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悪役令息に転生したオレは、勇者のために死ぬべきか~世界が殺しに来るなら、運命に抗い脱獄する~  作者: 未玖乃尚
第四章 暴かれた真実

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27/52

27 二人の勇者

「今までの魔物とは、桁が違うぞ。おかげで酔いがぶっ飛んじまった」

 大剣を握るゴードンの腕が筋肉で盛り上がる。それでも切っ先の震えはおさまらない。


「とんだ災厄を運んでくれましたね」

 キュロが唇を噛んだ。


「真理の剣……と、破邪の剣」

 ぎょろり、と探るように瞳を巡らせ竜王が呟く。

「二人の勇者、か」


「勇者はエミル。ただ一人です」

 キュロが唇に魔力を乗せ、高速で呪文を紡ぐ。

「あなたは仲間ではありません。自分のことは自分でお願いします」


「そりゃそうだ」

 火竜を使って、魔力はほぼ尽きている。使えるのは短時間の補助魔法くらいだ。


 キュロの魔法が発動した。

 強化されたエミルとゴードンが飛び出す。


「正面からかよ」

 馬鹿正直なヤツらだ。オレは竜王の死角に入り込んだ。

 竜王の全身が淡い光に包まれた。

 防御障壁がゴードンの大剣を跳ね返した。


「くっ」

 手が痺れたのか、苦悶の表情でゴードンが剣を放す。 

 重苦しい風圧が、空気を裂いた。

 竜王の尾がゴードンを薙ぎ払った。大柄な体が地面に叩きつけられ、丘を転がり落ちた。


 エミルの連撃が続いた。左手の剣を弾かれながらも、破邪の剣が闇を裂いた。

「貴様は悪だ。ならば剣は障壁を無効化する」

 破邪の剣で、竜王の障壁が光の破片と化して砕け散る。


 狙い通りだ。既にオレは死角で攻撃態勢に入っている。残存魔力で身体と剣を強化する。

 真理の剣が、結界を失った竜王の影を捕えた。


 金属がぶつかりあう。刃を通して、振動が伝わった。

 竜王は戦斧の側面で剣を受け止めていた。口元に笑みを浮かべる。


 オレは腰を回転させて、力任せに剣を薙ぎ払う。

 戦斧ごとぶった切ってやる。

 ガリガリ音をさせて、真理の剣が戦斧に傷を入れ、亀裂を生じさせた。


 振り切る。戦斧が割れ、宙を舞った。

 月明りに晒される破片を、影が覆った。


 上空からエミルが剣を振り下ろす。

 折れた切っ先が地面に突き刺さる。

 竜王が肩の鱗で勇者の剣をへし折っていた。


 勇者の攻撃は一撃では止まらない。

 破邪の剣が迫る。竜王に届く寸前、勇者の体が吹き飛び、地面を跳ねた。


「またあれかよ」

 ゴードンを行動不能にした一撃だ。鉛色の尾は攻撃と防御の両方を兼ね備えている。


 竜王が勇者に近づいて尾を振り上げた。

「まずは一人」

 止めを刺そうと尾を揺らして、竜王が飛びのいた。


 エミルが体をよろめかせて、立ち上がった。

「何だ?」

 オレは勇者を中心に空気が凍り付くのを感じた。


 竜王は牙を光らせ、裂けるほどに口を歪ませて笑った。

「そうか、それがお前の秘められし力か。それでこそ勇者」


 エミルはふらつきながら、立っているのがやっとといった状態だった。

 そんな様子に反して、見る者の肌を突き刺すほどの威圧感が滲んでいた。


 竜王の背に翼が出現する。

 風が吹き上げたかと思うと、竜王はオレたちの上空へと移動していた。


「不確定要素が二体。深追いはすまい」

 マントをなびかせ、竜王が腕組みをする。

 駆け寄ったキュロが、不安定なエミルに肩を貸して支える。


「間もなく余の剣が完成する。あの剣さえあれば全力を出すことができる。その日を楽しみにしておれ」

 竜王が翼をはためかす。風が渦となって、土や葉を巻き込んだ。


 虫の声が再び響きだした。

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