スキルの取得とブービー賞の女の子
さて、俺が今何をしているのか教えてやるとしようか。
俺は今!オークションで落札した火属性魔法の技術書を読み込んでいる!
意外だったか?そうだろうそうだろう。
全くもって意外なんかじゃないって?それは言わない約束だろう。
「リアルでスキルブック読むの面倒臭いな、、、」
そう、ゲームではアイテムとしてスキルブックを使用するだけで一瞬にしてスキルの取得が出来ていたのだ。
それが現実世界となると何と面倒臭い事だろうか。
別に書かれている文字を全部読む必要はないっぽいんだが、全てのページを開かなければならないと俺の直感がそう告げている。
だからパラパラ捲るのもちょっとばかり怪しい。
となるとしっかり1ページ1ページ開いてページ数ぐらいは確認しなければならないのだ。
これはあまりにも暇である。
「そう言えば、俺ってGPOをプレイしながら死んだんだよな。神様がアプデ操作を間違えたとかで」
神様曰く、前世の俺はVRMMO【GOD PLANET ONLINE】をプレイしている最中に死んだ。
死因は大型アップデートの大容量データが俺の脳に直接流れ込んで来て脳がバグったらしい。
その詫びとしてGPOのシステムを持ったままGPOの元ネタになっている世界に転生出来た訳なのだが。
「まさか神様が運営してるゲームだったとはねぇ」
俺が説明を受けた所によると。
VRMMO【GOD PLANET ONLINE】は複数の神様がアイデアを出し合って運営しているゲームなのだそうだ。
確かにタイトルにGODって付いてるけれども、だとしたらそのまんま過ぎやしないだろうか。
しかも俺を死なせた神様のこぼれ話だと誰がGODなのかで揉めてるらしいし。
だったら最初から複数形にしとけよと思わなくもなかったが。
「まあ神様が運営してるお陰で資金難になってサ終する心配が無いのは良いよな」
普通のオンラインゲームはどれだけ栄華を極めたタイトルでもプレイヤーが減ればテコ入れをし、迷走をし、やがて儲けが出なくなればサービス終了の判断が下るのが世の常だ。
しかし神様が運営しているとなれば話は変わる。
神様は金なんて必要ないし、そもそも運営資金なんて気にする必要がない。
そのうえ大枠のアイデアだけ口出ししたら後の作業は天使がやっているそうなのでサービスを終了するという判断自体がありえないらしい。
天使も神様達の運営するゲームが不人気でプレイヤーがいないなんて事態になったら拙いと本気で新コンテンツの開発に力を入れているそうだ。
だからあんな壮大な作品を生み出せたんだな。
俺はオークションが一番好きなコンテンツだったけれども。
「これが最後のページか。よし、読了」
ページ数しか見ていないので別に読了はしていないのだが、何となく言葉にしてスキルブックを閉じる。
するとスキルブックは青い炎に包まれて消えてしまった。
これでステータスのスキル欄に初級火属性魔法が追加されている筈だ。
漸く起き上がって画面の操作を始めると、誰かが走って近付いて来る足音が聞こえた。
少しだけ気になってそちらに視線を向けると。
「ロード君!三階から落ちたって聞いたけど大丈夫!?」
短めの茶色い髪に翠色の瞳をした女の子が心配そうな表情で見下ろしていた。
別に見下している訳ではなく俺が地面に座っているから目線が高いだけである。
この少女はマリカと言ってクラスの中で唯一俺の心配をして声を掛けてくれる女の子である。
マリカの成績は俺の一つ上で所謂ブービー賞。
穿った見方をすれば俺に辞められると虐めの対象が自分になるので、最下位になるのを恐れて俺に優しくしているのかもしれないが。
それは流石に考え方がひねくれ過ぎているだろう。
あまり腹芸の得意なタイプには思えないし。
「ああ。死に掛けたけど今はもう問題ない」
そう言って立ち上がり反復横跳びをしてみせる。
「死に掛けたのに元気過ぎない!?けど元気そうで良かったよ」
胸を押さえて息を吐き、心底ホッとした様子のマリカに。
ついさっき穿った見方をして彼女を疑った俺は少々居心地の悪さを感じたりなんかしつつ。
「担任教師様による有難い終業の挨拶は終わったのか?」
「うん。終わってから直ぐに飛んで来たの」
なるほど、とても良い子ではないか。
実際に飛んだのは俺だけれども。
飛んだと言うより投げ落とされたんだけれども。
マリカは多分性格が良い。
俺はこの夏休み中に。
もっと言うなら今日から効率良く強化を進めていくつもりなので、夏休み明けには冒険科の最下位はマリカになっている事だろう。
と言うか俺は火属性魔法を習得したので現段階で既に最下位は入れ替わったと言って間違いでは無い。
つまり夏休み明けに虐めのターゲットになるのは順当にいけばマリカになるのだが。
「マリカは夏休み中、実家に帰るのか?」
この質問の返答次第で。
「ううん。私の実家って辺境の村だから行き来するだけでも時間掛かっちゃうんだ。その分お金も掛かっちゃうし」
なるほど、つまり学園寮に留まると。
「だったらこれからダンジョンに行かないか?ちょうど人手が欲しかったんだよ」
俺はマリカをこちら側に引き込む事に決めた。
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作者のモチベーションを上げるなら数字が一番だって昔どこかの偉人が言ってた気がする。