表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令息に転生したオレは、勇者のために死ぬべきか~処刑前夜から始める異世界脱獄物語~  作者: 未玖乃尚
第一章 小説世界で処刑されるらしい

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/49

4 逃げないの?

 風がそよいだ。

 耳元で枝葉が騒めく。葉の輪郭が額や頬をかすめ、肌をざらりと撫でる。 

 重みを受けて足裏の枝が軋んだ。


「ねえねえ、逃げないの?」

 耳元でリュシエルが囁く。魔力を放射していない天使は、森の闇に溶け込んでいた。


「黙ってろ」

 注意力が散漫になる。オレは手頃な木を見つけて体を潜ませていた。

 逃げたところでいずれ馬に追いつかれる。だったらここで迎撃しておく。


 笛が鳴る。喧噪が近づく。地面を打ち鳴らす蹄の音が大きくなった。

 死刑囚が脱獄して塔を飛び降りたのなら、まずは周辺を捜索するはず。


 闇に灯った明かりを頼りに距離を測る。

 影がよぎった。


 飛び降りる勢いを利用して側頭部を蹴り抜いた。

 ポコッ。


「あれ?」

 またかよ。


「あっははは。あんたはレベル1だってば。全力の蹴りが効かないとか笑える」

「やかましい!」

 追手の首に足を巻きつけ、体を捻る。


「結果が出ればいいんだよ」

 関節を決めて投げ飛ばす。落下した追手が暗闇で弾んだ。

 オレは馬の背に手をついて体勢を整えると、手綱を握った。


「うそぉ、せっかくの死亡フラグが」

「お前は、オレが死ぬことしか考えられんのか」


「それが私の役目なので」

 にこっと微笑むリュシエルの後方から矢が飛んできた。


 残る先陣は二騎。後続とは少し距離がある。

 枝葉を避けながら速度を落とす。距離が詰まった。


 射掛けようとする影に対して石を投げる。反撃のために準備しておいたものだ。

 兜に当たった衝撃で兵が体勢を崩した。


 馬を並べる。追い打ちで兵を蹴り飛ばしながら、太もものナイフも頂く。今度は成功だ。

 落馬する相手を確認して前を向いた。


「手癖悪いわね、あんた」

「器用と言ってもらおうか」


 視界の隅で閃光が煌めいた。

 最後の一騎が剣を振り下ろしてきた。

 早速ナイフの出番だ。


 金属音が鳴り響いた。

 ナイフで受け流す。


 木々の隙間を縫って馬を走らせた。先行して闇に飛び込む。

 風が強くなった。体勢を低くする。


 枝を掴んでしならせ、反動を利用した。

 後方の一騎に飛び移る。

 背後を捕え、刃を突き立て、馬から突き落とした。


 リュシエルが悲鳴を上げた。

「ちょっと、あんた何倒しちゃってんのよ。生き残っちゃうじゃない」


「生きるためにしてんだよ」

「私、家に帰れないじゃん」

「じゃあ、ずっとオレと暮らすか?」


「いやいや、ありえない」

 目が沈み、口元が平坦になる。

 憎たらしい天使だな。


「さて、これからどうするか」

 この場を乗り切ったとしても、これからも、追手を差し向けられるのだろう。

 馬を走らせながら先のことを考えていると、眠気が襲ってきた。


 追手との距離もだいぶ開いてきた。

 生きるためには休息も、必要だ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ