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悪役令息に転生したオレは、勇者のために死ぬべきか~それは処刑前夜に始まった。世界に殺されるなら、運命に抗い脱獄する――これがオレの物語だ~  作者: 未玖乃尚
第五章 改変ルート

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33 【正規ルート】【分岐ルート】巫女の選択、勇者の選択

 朝食後、リリアはテーブルに地図を置き、竜王城へのルートをオレに説明した。

 最短で到達できる山へのルートと、遠回りになるが安全性を重視して街を経由するルートだ。


「よし、手っ取り早く山へのルートだ」

「あんたならそう言うと思ったよ」

 リュシエルが肩を竦めた。


「イズル様、無理なさらないでください」

 リリアが次の街に指を置く。

「山へのルートは危険が大きすぎます。お一人で攻撃、防御、回復、おまけに食事の準備までしながら旅をするのは、リスクがありすぎかと」


 オレならきっと大丈夫だ。

 といいたいところだが、リリアのつぶらな瞳を見てると素直に従おうかと気になってくる。


 女の子に心配されるのは気分がいい。

 彼女の爺さんに言われたなら、意地でも山ルートに入っていただろうが。


「オレはまだレベル18だからな」

「山、森、谷が続くこの道は、ケガでもしたら大変です」

「確かに!」

 リリアの話に納得し、うんうんと頷く。


 リュシエルの飯もいるしな!

 非難を込めて傍観者を睨む。戦闘中は助けないくせに、飯だけはしっかり食う天使がいるんだった。

 彼女はテーブルで足を組んで、口を尖らせた。


「よし、採用!」

 安全性を重視しただけではない。

 リリアは剣を保護してきた巫女だ。そんな彼女が提案するのなら、きっとそれはオレを正しい方向へと導いてくれるのだろう。


「可愛い巫女様が言うなら正しいはずだ」

 握った真理の剣に温かさを感じた。

「やめてください、イズル様」

 オレの言葉にリリアは、赤らめた頬に手を添えた。



…………



 勇者エミルは地面に地図を広げた。

 生家のある村で入手したものだ。神託が下され、旅立ちの際に教会の神父から授かった。


「竜王の城へは、二種類のルートがあるようですね」

 賢者キュロは現在値の村を指す。

「交易路を辿るルートだと、安全に旅はできるが、遠回りになります」


「最短距離を狙うなら、森だね」

 エミルが言うとキュロが指を北方向へ走らせた。

「このルートですね」


「山、森、谷が続くな。簡単ではなさそうだ」

 戦士ゴードンが地図を睨みつける。

「ですが、私たちもレベル35になりました。昨夜の竜王クラスならともかく、並の魔物に引けを取ることはありません」


「どうするエミル?」

 ゴードンが問いかける。

 エミルは腕組みをした。


 これまでなら、安全第一と答えていただろう。

 エミルが即座に決断できなかったのは、竜王の残した言葉が気がかりだったからだ。

 間もなく余の剣が完成する。

 剣があれば、竜王は全力を出せるというのか。


 圧倒的な力量差を感じた昨日の戦いでさえ、全力ではなかったということになる。ならば、完成させる前に討伐しなければならない。

 エミルには、もう一つ大きな理由があった。


「ジュリアン・エルミオン」

 キュロの言葉に虚を突かれて、エミルは顔を上げた。


「またジュリアン殿の話か。彼はまだレベル18だ。心配せずとも先を越されることなどないぞ。素質は認めるがな」

「素質、で片付けられますかね。彼は真理の剣を手に入れた。真理の剣は真贋の目を持つ勇者にこそ、相応しい武器のはずだった」


「キュロはそれが定められた運命のように言うのだな」

「そう思ってますよ、今でもね」

「エミルはどうなんだ?」


「そうだね……」

 エミルは首を振る。

「剣のことはいいよ。僕たちよりも、彼のほうが早かった。それだけだ」


「今度こそ、先を越されないようにしなくては」

 真剣な眼差しでキュロが言った。

「竜王さえ倒せれば、どちらが先でも構わない」

 本心だ。エミルは竜王から平和を取り戻すことを望んでいる。


 だが、できることなら、成し遂げるのは自分でありたい。

 ジュリアンが追いかけてくるなら、届かないほど突き放す。

 その思いが決定的なものとなった。

 エミルの指が、山から、森、谷の順に辿り、竜王城を叩く。


「山へのルートにしよう」

「俺たちはどこへでも、エミルについてくぞ」

「必ず竜王を討ち取りましょう」


 勇者パーティーが三人そろえば、どんな困難も跳ね返せる。

 エミルは力強く山のルートへと踏み出した。


お読み下さりありがとうございました。

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