表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/56

二十八話「チッチッチッ」

 鬼村の家に通うようになって暫く、私は気づいた事があった。

 この家には時計が一つしかないのである。

 否、正確に言えば時計自体は複数あるのだが、ちゃんと動いているものは居間にあるそこら辺で売っていそうな安い壁掛け時計だけで、廊下の立派な柱時計も、寝室の鳩時計も、後はみんな止まっているのだ。

 その事を鬼村に指摘すると「いや、今は携帯あるし」とぐうの音も出ないばっさりした答えが返ってきた。

 確かに、時間なんていつでもスマートフォンで確認できる。それは間違いない。しかし、いくら一人暮らしとは言え部屋が複数ある一軒家において、動いている時計がたったの一つと言うのは不便な気がしてならなかった。2LDKの私の部屋でさえ、三つは時計があるというのに。

 いまいち納得いかない私を見て、鬼村はおもむろにこんな話をはじめた。

「この家買った時はね、家にある時計は全部ちゃんと動いてたのよ。でもある日、執筆しながら聞くともなしに時計の、あの、秒針のチッチッチッて音あるでしょ、あれを聞いてたらさ、急にそれが舌打ちの音だって気づいたの。ぱっと振り返ったら秒針の音に戻ったんだけどそれ以来気抜いてると舌打ちが近づいて来るようになっちゃってねえ。面倒だから全部止めたわけ。あ、居間のは秒針ないから大丈夫。それと、時々止めたはずなのに柱時計と鳩時計が鳴るんだけど、鳴ってる時は近づかないでね」

「……そんな重要な事今言うんですね」

 青い顔をする私を見、鬼村は大きな歯をむき出して笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ