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悪役令息に転生したオレは、勇者のために死ぬべきか~それは処刑前夜に始まった。世界に殺されるなら、運命に抗い脱獄する――これがオレの物語だ~  作者: 未玖乃尚
第四章 暴かれた真実

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28 勇者パーティーは三人

 竜王の気配が消え、静けさが戻った。

 キュロはエミルに回復魔法をかける。

 それでもまだ足元の覚束ないエミルの腕を首に巻き付け、一歩踏み出した。


「どういうつもりだ!」

 キュロが叫んだ。

「君のせいでエミルが危険な目に合った。一歩間違えると死ぬところだったんだぞ」


 よほど興奮しているのか、丁寧な言葉遣いが消えてる。

 竜王戦でエミルが参戦することは計算に入れていた。勇者物語の主人公は、必ず争いごとに首を突っ込む。だからこそ、一対多数の戦いを想定して、時間稼ぎを選択した。


 オレが原因なのは確かだろうが、真理の剣入手が竜王登場を誘発させたのなら、本来の物語でも、剣を入手したエミルがこの場面でケガをしたはずだ。場合によっては、もっと深手を負っていたかもしれない。


「キュロ、ジュリアンのせいじゃないよ。悪いのは、村を襲った竜王だ」

「と、言ってるが?」

「結果としてエミルは、君を助けてこうなってる!」

 キュロが声を荒げる。


「ああ、結果的にオレが悪いと、そういうことか」

「当然だろう」

「つまり魔物が村に攻めてきたから、勇者が撃退しようとしてケガをした。竜王に襲われたオレが悪いと」


 オレはキュロの脇を通り抜け、意識が戻りかけているゴードンの頬を、気付け代わりに叩く。

 ゴードンは薄く目を開けるが、まだ意識が朧気のようだ。


「お前はそうやって勇者がケガをするたびに、大騒ぎするのか?」

 ゴードンの巨体を背負った。重い。筋力不足を実感する。


 勇者への固執は視野を狭め、判断にも影響を与える可能性もある。

 きっと、そんな言葉はキュロには届かないし、オレも伝えるつもりはない。

 死と隣り合わせのオレには、自分の命を守ることで精いっぱいだ。


「いい方法を教えてやる。勇者に旅をさせるな、部屋の奥に押し込めとけ。そうすれば、オレが代わりに竜王をぶちのめしてきてやる」

 それもいいな。竜王に上から目線で好き勝手やられたから、気分も悪い。

 あの余裕たっぷりの面を焦りに歪ませてやると、さぞ気持ちいいだろう。


「お前に竜王を倒せるものか。竜王を倒せるのは勇者だけだ」

「勇者、勇者ってそればっかりだな」

 オレはゴードンの足を引きずって、前に進む。


「こいつを忘れてないか。勇者パーティーは三人だろ。オレはいつまでも、こんなでかいヤツを背負うのはごめんなんだがな」

「そうだ、キュロ。僕よりまずはゴードンだ」


「分かってます。今すぐに」

 キュロが追いつき、ゴードンに回復魔法を施す。


 リュシエルが耳元で囁いた。

「イズル、言ってたもんね。このパーティーは勇者を引き立てるために存在してるって」

「ああ」

「残念だけど、人は簡単には変わらないよ。ましてや、これは……」

 リュシエルが口を噤んだ。


 言わなくても分かる。

 勇者物語は、勇者がいるから成り立つ。勇者が最優先で、オレも含めて他は全て駒だ。


 さあ、修正力は、乱れた筋を駒を使ってどのように立て直すつもりだ?

 オレはむざむざと死んでやらんぞ。

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