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悪役令息に転生したオレは、勇者のために死ぬべきか~それは処刑前夜に始まった。世界に殺されるなら、運命に抗い脱獄する――これがオレの物語だ~【2/2完結予定】  作者: 未玖乃尚
第四章 暴かれた真実

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26 正規ルートの死亡イベント

 丘の緑が削げ落ち、岩盤が抉れて露出している。

 倒れた木々が焦げ、小さな火種が暗闇を赤く灯した。


「貴様か。昼間、余に干渉したのは」

「何のことだか分かんねえな」

「答えよ!」

 竜王に魔力が収束する。


「わわ」

 オレは慌てて丘から転げて身を隠す。

 背中で爆風が吹き荒れる。


「これはちょっとまずくないか。ジュリアンだと、少しレベルが上がったくらいじゃ太刀打ちできんぞ」

「私は忠告したよね。その剣はイズルのものじゃないって。その剣は勇者が得るはずだった」

 リュシエルが声を低くして告げる。


「いいのか、筋書きを話しても」

「もう過ぎた筋書きだもん」

「それもルールか」

 未来の筋書きは話さない。過去の筋書きは話せるということか。


「私は中立。イズルに利する情報は与えないけど、終わったことくらいは補足してあげる」

「お優しいことだな」


「そうでもないよ。せっかくあの時忠告してあげたのに無視するから、ざまあって言いたいだけ」

「確認だ。これは剣を入手したから起きたイベントか」


「さあ、ね」

 現在進行のイベントには黙秘を貫くというわけだ。

 リュシエルの表情に、筋書きが乱れたときのような焦りはない。


 剣の入手が、竜王の登場を誘発したってことか。

 つまり正規ルート。しかも勇者の命を危険にさらすほどのイベントだ。


 修正力のいやらしさを感じるのは、オレのレベルが竜王の力に到底釣り合っていない点だ。本筋の勇者なら仲間もいるし、レベルももう少し高そうなものだが。


 たかだかレベル15のオレには、竜王を相手するのは絶望的だった。

 正面からぶつかれば瞬殺される。


「やってくれたな」

 誰に言うわけでもない。だが確かに存在する何かに語りかける。


 足元に魔法陣が浮かび光を発した。

 索敵魔法だ。居場所がバレる。


「そこか」

 眼前に現れた竜王が戦斧を振り下ろした。

 鈍い音をさせて、真理の剣が弾く。

 竜王の斧にもひけを取らない。さすがリリアの剣だ。


「やはり真理の剣か、昼間の気配は……」

「剣が気になって、わざわざここに来たのか、心配性だな、竜王ってのは」

「敵の戦力を調査するのは基本だ」

「理解できてるか? お前も今、オレに情報を与えているぞ」


「レベル15風情で、覆せるものではあるまい」

「そうだな、ただのレベル15じゃ、お前に歯が立たないな」


 オレには前世から保持している能力がある。

 お前はそれを知らない。


 特別サービスだ。

 情報として持ってけ。

 オレの能力は魔法の構築だ。


 組み上げた魔法構造が複雑なほど、消費される魔力も膨大になる。

 この魔法は現在のジュリアンでは、一撃が限度だ。


「例えば、こんなのはどうだ?」

 右腕に魔力を纏う。魔力が唸りを上げ、火花を散らす。空気に噛みつくように揺らいだ。赤黄色に変貌し、螺旋を描きながら、手首の位置で上下に裂ける。


 牙を晒して威嚇する猛獣の形を作り上げると、竜王に向かって射出した。

 竜王の固有魔法、火竜だ。


「お前の言う通り、情報は大切だ。オレは既にお前の情報を得ていた」

 リリアの試練でな。


「なぜ、お前がそれを使う!」

 目が驚愕に見開かれる。初めての動揺だ。

 竜王は腕を交差させて防御姿勢に入る。

 火竜が腕ごと噛みついた。首を振って竜王を顎ごと叩きつける。


 跳ね上がった土砂の中で、竜王の眼光がオレを射抜く。

「これで終わりか」


 オレはたかだかレベル15だ。多少意表を突いたところで、竜王の装甲は破れない。

「まさか」


 火竜を自爆させた。

 爆風を利用して、距離を置く。


 何とか間に合ったか。

 読みが外れれば、また別の方法を考えねばならないところだった。


 オレの隣で、三人分の影が伸びた。

 一対一で戦う必要はない。

 勇者が世界の脅威に立ち向かう物語の定番といえば。


 大剣、杖、そして……


「ラスボスには、複数で総攻撃が定番だろ」

 火竜は、単なる時間稼ぎだ。勇者は脅威を無視できない。

 勇者エミルが剣を抜いた。


「これが竜王……世界の敵か」

 エミルが左手の剣を竜王に突き出し、腰を落とす。

 右手には破邪の剣があった。

 二刀流の勇者が、竜王に対峙する。

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