ラストダンジョンのセーブポイント
魔王の城。
最後のセーブポイントに辿り着いた僕は愕然とした。
何故ならそこには数えきれないほどの冒険者たちが居座っていたからだ。
「ありゃ? 見ねえ顔だな」
「え? 新人がきた?」
「おーい。皆、新しい奴がきたぞぉ」
酒をチビチビと飲んでいた彼らの数はおよそ二十人。
僕は困惑したまま彼らに尋ねる。
「この魔王城からは生きて帰った人はいないって聞きましたが……」
「あぁ、その通りだな。誰も帰って居ねえから」
そう言って一人が笑い、それに釣られて皆が笑い出した。
「俺らは皆、アンタみたいな名の知れた冒険者だったんだよ。そこで勘違いして無謀にも魔王城に挑んだってわけさ」
「何故、帰らないのですか」
当然の問いを僕がすると彼らは肩を竦める。
「なら坊主。来た道を戻ろうとしてみ」
言われるがままに僕は来た道を戻ろうとする。
すると次の瞬間。
『逃がさぬ……誰一人として……!』
どこからともなく聞こえてきた声と共に僕は弾かれてしまった。
どうやら足を踏み込んだらもう戻ることは出来ないタイプの部屋らしい。
「魔王は強すぎて歯が立たねえのに部屋から出られねえからレベル上げも出来ねえ、そのくせセーブポイントはご丁寧に全回復の仕様付きだ。俺らはもう随分とここで立ち往生しているってわけさ」
僕は呆れながらため息をつく。
仮にも名の知れた冒険者たちが一体何をしているんだか。
「もういい。僕があんた達を解放してやるよ」
「へえ、頼もしいじゃねえか」
「おうおう! やっちまえ坊主!」
そんな言葉に背中を押されながら僕は魔王の待つ玉座へと向かった。
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「お、戻って来たか」
「セーブしといて良かったな」
そんな男達の言葉を受けながら僕はぽつりと呟いた。
「いや、強すぎません? あいつ。糞長い自分語りがようやく終わったと思ったら即死したんですけど」
すると男達は大笑いをする。
「そうそう。良く分からんけど、あいつ滅茶苦茶強いんだよ。俺らが束になっても話にならねえんだ」
「じゃあどうすれば……」
「どうしようもねえよ」
まるで酒場の中にでも居るような馬鹿笑いが響く中、僕はため息をつく。
どうやら本当にどうしようもないらしい。
「烏合の衆の仲間入りだな、坊主」
僕は頭を抱えるばかりだった。
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数年後、一人の少女により魔王は滅ぼされる。
それと同時に比類なき強者で形成された傭兵集団《烏合の衆》が現れることになるのだが、その関連性は不明である。