6 新たな仲間達
「ぅおぉっ、りゃあぁっ!!」
ザスンッ!!
ライナーが軽快に魔物達を狩っていく。
ダリルが探索魔法で魔物達の位置を的確に把握し、弓で攻撃。ライナーが主に攻撃し、後衛はアレン。後ろから来る魔物を的確に狩っていく。
イルージャの街から少し離れたダンジョンにて。
次々に魔物を狩っていく3人の、ライナーとアレンの間辺りにセリはいた。そして邪魔にならないようにしつつ、偶に怪我をする3人に後ろから治療魔法をかけていく。
魔物達が少し途切れた辺りでダリルの『隠蔽』魔法で魔物を避け、4人は休息をとりつつ笑い合った。
「いや、この4人息ピッタリ過ぎね? てか、セリすげーよ!」
「本当だよ! 今まで怪我して足止め食ってた所が、セリがサクサク治していってくれるお陰でどんどん奥まで進めたね!」
「それに、セリが治してくれるから安心して前に出れるわ! 『治療魔法』使いがいるってこんなに動きに差が出るのね!」
3人が3人ともセリを褒めちぎってくれるので、セリは少し照れてしまう。
「いえ……。皆さんが守ってくれるのが分かるので、私も安心してついていけました。ありがとうございます」
そう恥ずかしそうに言うセリに、3人はホンワカした気持ちになる。
「セリ、任せろ! お前は俺たちが守ってやるからな!」
「うんうん! 少しでも怖かったりしたらちゃんと言ってね!」
「あ~っ! セリ、可愛いーわ! 貴女に絶対魔物は近付けさせないからね!」
3人に囲まれヨシヨシされ、更に照れて困るセリなのだった。
◇ ◇ ◇
「……今日もまた、凄い魔物の数ですね……」
ギルドの受付嬢はそうため息を吐く。
それもそのはず、最近のライナー達のパーティーは以前の倍近い量の魔物を討伐して来るのだから。アレンの『空間魔法』からどんどん今日の獲物が出てくる。
ダリルは『隠蔽』、アレンは『空間魔法』、そしてライナーは世界でも数人しかいないという『剣豪』という特殊能力を持っている。
国一番と言われる彼らのパーティーは、おそらくは勇者を除けば世界でも屈指のパーティーだと思われた。
そうして、セリがライナー達のパーティーに入って約3ヶ月が経っていた。
「いや、最近チームワークが凄く良くてな! セリに背を任せて、そりゃもうバッサバッサと魔物をヤレるんだよな!」
「そうそう。セリがいるから安心して攻めに行けるというか。本当いい感じだよ!」
「可愛いセリを守ってるつもりが、いつもコッチが守られてるのよね! 本当に凄く良い一体感を感じてるわ! 最高のチームよ!」
ライナーもアレンもダリルも次々にセリを誉めてくれる。何やら気恥ずかしくて、セリは赤面して俯く。
「……僕こそ、いつも守って貰ってとても感謝してます……。ありがとう」
そう照れながら言うセリを、3人がまた更に可愛がるという謎のループがここ最近繰り広げられている。ちなみに冒険者として活動する時はセリは男の子で通している。
そうして今日もいつものように4人は楽しくギルドの横の酒場で、たくさん狩れたぞ! 会で食事をする流れだったのだが……。
「ライナー! ……やっと、見つけた……! 会いたかったわ!」
1人の美しい女性がギルドに入って来るなりそう言ってライナーに抱きついてきた。
3人も、ギルドにいる人々も、それを見て驚き固まる。
この辺りでは滅多にいない程の美女が、ライナーを熱く見つめていた。
皆、ライナーはさぞ鼻の下を伸ばしているのだろうと彼を見たのだが――。
「……離してくれ。俺はアンタの探してるヤツじゃない」
いつものライナーではあり得ない、その冷たい声に皆は驚く。
……ライナーは、それは冷たい目でその美しい女性を見ていた。
ライナーに拒否された女性は哀しげな顔をしてライナーを見つめ返した。緩やかなウェーブの金髪に青い瞳の美しい女性。20代前半くらいだろうか。26歳のライナーとお似合いの女性。……なんて事をついセリは考えて勝手に胸がチクリと痛んだ。
「……お願い。戻ってきて、ライナー。貴方が居ないとダメなのよ……」
尚も食い下がる女性にライナーは最後まで冷たかった。
「赤の他人の俺に何言ってもムダだよ。さっさと他を当たってくれ。さあ、これから俺たちは楽しく飲むんだ、邪魔するんなら出てってくれ!」
そう言ってさっさと背を向け、ギルドの酒場に向かった。残る3人も女性をチラリと見ながらライナーを追いかける。
その美しい女性は、ライナーを視線でずっと追っていたが、まるで自分を見る気もない様子に諦めて帰って行った。
――セリ達3人を強く睨んでから。