25 星の間に見えたものは
「で、明日からどうするつもりなの?」
リュシエルは転がったオレの腹に座ってご馳走を食べている。
「そうだな……」
グスタフに復讐を果たしたことから、ヤリスの街を次の目的地にする必要性も低くなった。
ゴロゴロしながら焼き鳥にかぶりついた。
「行儀悪いヤツだね」
「気が抜けてだらけてんだよ」
処刑日前日に脱獄してから、ゆっくりする間もなかった。
そういえば、まともに星空を見るのは、この世界に来て初めてだ。
星座なんて分からない。でも知ってる星ならいくつかある。
指差しして確認した。
「流れ星見つけたら教えてね。早く家に帰れますようにってお願いするから」
「それ遠回しにオレの死を願ってることになるから」
星が煌めく。
草の香りに紛れて、虫たちの歌が聞こえた。
食べきった焼き鳥の串を咥えて上下に振っていると、縦に光るものがあった。
赤い星と白い星の間に、二つの輝きがあった。目を凝らすと、輝きの間に裂け目のようなものがある。
「何だあれ?」
「流れ星? 早く家に帰ってケーキ食べられますように」
「違う。あそこだ」
リュシエルに教えるが、彼女は首を捻った。
「どこ? 分かんないよ」
「あれだよ」
暗闇に反射する瞳のようだった。
裂け目から溢れた青白い光が、夜空に隠れていた亀裂を曝け出す。
虫の声が止む。
リュシエルが、羽根を広げた。
羽音が聞こえそうなほどの静寂だった。
リュシエルが同じ目線になるようにオレの頬近くに座った。
「あ~、あれね。よくあんなの見つけたね。この広大な夜空でさ」
鮮やかな星々に紛れていたに過ぎない。
オレはただ知っている星を探しただけだ。それを星の導きだと表現する人もいるのだろう。
「すごくちっちゃい銀河みたい」
「そうだな」
オレは人差し指を裂け目に重ねた。指先がするり、と入りそうだ。
亀裂からは、ぼんやりと光が滲んでいた。中央から真下に、ひっそりと糸のようなものが垂れていた。目を凝らしてようやく気付く、すぐに光に飲まれてしまいそうな、その程度の存在だった。
行先を辿ろうとすると、びゅんと風が吹き、光を遮った。
顔面を叩きつけるほどの強い風圧だった。
異質なものを感じた。何者かの影が駆け抜けた。
リュシエルが突風に驚き小さな悲鳴を上げた。
オレは剣を握って飛びのいた。
ごうっ、と唸るような地響きが轟く。閃光が走った。
防御障壁を張る。
爆風で周辺の木々が消し飛んだ。
「ははっ」
思わず声が漏れた。
構えた剣先にいたのは、覚えのある人物。しかも昼間見たばかりだ。
鉛色の棘を纏った尾が揺れる。
背中まで伸びた、うっとうしい長髪と全身を隠せる赤マント。
「ここで竜王の登場かよ」
レベル15のオレの前にラスボス登場ってか。どうなってんだ。




