつかり合う破邪の剣と竜鱗の剣が、閃光を走らせ、衝撃波を迸らせた。空気の振動で柱と壁が削れ破片がパラパラと廊下に落下する。


 壁がひび割れる。

 エミルの歯がむき出しになった。


 剣を防いだ竜王の足元が崩れる。バランスを崩した竜王が、剣を払ってエミルの接近を拒んだ。翼を広げて空中へ逃れると魔力を放つ体勢に入った。


 手すりを蹴ったエミルが瞬時に距離を埋める。

 竜王に詰め寄り連撃を叩き込む。


「おいおい、何が起きてんだ。全く見えねえぞ」

 リグルドは両者の動きを追い切れず、生じる音を頼りに首を巡らせるだけだ。


「エミルだけで、あそこまで竜王と渡り合うなんて。やっぱり勇者は規格外の存在なんだ」

 リュシエルの瞳が目まぐるしく跳ねまわり、戦闘の行方を追っている。


「おっさん。見えないなら、ここにいても仕方ないだろ。外へ出てろ」

「ワシは、ワシが打った剣で、竜王がこの世を支配する様をだな……」


「そんな未来はもう訪れないな」

 オレが参戦すれば、竜王は即座に終わる。


 竜王は剣で凌ごうとするが、手数は勇者が上回っている。間に合わない刃を、体の鱗で弾きながら反撃を伺う。


 エミルが剣を振り下ろした。

 見上げるオレと視線が合った。


 エミルは余力を残している。

 リリアの村で共闘したエミルは、二刀流だった。


 オレに見せつけるつもりなのか、勇者が本来の戦闘スタイルへと変貌した。

 無銘の剣が竜王の肩口を裂いた。刃が初めて竜鱗を突破した。


「ぐっ!」

 竜王が苦痛に呻く。

 エミルの口が動いた。

 僕の勝ちだ。


 オレの目に告げるようにエミルは言った。

 破邪の剣が竜王の片腕を切断した。

 腕がリグルドの足元に転がる。リグルドは声を飲んで飛び上がり、尻をついた。


「バ、バカな……ワシが鍛えた剣だぞ。強化した竜鱗を無効化するなんてことが」

「違う。単にエミルの攻撃力が、竜鱗を上回っただけだ」


 エミルの速度が上がる。

 左右の剣が竜王の体を連続で斬りつける。飛翔しようとする竜王の翼が奪われる。

 翼をなくしては、空中での動きは制御できない。


「早く行け。お前こそ、巻き込まれて死ぬぞ」

 オレは出口を指差す。

 リグルドは這いずりながら小刻みに首を縦に振り、城外へと走り出した。


「イズル、竜王はもう……」

 リュシエルが呟く。


 エミルは攻撃の手を緩めなかった。

 竜王の傷口から散った緑の血が、雨となって降り注ぐ。


「あいつがあそこまで強くなってるとは予想外だったな」

 竜鱗の剣が床に突き刺さった。


 続いて竜王に跨ってエミルが衝撃音を轟かせた。

 破邪の剣が、心臓を貫いていた。


「やあ、ジュリアン」

 ふらりとエミルが立ち上がる。呼吸の乱れはなかった。

 髪から白銀の鎧まで、竜王の血が滴っていた。

 そんな状況であってもエミルは笑みを絶やさなかった。


「遅かったね」

 エミルは嬉しそうに言って、無銘の剣を投げ捨てた。

 左手で床から竜鱗の剣を抜く。


「僕の勝ちだね。竜王を先に倒したのは僕だ」

 エミルは握り心地を確かめるように、竜鱗の剣を振ったり傾けたりしている。


「うん。この剣は僕にこそふさわしい。どう思う?」

「知らんな。オレにはこれがあるからな」


 オレは腰に吊るしてある白銀の剣を叩く。

 エミルの歯が軋んだ。


「真理の剣、か」

「そんな血塗れの剣より、こっちのほうがカッコいいだろ」

「それさえあれば、僕たちは……」

 エミルは目を閉じて、天井を仰いだ。


 再びオレを見据えて、エミルは言った。

「勇者は二人もいらない。どちらが本物か決めようじゃないか」


 修正力が選んだ最後の駒は、竜王ではなく勇者だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ