エピローグ
それから、数年の時が経った。
響は警備隊に復職し、秋子は家の事をほとんど出来る様になった。
休みの日には、衛芯とゲーム。以前と違う事と言えば、そこに響も交ざる様になった事だろうか。
秋子は、小説も、イラストも、どんどん上達し、今では普通に上手いレベル。一番の読者は響だ。
ある日……。
料理をしていた秋子は、扉の開く音に反応し、そちらを振り向いた。
「あ、響さん、お帰り」
「ただいま……」
響は何やら元気が無い。と、いうより、緊張している様だ。
「響さん、どうしたの?」
「……これ」
心配する秋子に、響は後ろ手に持っていた花束を渡す。
「わ! ありがとう! なんの花だろう? でも、今日って何かあったっけ?」
「カンパニュラ、っていうらしい……。あ、あのさ……」
不思議がる秋子に、響は緊張しながら答える。
「うん、なぁに?」
「お、俺と……俺と結婚してくれ!!」
「へ……?」
予想外の響の言葉に、秋子は固まる。
「俺ら、戸籍、無いから、形だけだけど……」
「……」
「だ……駄目か……?」
押し黙る秋子に、響は心配になって聞く。
すると、秋子はぼろぼろと涙を流し始めた。
「えっ! あ! い、嫌だったか!?」
響は、あわてふためく。
「ううん……ううん……」
秋子は響の言葉に、首を横に振る。
「喜んで」
秋子は涙を流しながら、満面の笑みで答えた。
「あの、お客さん、プロポーズ上手くいったかなぁ」
『あ、あの』
『はい、なんでしょう』
『好きな人にプロポーズしたいんですが、やっぱり、薔薇とかが、良いですかね……? あの、感謝の気持ちも伝えたくて……』
『まあ! それなら、今の季節、良いお花がありますよ』
「カンパニュラの花言葉は、『感謝』、『誠実な愛』、『思いを告げる』。……きっと、上手くいくよね」
このカンパニュラは、君が照らしてくれた。俺は、それを、忘れない。