3 仲間になる
「あの冒険者をいたぶるのが趣味の門番、上司から随分絞られたみてーだな。配置換えになってんだな」
「商業ギルドや他の冒険者からも随分と苦情があったみたいだよ。ここは国境で入国者もたくさん居るし、毎日凄い行列になってたからやっと上が動いたんだろうね」
「てか、あの状況を見たのならすぐに上も動きなさいよねぇ」
今日も、ギルドでライナーチームは賑やかだ。
それを横目で見ながら、セリは今日採取した薬草を受付に提出していた。
セリの丁寧な作業で種類ごとに組まれきちんと仕分けされた薬草たち。予想通り、良い薬草を選別してきちんと組んだ薬草は大層喜ばれ、少し金額に上乗せもしてもらえた。
「あなた……セリ? 凄いわ。こんな風に質の良い薬草を種類や大きさで綺麗に仕分けるなんて。これなら次からも良い値段で買わせてもらうわ。よろしくね」
褒められ更に良い値段で買い取って貰えて、セリは嬉しくてホクホク顔で受付嬢と話をしていた。すると。
「あ、シンディ。今からこのセリは俺たちのパーティーに入っから。登録よろしく」
不意にセリの横にやって来て、そう申告していくライナー。シンディと呼ばれた受付嬢は驚く。
「え? ちょっと、ライナー! 勝手な事を言わないで。セリはまだFランクなのよ? こんな小さな子をAランクのパーティーの魔物狩りに連れて行こうなんて、どういうつもりなの!?」
どうやらまだ子供でFランクのセリを心配してくれているらしい(一応、セリは13歳の少年設定なのだ)。この街1番の冒険者だというAランクの実績のある彼等のチームに入るという事は、それなりの力を持っていないとケガだけで済まないのだろう。
「いや、セリは『治療魔法』が使えるから。ずっっと、募集してたけどこの国は治療魔法使えるヤツは極端に少ないからなー。それに、セリは俺たちがしっかり守るから大丈夫!」
ライナーの言葉にギルドにいた人々は一斉にセリを見た。
人々のその視線が、全てを物語っている。――この地にはそれだけ『治療魔法』の使い手が少ない、ということを。
セリはゴクリと唾を飲んだ。
「おい! ライナーずるいぞ! 俺たちも『治療魔法』使いを探してんだ! ……なあ、コイツらは危険な仕事ばかりするから、俺たちのパーティーに入った方が安全だぜ?」
冒険者達は次々にセリに誘いをかけてきた。
「……あの。皆さんのお声掛けはとても嬉しいんですけど、僕はこのライナーさんのパーティーにお世話になるって決めたんです。皆さんのお気持ちだけ、有り難くいただいておきます」
セリを庇いに入ろうとしていたライナー達は、意外にしっかりしたセリの言葉に驚き、そして自分達を選んでくれた事に嬉しくなった。
「よしっ! よく言った、セリ!! 絶対後悔はさせないぜ! お前を危険な目になんて絶対に合わせねーからな!」
「この街に来てまだ日が浅いんだろう? 私達が色々教えるからね」
そう優しく声をかけてくれる新しい仲間達に、セリは嬉しそうに微笑んだ。
……セリは、実は前世でライナーを知っている。
……本当は、前世の家族に会いたくて旅に出たはずだった。けれども、前世での知り合い……、前世のセリの弟の親友だったこのライナーと会えてしかもこうして仲間になれた事が、セリには本当に奇跡にも思えたのだった。
前世のセリが14歳で死んだ時、弟レオンとライナーはまだ11歳だった。あれから約15年経つが、身体は大きく立派に成長しているものの真っ直ぐなところは変わっていないライナーを見ていると嬉しくなる。
ライナーからいつか弟や両親の話が聞けるかもしれないからと自分に言い訳をして、セリはこの街で暫く彼らと共に冒険者として暮らす事に決めたのだった。




