33 【正規ルート】【分岐ルート】巫女の選択、勇者の選択
朝食後、リリアはテーブルに地図を置き、竜王城へのルートをオレに説明した。
最短で到達できる山へのルートと、遠回りになるが安全性を重視して街を経由するルートだ。
「よし、手っ取り早く山へのルートだ」
「あんたならそう言うと思ったよ」
リュシエルが肩を竦めた。
「イズル様、無理なさらないでください」
リリアが次の街に指を置く。
「山へのルートは危険が大きすぎます。お一人で攻撃、防御、回復、おまけに食事の準備までしながら旅をするのは、リスクがありすぎかと」
オレならきっと大丈夫だ。
といいたいところだが、リリアのつぶらな瞳を見てると素直に従おうかと気になってくる。
女の子に心配されるのは気分がいい。
彼女の爺さんに言われたなら、意地でも山ルートに入っていただろうが。
「オレはまだレベル18だからな」
「山、森、谷が続くこの道は、ケガでもしたら大変です」
「確かに!」
リリアの話に納得し、うんうんと頷く。
リュシエルの飯もいるしな!
非難を込めて傍観者を睨む。戦闘中は助けないくせに、飯だけはしっかり食う天使がいるんだった。
彼女はテーブルで足を組んで、口を尖らせた。
「よし、採用!」
安全性を重視しただけではない。
リリアは剣を保護してきた巫女だ。そんな彼女が提案するのなら、きっとそれはオレを正しい方向へと導いてくれるのだろう。
「可愛い巫女様が言うなら正しいはずだ」
握った真理の剣に温かさを感じた。
「やめてください、イズル様」
オレの言葉にリリアは、赤らめた頬に手を添えた。
…………
勇者エミルは地面に地図を広げた。
生家のある村で入手したものだ。神託が下され、旅立ちの際に教会の神父から授かった。
「竜王の城へは、二種類のルートがあるようですね」
賢者キュロは現在値の村を指す。
「交易路を辿るルートだと、安全に旅はできるが、遠回りになります」
「最短距離を狙うなら、森だね」
エミルが言うとキュロが指を北方向へ走らせた。
「このルートですね」
「山、森、谷が続くな。簡単ではなさそうだ」
戦士ゴードンが地図を睨みつける。
「ですが、私たちもレベル35になりました。昨夜の竜王クラスならともかく、並の魔物に引けを取ることはありません」
「どうするエミル?」
ゴードンが問いかける。
エミルは腕組みをした。
これまでなら、安全第一と答えていただろう。
エミルが即座に決断できなかったのは、竜王の残した言葉が気がかりだったからだ。
間もなく余の剣が完成する。
剣があれば、竜王は全力を出せるというのか。
圧倒的な力量差を感じた昨日の戦いでさえ、全力ではなかったということになる。ならば、完成させる前に討伐しなければならない。
エミルには、もう一つ大きな理由があった。
「ジュリアン・エルミオン」
キュロの言葉に虚を突かれて、エミルは顔を上げた。
「またジュリアン殿の話か。彼はまだレベル18だ。心配せずとも先を越されることなどないぞ。素質は認めるがな」
「素質、で片付けられますかね。彼は真理の剣を手に入れた。真理の剣は真贋の目を持つ勇者にこそ、相応しい武器のはずだった」
「キュロはそれが定められた運命のように言うのだな」
「そう思ってますよ、今でもね」
「エミルはどうなんだ?」
「そうだね……」
エミルは首を振る。
「剣のことはいいよ。僕たちよりも、彼のほうが早かった。それだけだ」
「今度こそ、先を越されないようにしなくては」
真剣な眼差しでキュロが言った。
「竜王さえ倒せれば、どちらが先でも構わない」
本心だ。エミルは竜王から平和を取り戻すことを望んでいる。
だが、できることなら、成し遂げるのは自分でありたい。
ジュリアンが追いかけてくるなら、届かないほど突き放す。
その思いが決定的なものとなった。
エミルの指が、山から、森、谷の順に辿り、竜王城を叩く。
「山へのルートにしよう」
「俺たちはどこへでも、エミルについてくぞ」
「必ず竜王を討ち取りましょう」
勇者パーティーが三人そろえば、どんな困難も跳ね返せる。
エミルは力強く山のルートへと踏み出した。
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