24 報告 その弐
セリがふと隣を見ると、寝息を立ててライナーが寝ていた。
「……ふふ。可愛い」
背も高く筋肉のガッシリ付いた立派な体格のライナーだったが、寝顔はどこか子供の頃の可愛いさが残っている。セリがそっとライナーの頬に触れると意外に柔らかい。
「あー、ライナー寝ちゃったのか。今日はいつも以上のハイペースだったからなー」
「こんなデカい男は運べないから、はい、毛布」
「ありがとうございます」
ダリルから毛布を手渡されたセリはライナーにふわりと被せてその寝顔を見詰めて微笑んだ。
「……セリ。ライナーの事、本当に好きなんだね……」
不意にアレンに言われたセリはパッと頬を赤らめる。
「……え!? ……はい、好きですよ。……あ、でもお二人の事も仲間としてすごく好きですし尊敬してます」
照れつつそう言ったセリにダリルはふふと笑った。
「ありがと。私達も2人の事、大好きだしとても大切よ。
……ねぇセリ。ライナーは真っ直ぐ過ぎるくらいだし、昔の事があるからよく分かってるだろうけど……。仲間内での恋は勿論良い方向に行く事もあるけど悪くなる場合もあるわ。……聖女マリアの時みたいにね」
「ダリル? セリをその事と一緒にしないであげてよ」
ダリルの言葉に慌てたアレンが庇うように言った。
「ううん、ダリルの言う通りだと思う。恋愛って周りが見えなくなったりするものね」
まるで結構な恋愛経験者の様なセリの言葉。
「え! セリはそんな風になった事あるの?」
驚くアレンにセリは笑いながら答えた。
「ふふ、違うの。私は祖国ではまだ子供だったし魔法が使えないことから余り外へも出してもらえなかったんだけど……。お母様が凄く社交的な方でね。すごくたくさんの噂話を教えてくれるの。それに屋敷で働く人たちの噂話もよく聞いたし、勉強の本もたくさん読んだけど恋愛小説も読んでたから。そしてやっぱり人の噂は恋愛の話が多くて……」
「……成る程。所謂耳年増ってやつね」
ダリルはそう言って苦笑した。
「そうかも。本は恋を綺麗に書いてあるものが多いんだけど、現実の方が凄いのよね。それが原因で身を滅ぼしたりする方も結構いらしたし。だから私も恋に夢を見てる訳じゃないわ」
「その見た目で恋に夢見てないなんて、結構意外過ぎるよね……」
アレンはそう言って苦笑した。ダリルも『そうね』と苦笑してからセリを真面目な顔で見て言った。
「……セリ。ライナーはずっと心の一番奥に、エレナへの想いを持ったまま生きて来たんだと思う。人当たりも良くて毎日朗らかに生きてるように見えてたけど、ずっと心の奥には絶対に誰にも触れさせない何かがあったもの。……そして今は、その場所にセリがいる。でも見てて危なっかしく思う位にライナーは今セリから離れられないでいる。多分それは過去にエレナを失った恐怖心からなんだろうけど……」
ダリルはそう言ってセリを真っ直ぐに見た。
「……うん。私今日ライナーからあの時死んだエレナを見つけたのが自分だったって話を聞いたの。すごく申し訳なくて……」
「でもそれはセリのせいじゃないだろ? エレナだって死にたくて死んだ訳じゃないし」
アレンはそう庇ってくれたけど、セリもダリルの本当に言いたい事は分かっている。
「……うん。だけど、それがライナーの心に深い傷として残ってるのは事実だから……。
私、これからはライナーが面倒臭くなるくらいに一緒に居ようと思ってます」
セリがダリルとアレンにそう宣言すると、2人はどこかホッとしたようだった。
「セリ……。ありがとう。……ライナーは私の恩人なの。私の、馬鹿みたいに高かったプライドをへし折ってくれた、ね。……感謝しても仕切れない。だからライナーには心から幸せになって欲しいって願ってる」
「……僕もだよ。ライナーのお陰で今の僕がある。僕たちの分までライナーを頼むよ」
ダリルとアレンはそう言ってセリを見た。
「うん。それは勿論。そして、2人にそこまで思って貰えてるなんて、ライナーは本当に幸せ者だと思う」
セリはそう言って幸せそうに眠るライナーの毛布をかけ直した。
「そりゃあそうよ! ライナーはとっても大切な人だから」
「うん、もうこれは『愛』だね!」
ダリルとアレンはあくまで家族のような、という意味で言ったのだが……。
「!? ……あ、そ、そうか……。うん、そういう愛もあるんだもんね。なんか、ごめんなさい! 私後から割り込んで、ライナー取っちゃって……。でも、私も本当にライナーを好きだから。2人に負けない位に大好きだから!」
……『セリは耳年増』。その通り、セリは情報だけは色んな形の恋愛話を聞いて知っていた……。
そのセリの勘違いに気付いた2人は慌てて訂正しようとしたのだが。
「……セリッ! 本当か? コレ、夢じゃないよな? セリが2人と俺を取り合って1番俺が好きだって宣言してくれるなんて……! 俺もセリが大好きだッ!」
不意に目が覚めたらしいライナーにそう言われいきなり横から抱き込まれ、セリは混乱する。
「ひゃッ!? ライナー起きてたの!? え。それで今の聞いてたの! いや~!」
真っ赤になって抵抗するセリをライナーは抱きしめて離さない。
「可愛い、セリ……! ぜってーもう離さない! お前ら、悪い。お前らは大切な友人だ。その気持ちには応えられねぇ」
ライナーはセリをギュッと胸に抱き込んだ後、チラと視線をダリルとアレンに向けて言った。
2人はブルブルと震えて言った。
「あ、あったり前だ~~ッ! 誰がお前のこと恋愛として好きだなんて言ったよ!」
「僕もだよッ! ライナーはあくまで大切な友人!! ちょっと! 見てよコレ全身鳥肌たったじゃない!」
いつものおねぇ言葉までも抜けて叫ぶダリルと身震いの止まらないアレンだった。
「……あ。違うのか」
「良かった~。びっくりしちゃった」
「「ホントだよ!!」」
賑やかに仲間達の夜は過ぎていった……。
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