24 死んだ後に思い出してあげる
オレは両腕にごちそうを抱えて、村外れの丘に座った。
周辺に骨付きの肉や串料理、パンを並べていく。
最後に甘みある果実を添える。
眼下には祝勝会で賑わう、村の明かりがあった。
「なになに、こんなところで一人祝勝会でもやるっての?」
リュシエルが周囲を飛び回って、からかうように言った。
「バカ。これはお前のだ」
リュシエルを視認できるのはオレだけだ。
人目のないところなら、リュシエルも好きなだけ食べられるだろう。
「へ、へえ。私のためにわざわざ、こんなとこまで来たわけ?」
「お前はパーティーの一員だからな」
「私、何もしてないけど」
「そうだな、耳元で思わせぶりなことをぶつぶつ言って、戦闘には参加しない。タダ飯喰らいだ」
「しょうがないじゃん。私はイズルの死を見届けるのが役目だもん。最初から言ってるでしょ」
「別にそれでいい。リュシエルが幸せそうに食べるのを見るだけでオレは満足だ」
「真顔で恥ずかしいセリフ言わないでくれる?」
「オレは恥ずかしくないけど?」
「ダメ。そもそも私が食べてばっかりみたいじゃん」
間違ってはないと思うが。
リュシエルは、パンを口に入れると、空を仰いで一息ついた。
「味が体に滲みるわー、イズルと出会ってから、まともなもの食べられてなかったからね」
「これも美味かったぞ」
オレはブドウを一粒つまんで、弾き飛ばす。
リュシエルは両手で掴んだ。
「……ありがと。いいとこあるじゃん、イズルも。基本、無茶苦茶なヤツだけどさ」
「オレは女の子には優しいからな。リュシエルは美人だから、特別優しくしてやろう」
「ふふん。可愛くて良かった」
「性格は腐ってるけどな。お前が男の天使なら、今頃丸めて川に流してる」
「まるで、自分は性格いいみたいな言い方じゃないの」
「どっちでもいいんだよ、オレは。どう思われても、オレはオレだ」
「ま、イズルはそうなんだろうね」
リュシエルは手元のブドウを眺めた。
「私が何を言ったって変わらない。自分の道を突き進む。それがイズルの……生き様なんだね」
「どうかな。オレの道は別に直線ってわけでもない。時には曲がりくねることだってある」
オレの言葉にリュシエルの長い睫毛が揺らいだ。
「わっかんないね。抽象的過ぎて」
リュシエルはブドウを口に含む。
味わうように咀嚼して飲み込んだ。満足したのか、頬を緩ませる。
「女の子の笑顔が見れるなら、回り道だってするってことだ。例えば、手のひらサイズの天使を喜ばせるために、ご馳走を運ぶ、なんてこともする」
追加の一粒を差し出す。
「恥ずかしいセリフを真顔で言うなっての」
ブドウを受け取ったリュシエルは肩をくねらせ、照れ隠しをするかのようにくるりとその場で回った。
「まあ、ご馳走持ってきてくれた、お返しくらいはね……」
両手のブドウをオレに突き出した。
「優しくしてあげてもいいよ……あーん」
リュシエルが小さな唇を開けて促す。
彼女の仕草を真似ると、口にブドウが転がり込んできた。
「うん、うまい。女の子に食べさせてもらうとやっぱり違うな」
「実は本来の私は性格もいいんだよ」
「顔も性格もいいとか、最強だな」
「うん」
頷くとリュシエルは羽根の動きを止めて、オレの腿に降り立った。
「私、最後まで見届けるからね、イズルの生き様ってやつをさ」
「死に顔を見せるつもりはないぞ」
「……ってなことを言ってたな、って死んだ後に思い出してあげるよ」




