表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令息に転生したオレは、勇者のために死ぬべきか~それは処刑前夜に始まった。世界に殺されるなら、運命に抗い脱獄する――これがオレの物語だ~  作者: 未玖乃尚
第五章 改変ルート

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/54

46 【正規ルート】交戦×交錯

 グラドールが蛇行し、竜人を振り切ろうと旋回する。

 突き放せても一時的なものだ。じきに取り囲まれるだろう。


「追いつかれるぞ」

 焦りを滲ませながらも、グラドールは虚をつくように急速に進路を変更し、地上へ向かった。


「ナイス」

 上空に竜人の群れが一望できた。

 真理の剣に魔力の刃を継ぎ足した。空を両断できそうなほどの巨大な剣が完成する。


 風が、途切れる。

 剣を振るった。

 突風が吹き抜け、竜人たちの体が上下に裂けた。


「お前らは、オレのレベルを上げるための材料だな」

「違う。俺を隠す盾だ」


 後方から、群れを貫いて影が現れた。

 喉を狙う槍撃を弾いた。重みを宿した一撃に剣を零しそうになる。


「よく耐えたな。ザルドナの反応が途絶えたのは貴様が原因か」

 声の主は、先ほどの竜人たちよりは、人間に近い竜王寄りの顔立ちだった。棚引く髪が意志を持つようにうねる。


「お前が最後の四天王か」

「人間を頼るとは、竜族も堕ちたものだな。やはり、竜を冠する種族は我ら竜人族だけで良い」


「アルザーク!」

 竜の咆哮が響いた。尻尾を叩きつける。アルザークは翼を翻して、軽やかに竜に降り立った。


「やはりザルドナにくれてやらず、殺しておけば良かったか。まあ、しかし」

 眉を跳ねさせ、酷薄な笑みを浮かべる。

「勇者と最後の竜の首を並べて献上すれば、竜王様もお喜びに……」


 最後まで言わせずに剣を払う。

「黙ってろ。オレは簡単に死んでやらんぞ」

 聞こえるか、どんな駒を使ってもムダだと教えてやる。


 懐に飛び込む。アルザークが羽ばたいた。

 空中戦への誘いには応じない。

 竜の背で腰を落として次の動きに備えた。


 一定の距離を保ちつつ、竜とアルザークが空を駆ける。

 浮遊魔法は時間に応じて魔力を消費する。アルザークはその事実を見越しているはずだ。


「どうした来ないのか?」

 アルザークが手招きして呼びかける。

「ふらふら飛ぶな。足を着けて正々堂々戦おうじゃないか」


「俺には槍と翼がある。わざわざ有利な条件を放棄するとでも?」

 アルザークの言い分は正論だ。


「条件を揃えたうえで勝つことこそ、武人の誉だろ!」

 ドワーフの四天王なら喜んで付き合いそうな呼びかけをしたが、こいつはそう単純でもないらしい。


「笑止千万、だな」

 剣の届かない距離でアルザークが槍を構えた。


「同感だ」

 槍を向けられ意識が集中したことを確認し、オレは足の爪先を叩いて合図した。

 グラドールが翼を傾けて、アルザークの死角に入る。

 攻撃直前だったアルザークには、オレが消えたように映るだろう。


 竜の背中を蹴り浮遊魔法を発動させ、後方から斬りかかった。

「ぼけっとすんなよ」

 ザンッ、と剣が虚空を薙いだ。上空に逃れたアルザークの姿があった。


 お互い攻撃の射程外。

 手首を返して剣を振るう。


「そんなところから剣が届くわけがなかろう」

「そう思ってくれるのはありがたいな」

 瞬間的に魔力を増幅させる。真理の剣を振った。


 切っ先から魔力の刃が放たれ、アルザークとの距離を埋めた。

 唐突に飛び出した刃にアルザークが驚愕する。体を捩じって軌道から逃がそうとするが刃の到達が先だった。

 白刃が片翼を奪った。魔法で接近し、バランスを崩したアルザークに剣を振るう。


 それは、影だった。

 視界の隅をよぎった異形が、オレの注意を削いだ。


 甲冑に身を固めた幽光だった。青白い輝きを胸に宿し、大剣を担いだ骸骨が、ゆらりと手を伸ばす。


 何だこいつ?

 アルザークの仕業じゃない。

 別方向からの、実体を持たない遠隔魔法だ。


「イズル!」

 リュシエルが叫んだ。


 骸骨がオレに向けて開いた指を閉じた。周囲の空間が凝縮する。心臓を掴まれたような圧迫感が生じた。


 魔力回路に干渉している。ザルドナと同じ手法だ。オレの魔法を封じるつもりだ。

 しかもこの侵食速度はザルドナを凌駕している。


 まずい。

 体内に魔力を巡らせて抵抗する。浮遊魔法を切断して侵食に対処する。


 グラドールが旋回した。オレを受け止めようと駆ける。

 高度を考え、竜の到着より落下が先だと判断し、衝突に備えて障壁で体を覆う。


 その直後障壁が破られた。

「死ねえ!」

 アルザークの槍がこめかみを掠めた。


 オレは槍の柄を掴んで引き寄せた。落下のダメージに配慮しながら、迫ったアルザークの胸に剣を突き立てた。

 グウッと、くぐもった呻きを漏らすアルザークの髪を掴んで、刃を押し込む。


「離すかよ」

 歯を食いしばる。バリバリと耳元で歯の軋む音がした。自由にすれば追撃を受ける。この場で仕留めなければオレが死ぬ。


「次から次へとやってくれるなぁっ!」 

 大空に向けて絶叫し、根元まで剣を押し込んだ。


 景色が変わる。

 周囲が白い靄で覆われた。温度が下がり肌から体温を奪った。

 オレはアルザークの絶命を確認し、その体を引きがした。


 衝撃が、背中から全身に響き渡った。障壁の残滓で緩和してもなお、体を砕きかねない振動が駆け巡った。


「があっ!」

 空気が喉を突き上げた。

 こんな声を出したのは久々だ。オレにこんなことしてただで済むと思うなよ。


 地面に爪を突き立てながらも、意識は少しずつ遠ざかっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ