表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/56

三十二話「被写体」

 鬼村が怪談イベントに出る事になった折、作品グッズと一緒に本人のチェキを売ろうという話になった。

 安易な発想ではあるが、なにせ流行っているのだから一度くらいは試したい。鬼村のファンは若い層も多いので、一緒に撮ったチェキはいい思い出になると思ったのだ。

「ああ、だめだめ」だのに鬼村は醜く顔を顰めて私の提案を一蹴した。

 正直驚きはない。彼女は写真好きなタイプじゃない。自撮りをする事も一切ないし、唯一見た事がある彼女の写真は、解体中のおばあ様の家とのツーショットだけである。

 だが、鬼村が断ったのは単純に写真に写りたくないという理由だけではなかった。

「何写るか分かったもんじゃないもん」鬼村は面倒くさそうに唸った。

「えー、いくらなんでもそんなバチバチ心霊写真は撮れないでしょう?」

 事実、テレビ番組に出たり対談で写真を撮られたりした事だってあるが、変なモノは写らなかった。怪奇現象が起きる事もままあるものの、彼女は普通に被写体として満足な働きをしていたはずだ。

 だが鬼村は頑なだった。

「まあまあ」私は持参したチェキ機を鬼村に見せ、レンズを向けた。「大丈夫ですって。ね? ほら」

 むくれた四十女の顔がフラッシュの中に白く浮かび上がる。すぐにチェキが吐き出され、私はそれを覗き込んだ。

 私が写っていた。

「は」

 チェキ機を構えているせいで顔は写っていないが、間違いなく私だ。

 まるで二人でカメラを向けて撮り合ったような写真。こんなの不可能だ。何もかも、道理が通らない。

 固まる私を見、鬼村はひょいとチェキを覗き込んだ。

「ほらねえ?」

 心霊写真くらいなら、可愛いもんだよ。

 独り言のように「随分時空歪んだねえ」と呟きながら私の手からチェキを奪った鬼村は、チェキを食べそうな程口を近づけ聞き取れない程小さな声で何かを囁いた。

「……はい、もう良いよ」

 鬼村に返されたチェキを見ると、そこにはただでさえブサイクな顔を更にブサイクに歪めている嫌悪感丸出しの鬼村が写っていた。

「これでもやるってんなら、一枚一万円にしてもらうからね」

 言われなくても、チェキは無しである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ