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第3話

「秋子……何で……」

 響は突然の出会いに驚いた。

 けれど、秋子は嘲笑うかの様に続ける。

「あなたの能力が面倒なものなので、足止めしに来ました」

 秋子がそう言うと、秋子と響は光の粒子になった。

「なっ……!」

「動けないでしょう? そういう能力ですから」

「秋子……! どういう事だ……!」

「このまま待つのも暇ですし、少しお話しましょうか」

 余裕の言葉を携える秋子は語り始めた。

「私、今、『反政府組織』にいるんですよ」

「……!」

「ふふふ……、驚きました? でも、あなた達が悪いんですよ」

「……」

「ああ、その反応、やっぱり自分が原因だと理解している様ですね」

「……秋子……俺は……」

「うわべだけの謝罪なんていりませんよ」

「(このままじゃ話せない……。なら……!)」

 響は己の『能力』を使った。

「は……? え、な、何これ……! 何……!?」

 響は、自分の『心の傷』を秋子に移した。

「あ……あ……」

 2人の光化が解けていく。

 秋子はボロボロと涙を流していた。

 本当は使いたくなかった。秋子に辛い思いをさせるのが、しのびなかった。

 だが、それしか方法はなかった。自分の過去を晒すのが、秋子と話をする方法だと思ったからだ。

「秋子……」

 響が秋子に近づこうとすると……

「うーん、秋ちゃんには荷が重かったかー」

 男性の声が聞こえ、刹那、視界が真っ暗になった。

「何だ……!?」

「秋ちゃんの仲間だよ。これは俺の能力。何の能力かは内緒ー」

 男性の声は、戦いに来たわりには、のほほんと、どこか気が抜けていた。

「……秋子と話をさせろ」

 響は、見えない誰かに向かって話しかける。

「秋ちゃんをこんな状態にさせておいて? 今の状況だけじゃない。『今まで』の状況だ」

 男性の声は少し、真剣みをおびた。どうやら、響と秋子の関係を知っている様だ。

「……だからだ。話がしたい」

「秋ちゃんを傷つける話なんて、俺は、まっぴらだね」

「……」

 話し合いが、秋子を傷つけないか。それは、わからない。

 今だって、健常者への憎しみは、ある。

 でも、秋子と、秋子とは話をしなければいけない。

「それでも俺は秋子と……」

 響がそう言いかけた時……。

「ちょっと眠っててもらおっか」

 響の首もとに、重圧がかかった。

「かっ……!」

 数秒で、響の意識は落ちた。


 反政府組織のアジトに戻った秋子は、ベッドの縁に座って考え込んでいた。

 今日の、任務の事を……。


『当真(とうま)さん……ごめんなさい……』

『だいじょぶだよー。初対人実戦任務なんてこんなもん! それに作戦は成功したしね』

『はい……』

『それより、秋ちゃんは大丈夫? あいつになんかされたんでしょ?』

『あ……。今はもう大丈夫です……。ご心配おかけしてすみません……』

『ならいいけどー』


 もっと、鍛練を積まなければ……。

 けれど、精神の鍛練は、どう積めばいいのだろう……。

 そう、精神の……。

「(今はもう、辛くない。でも、記憶は覚えている……。響さんの過去……。辛さ……。私にあれだけ辛く当たった理由……。健常者に憎しみを持っても無理はない……。でも……)」

 秋子は手を強く握り締めた。

「だからって……許せないよ……」

 誰もいない部屋で、1人、ぽつりと呟いた。


 響が目を覚ましたのは、日が傾き始めた頃だった。

 秋子達は当然、いなかった。

 秋子の事を、警備隊に報告するか、悩んだ結果、誤魔化す事に決めた。秋子を犯罪者にしたくなかったからだ。

 とりあえず警備隊の本拠地に、誤魔化しの報告に向かうと、そこはもう、てんやわんやだった。響の事など誰も気にしていない。

 これなら何も言わずに帰っていいだろうと、響はこっそり家路についた。

 家に帰ると、衛芯はいなかった。おそらく、事件の対応に追われているのだろう。

 衛芯と響がゆっくりと話が出来るまで、約1ヶ月程かかった。

 響は、秋子の事を衛芯に伝えた。

 衛芯は、

「そうか……」

 と言って、渋い顔をして、しばらく黙りこんだ。

「……響」

「何だ」

「俺は、これから、お前に非情な事を言う」

 衛芯の声は、今までに無く低く、そして、真剣だった。

「お前は、警備隊を辞めて秋子を探せ。そして、どんな結果になろうとも話をするんだ。お互い、納得いくまで」

「わかった」

 即答した響に、衛芯は目をぱちくりさせた。

「もっと……渋るかと思ったが……」

「俺も……あいつと……秋子と話さなきゃいけないと思ったんだ……」

「響……」

 衛芯は、響を見つめた後、下を向く。

「本当は、俺がやらなきゃいけなかったんだ……お前と秋子の事は……。でも、どちらも傷つくと思った。その結果がこれだ……」

 そんな衛芯に響は言う。

「顔、上げろよ。衛芯さんは悪くない。衛芯さんは、いつも俺達の事考えてくれてた。今度は、俺達がやる番なんだ」

「お前……」

 衛芯は、響の言葉に顔を上げる。


『健常者なんて、大っ嫌いだ!!』


「成長……したなぁ……」

 衛芯は、へらりと笑った。


 1ヶ月後……。

「ホントは、俺もついて行きたいが、お前らの帰って来るかもしれねぇ場所を守んなきゃなんねぇ」

「大丈夫だ」

 警備隊を辞め、旅の準備を整えた響と、見送りの衛芯は玄関先で話していた。

「危険な……道になると思う……。命すら保証出来ない……」

「重々承知の上だ」

「……なら……行ってこい」

「ああ」

 そう言って、響は歩きだした。


 そうして、1年経ったある日。

「ここに……秋子がいんのか……」

 響は、その地に立っていた。

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