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二十六話「幽霊のおうち」
ある日鬼村が言った。
「心霊スポットにさ、他の心霊スポットの幽霊連れてったら、面白くない?」
私は言った。
「駄目です、外来種は生態系を壊します」
「そんな、ブルーギルじゃないんだから……せめて蟲毒とか言ってよ」
「そんな大層なものじゃないでしょう」
「はーあ」
わざとらしいため息を吐きながら鬼村はおもむろに立ち上がり、部屋から出て行って廊下の奥にあるトイレの扉を開けた。途端、私の背後を驚くほどの冷気が通り過ぎていく。
私は息を呑んだ。
「もう連れてきてたんですね!?」
「だってー」
「だってじゃありません、元の場所に返してきてください!」
「なんでよ、連れ出してあげたんだから後は野となれ山となれでしょ」
「浮遊霊になるんですよ!」
「ま、地縛霊よりマシさね」
玄関のドアが開く音。
冷気は消え失せ、鬼村は帰って来た。
「とは言え、アタシみたいのは家に憑いてる方が楽だけどね。ヒッキーだし」
「引きこもりの幽霊ってどうなんですか」
「良いじゃん」鬼村は小さな目を細めた。「いつでも会いに来れるよ」
私は何も言わず、出された麦茶を一口飲みこんだ。
彼女の言葉に、少しだけ寂しくなってしまったのに腹が立った。




