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転生したので前世の大切な人に会いに行きます!  作者: 本見りん


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38 レーベン王国 王宮小広間



「ハインツ ラングレーよ。よくぞ参った。確認したき事がある。

……王都の北の橋、そして北へと向かう街道の山崩れ。魔物達に特に酷く破壊され元々難所でもあり工事が今まで進まなかったあの場所が、急速に工事が進んだ、と聞いたのだが……」


 ハインツ ラングレーを王宮に呼び出した国王はどこかまだ半信半疑で確認した。

 今まで一向に進まなかった魔物によって破壊された場所が一夜にして復興工事が進んだとの噂が流れていた。まるで、伝説の魔法使いがその技を使ったが如く破壊された箇所が治ったと。


「はい。お話の通りにございます。あとは細かな整備と確認をするぐらいでございます」


 ラングレー侯爵家の跡取りとなった若き次男はこのところ随分と成長した。最初の頃は突然回って来た侯爵家の後継という大役に、どうしてよいのか分からず右往左往している哀れな若者にしか見えなかったのに。


「……しかし……。あの場所はこの一年半の間何人もの魔法使いが入っても対処しきれなかった難所。いったいそれをどのようにして一夜にしてそこまで工事を進める事が出来たのか」


 あの2箇所が復旧しなければいつまで経っても王国の北方面は復興が進まない。瓦礫や資材を運ぶにしてもどうしてもあの場所で人の流れは止まってしまい、随分と遠回りをしなければならないので非常に効率が悪かったのだ。

 


「陛下。ご存知の通り我がラングレー侯爵家はこのレーベン王国の中でも一二を争う力を誇る魔法の名門と自負しております。その私どもが、その力を使い得た、という事でございます」


 

 ……あれ程の事を成し得ることの出来る力を得た、つまりもしやそれは……。


 国王は思わずゴクリと唾を呑んだ。


「ハインツ、それは……」


「陛下。我が侯爵家は本当に必要な時のみその力を使用いたします。我が侯爵家が認めない事には一切力は行使いたしません。仮令それが王家からのご命令であっても、でございます」


 ハインツ ラングレーは国王の言葉を遮るようにスッパリと言い切った。


 ここはレーベン王国王宮、謁見の小広間。周囲には数人の重臣がいる。彼らはハインツの不敬とも思える態度に騒ついた。


「ラングレー殿。……それは陛下に対して失礼ではあるまいか」


「左様。いくら貴公がまだ若く物を知らぬとはいえ許されませんぞ」


 宰相や王妃の縁戚に当たる財務大臣など数人の貴族がそう言って若い青年を侮り笑った。



「……ではどうなさいますか? 我が侯爵家を罰せられますか? 我らは一向に構いません。そしてその場合は今回を含め今後の復興に我らラングレー侯爵家の協力は一切得られないものとお考えください」


 ハインツ ラングレーはそう言って一礼をし去ろうと向きを変えた。


「ま……待てッ! 罰などと……! 何もそのような事は言うてはおらん! お前達、なんと失礼な事を! ハインツは若くてもラングレー侯爵家の正当な次期当主であるぞ。

ハインツ。この者達の非礼を許せ。そしてそれは私の本意ではない」


 国王は心底焦っていた。

 ……これは秘密であるが、国王は一年半前の大災害で飛来した飛竜に瀕死の怪我を負った時から魔力が使えなくなっていた。


 世間では国王は大怪我を負い高位治療魔法使いも居なくなった中、完治せず王宮に引き篭もっていると思っている。しかし怪我自体はほぼ治っているのに引き篭もるのは、魔法が使えない事を隠す為だ。


 ここ何代かのレーベン王国の国王は『真実の愛』とやらで魔力の少ない男爵や元平民から王妃を選ぶ事が多く、明らかに王家の魔力は低くなっている。そしてこの国王も『真実の愛』結婚だ。


 そしてこの国で一番魔力の強いのはこのラングレー侯爵家だろう。しかしそれも筆頭魔法使いであったこのハインツの父とそれに匹敵すると言われた嫡男が居なくなった事で侯爵家の力は弱まったかと思ったのに。


 ハインツの力が急激に上がったとは考えにくい。……と、なると。


 ここまでこの若者が言うからには、ラングレー侯爵家が我が息子クリストフがお気に入りのセリーナ嬢の、その協力を得たという事か! 



 国王は心の中でギリリと悔しさに歯噛みしながらも、表面はラングレー侯爵家の若者に笑って見せた。



「ラングレー侯爵家の力が自在であるとは素晴らしき事。是非ともその力をこの輝かしきレーベン王国の為に存分に使ってくれ」



 国王に引き留められ一応はそちらを向いていたハインツは、慇懃無礼とも感じる礼をして言った。



「我が侯爵家はあくまでも我らが認めた正しき事のみに力を尽くす所存でございます。

……レーベン王国に光在らんことを。

それでは失礼いたします」



 若き次期侯爵家当主が去った後、謁見の広間内は一気に騒めいた。


 それは『王家に失礼な』と憤慨する貴族と『流石は名門ラングレー侯爵家』と称える貴族の二手に分かれた。


 レーベン王国は魔法大国。であるが故に、魔力の強い者こそを正義と尊ぶ傾向が強い。


 だからこそ自らの利害に関係する者以外はほぼ全てラングレー侯爵家に好意的だ。


 代々力を弱め続けている王家は益々立場が弱くなる。


 国王は内心歯軋りした。


 ……あの目障りなラングレー侯爵家を抑え込めたと思うたのに……!


 しかし、行方知れずになっていたセリーナ ラングレー侯爵令嬢はどうやら帰国したようだ。……それならば。いくらでもやりようがある。

 ……王家には、『切り札』もあるのだ。



 大災害に遭い国民達は苦しみ、王家の魔力も明らかに落ちているにも関わらず自分達の権力の向上のみを考える国王。


 ラングレー侯爵家に傾く重臣達を一見余裕ある態度で見やる国王だった。



 

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