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悪役令息に転生したオレは、勇者のために死ぬべきか~それは処刑前夜に始まった。世界に殺されるなら、運命に抗い脱獄する――これがオレの物語だ~  作者: 未玖乃尚
第二章 勇者と竜王がいるらしい

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12 勇者パーティーのルール

 勇者たちがいなくなり、ポケットに入れておいた果実を渡すと、リュシエルは喜んで齧りついた。


「わーい、ありがと。まさか、貰っておいてくれるとは。イズルも気が利くとこあるんだね」

「真横で恨めしそうに見てるからだ」


「だって私が食べられないのに、一人でバクバク食べてるんだもん」

 リュシエルは甘さを噛みしめて体を揺すった。

「甘い! おいしい!」


 巨大魚に飽きてたからか、特別幸せそうに顔全体がくちゃくちゃに綻ぶ。

 こんな笑顔ならずっと見ていられる。


「勇者がいても、遠慮せずに食べればよかったのに」

「私の姿は見えないんだってば。空中に食べ物が浮くとか、齧られて減ってくとことか想像してよ。怪しすぎるでしょ」


「それはそれで面白そうだ」

「そう思うのはイズルだけ」

 リュシエルは勇者が去っていった方向を振り返った。


「良かったの? 一緒に行かなくて。仲間が増えると生存率も上がるのに」

「お、オレに死ね死ね言ってたヤツのセリフとも思えんな。情でも芽生えたか?」


「ないない。私は感情を持たずに、結果を求めるだけ。単に疑問に思ったの。イズルは効率を重視してるようなところもあるでしょ」

「効率よりも重要なのは」


 指を立てた。

「まず、オレは男パーティーに入るのは嫌だ」

「それ、真面目な答えなの?」


「一番の理由だぞ。大事なところだ。次に……」

 地面を這う大木の根を、枕代わりにして横になる。

 もともと食後は昼寝の予定だった。


「あのパーティーにはルールがある」

「ルールって?」

「勇者がいてこそ成り立つパーティーだ」

「そりゃ勇者パーティーだからね」


「それは本質じゃない。あいつらは全てを勇者に捧げてる。あのパーティーは勇者を引き立てるために存在してる、それがルールだ」

 あいつらは誇らしげに勇者を語る。デーモンとの戦闘の見せ場を任せ、どこまでも付いていくというセリフ。


 リュシエルの横顔を覗く。反応はない。

 やはり、リュシエルは物語の筋道に関することになると、途端に口が重くなる。

 この世界を知るヒントになる。


「オレは違う。オレの人生はオレの物だ。他人に預けたりはしない。それに……」

 リュシエルをつつく。

「お前も二人のほうがいいだろ?」


「それだと私がイズルと二人きりでいたいみたいじゃん」

「仲間が加わると、メシ食う時もいちいち視線を気にしないといけないぞ」

「それは……あるかも」

「というか、お前は物語にいないキャラだから、食事しなくてもいいんじゃないのか?」


「楽しみに必要なの!」

「リュシエルは、本当に食うのが好きだな。そのうち、また美味い物持ってきてやるよ。オレが生きてる間はな」


「む、悩む提案だね。イズルの死を望むべきか、食べ物を取るか」

 憎たらしくリュシエルが言う。

 怒る気力も湧かないくらい、脳が眠気で揺れる。欠伸が出た。


 ジュリアンの体は負傷して、疲弊している。食事後に眠くなるのも当然だ。

 昨夜脱獄して戦い続けてたからな。

「そこはオレを選ぶところだろ……」


 花の匂いだろうか。

 うとうとし始めた頃、甘い香りが鼻の奥をくすぐった。

 意識が曖昧になる。デーモンから漂っていた香りと結びついた。


 この、むせ返りそうになるほどの甘ったるい匂いは……

 記憶にない。だが体が覚えている。

 オレのものではない、これは俺の記憶だ。……

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