47 《観察者》私たちを分かつものは
何が起こったの?
イズルは気を失い、地面に臥している。
アルザークとの戦闘中にリッチが出現するなんて筋書きにない。
私は上空を仰ぐ。白い靄に覆われ、リッチの姿は確認できなかった。
魔力制御に優れたイズルですら、全神経を注いで対処する必要があった侵食速度だった。
あれほどの呪いを発動できる者は、作中に存在しない。
が、方法はある。
「まさか、ね」
修正力がそこまで影響力を及ぼしつつあるというのだろうか。
イズルは抗いきれるの?
そんな問いかけをし、首を振って否定する。
どうかしてる。私の役目はイズルの死を見届けること。
だったらなぜ?
リッチの出現に取り乱し、思わずイズルの名を呼んでいた。
「イズル……」
羽根を休め、彼の傍らに降りた。
靄の影響で頬が冷えている。
瘴気が地を這い、立ち上る。少し先でさえ、見通せないほどの濃い霧で満ちていた。
死の谷。非業の死を遂げた魂たちを呼び寄せる場所だ。
生者の精神を蝕み、壊し、やがて肉体をも奪われるという。
このまま放置しておけば、やがてイズルは……
「おい」
ぱちっ、と頬をはたく。
イズルは死ななければならない。その結果が、この世界に安寧をもたらす。
「イズルってば」
ぺちっ。
腕を掴まれた。
「起きてるっての。乱暴な天使だな。少しは休ませろ」
「……っ!」
何だよ、起きてるなら言えっての。
「イズルってほんと、しぶといヤツだね」
「リュシエル、お前の役割はまだまだ終わらせないぞ。オレの傍でずっと見てろ」
「あんたが生きてる限りは、そうしてあげるよ」
私たちを分かつものは、死だけだ。
そしてまた、生き残ったイズルには死の影が差す。
柔和だったイズルの表情が引き締まる。
「てめえかよ」
イズルが睨みつけたのは、純白に赤ラインの施されたローブを着用した少年だった。
肌は土気色に淀み、瞳の焦点は失われている。生気は、失われていた。
命を代償にすれば、呪いに強烈な効果を付与させることが可能だ。
賢者キュロがそこにいた。リッチが仲間のように寄り添い、大剣を構えていた。




