パーティー登録とちぐはぐな装備
第1階層のベビーラットを狩り尽してドロップアイテムは画面に全て投入しておいた。
今回の戦利品はこんな感じだな。
ベビーラットの魔石×36
ベビーラットの尻尾×15
ベビーラットの肉×10
ベビーラットの爪×6
ベビーラットの歯×5
ダンジョン内で倒した魔物はドロップアイテムに姿を変える。
ゲームみたいで不思議なものだが、この不思議な現象が起こるのも“この世であってこの世でない”と言われる理由だ。
この世界にはダンジョンの外にも魔物はいる。
外の魔物を野生の魔物と呼ばせて貰うが野生の魔物は倒した場合に亡骸が残る。
人間も死ねば亡骸が残るのと同じ通りだ。
しかしダンジョンの場合はそうではない。
魔物を倒せばドロップアイテムに変わるし、人間が死んで亡骸を放置すれば持ち物もダンジョンに吸収されてしまう。
死んでから1分もすればドロドロの沼に沈んでいくように少しずつ地面に沈んでしまうのだ。
だからダンジョンで死んだ人間は亡骸が残らないので行方不明とされる事が多かったりする。
と思考が逸れたがドロップアイテムだ。
ダンジョンの魔物を倒した場合、魔石と一つのアイテムを変わる。
どちらも確定ドロップだが、どんなアイテムが落ちるかランダムになる。
野生の魔物の場合は亡骸が丸々素材となるのでどちらが効率的かと言われると微妙な所だが、一度の戦闘で得られる収益は野生が上。
効率良く数を倒して収益を上げるならダンジョンが上といった所だろう。
野生の魔物は魔物自体を探す手間が掛かるが、ダンジョンの魔物はダンジョン内に沢山いるので野生ほど探す手間が掛からない。
この世界には経験値とレベルの概念が存在するので、経験値を稼ぎたければダンジョン一択である。
因みにこの世界ではあまり知られていないが魔物を多く倒す利点は他にもあって。
「どうしたの?」
マリカが心配そうに俺の顔を見上げている。
どうやら自分の世界に入り込み過ぎてしまったらしい。
「いや、ドロップアイテムが微妙だなぁと思ってさ」
「第1階層だしね。ベビーラットじゃお肉もあんまり取れないし」
肉が取れないとがっかりしているが、マリカは肉好きなのかな?
肉食系女子なのかな?
実際ベビーラットは生まれたてのネズミみたいな見た目をした魔物でサイズは両手に乗るくらいの大きさしかない。
肉は食べられるのだが、そんなサイズなので肉がドロップしても食いでがあるとは言えない。
他のドロップアイテムで言うと魔石は1個100B相当。
尻尾はゴミで爪は加工すれば売れるかなってレベル。
歯は、、、
「歯は入れ歯にでも加工するかなぁ」
俺の歯って殴られ過ぎて殆んど抜けてるし、少しだけ残ってる歯も全部欠けてるんだよね。
ちょっと今の発言にマリカが引いている様子なので話を変えよう。
「一つ提案なんだが。マリカ、俺とパーティーを組んでくれないか?」
第1階層で十分俺が戦える事を示したと思うので、このタイミングでパーティーに誘ってみる。
正直に言ってマリカの戦いっぷりは授業で見て結構酷い事を確認しているのだが、その辺は俺が教えればどうにかする自信はある。
これでも【GOD PLANET ONLINE】ではトッププレイヤーの一角だったからな。
運動神経が絶望的なプレイヤーを普通に戦えるぐらいまで育てた経験もあるし。
「え?パーティーって友達って事?うん、全然良いよ!」
何か勘違いをしているみたいだが可愛いので流しておく。
言質を取ったので画面の【ステータス】から【パーティーメンバー登録】を選んでマリカの名前を入力する。
『対象のプレイヤーまたはNPCを探しています』と表示が出て数秒で名前と3Dキャラ化されたマリカが表示されたので選択して決定する。
すると『パーティーの申請が受諾されました』と表示されてステータス画面に戻った。
これでマリカのステータスを確認出来る様になって俺が倒した魔物の経験値もマリカに入る様になるのだが、、、ん?
「マリカ、一つ聞きたいんだが。
短剣術のスキル持ちなのにどうして剣を使ってるんだ?」
マリカのステータスのスキル欄には短剣術と表示されている。
それなのに腰に佩いているのはショートソードだ。
これはGPOプレイヤーだった俺からすると意味が解らない。
理解不能だ。
「えっとね、実はこの剣お父さんのお下がりなんだよね。
武器って結構高いし短剣も剣もそんなに変わらないかなって。
ほら、ショートソードって言うでしょ?」
ショートソードってそういう意味じゃないんだが。
なるほど、スキルと装備がちぐはぐなのだとしたら寧ろ朗報かもしれない。
TOPに戻って【ショップ】からアイテムを購入して。
「だったらこれを貸すから使ってみないか?」
画面からマリカのスキルに合った武器を取り出して彼女に手渡す。
刃渡り30㎝でシンプルな革の鞘に納まったダガーで、その名もダガーだ。
GPOのショップにはそれぞれのスキルに合わせた初期装備が5000Bで販売されている。
初期装備なので性能は最低限だが、今は出費を抑えたいのと用途的にこれで十分だろうと判断した。
「良いの?」
「おう。マリカにはこれから俺の手伝いをして貰いたいと考えてるからな。
一緒に強くなる為に是非ともその武器を使ってくれ」
「うん、ありがとう!頑張るね!」
ダガーを受け取ったマリカは嬉しそうに。
けれどもやる気に満ちた表情でダガーを抜き、その刃を天高く翳した。
まるで強力な武器を手に入れたかの様に見えてしまうが。
その手に握られているのは何の装飾も無いシンプル過ぎる見た目の単なる鉄のダガーである。
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作者のモチベーションを上げるなら数字が一番だって昔どこかの偉人が言ってた気がする。