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15 前世の家族



 ――セリがライナーに前世の話をしたあの日。



 アレンとダリルも加わり、4人で『聖女マリア』に対する今後の対策を考えた。



 その時、セリは3人に自分の『治療魔法』以外の魔法の話をした。昔は力が使えなかったけれどある時から覚醒し、今の自分は『治療魔法』以外は相当高位の魔法使いであると打ち明けたのだ。

 彼らがどんな反応をするか、本当は少し不安だった。けれど、彼らは『それは凄い事だけど、それよりセリ本人が好きだから関係ないよ』と言って『不安だったね』と抱きしめてくれた。



 そして実はアレンはある王国の侯爵家の三男、ダリルはまた別の王国の第5王子だったとその時軽く教えてくれた。


 驚くセリに、『誰でも秘密を持っている。人それぞれに事情があるからそれを隠す事を悪いことのように思わなくてもいいんだよ』と言ってくれた。

 ……この人達に出逢えて良かった、仲間となれて本当に幸せだとセリは心から思ったのだった。




 それからみんなで話し合い、練られた今回の計画。



 ――もし、マリアが教会の権力を使ってライナーに勇者一行への復帰を迫ってきたのなら、それを教会の1番の実力者である教皇に正してもらおう。今の教皇はかなり規律に厳しい方だと聞いている。あのマリアの本性を知れば何らかの処罰は与えるだろう、と……。


 ただ、教皇の座す所とこの街とはかなり距離がある為に、高位の魔法使いが使えるという『念話』で、なんとか教皇に事実を伝え説得する事が可能かと3人はセリに尋ねた。


 ……するとセリはそれならば教皇をここに連れて来て実際にその様子を見てもらおうと、皆の想像を遥かに超える方法を提示したのである――





「……教皇さまが何か他にして欲しい事はないのかと聞いてくれたから、レオンのもう1人のパーティーの仲間に会いたいって言ったら本当に会わせてくれて。その人がマリアの悪事を話してくれたからレオンの殺害疑惑まで出てきて、無事に解決出来たんだよね。

……せめてレオンの仇が取れて、本当に良かった……」


 教皇を見送ったあと、どこか遠くを見ながらそう語るセリに3人は黙って頷いた。



 そして、意を決したようにライナーはセリに語りかけた。


「なぁ……、セリ。俺たちの故郷のことなんだけど……」


 そう少し話しづらそうに切り出したライナー。


「ッ! ……うん……!」


 セリは本当はずっと聞きたかった故郷の話題にドキリとする。



 ライナーがレオンを失い『勇者のパーティー』メンバーでなくなった時。彼が故郷に帰らなかったのは、勿論教会に居場所を特定されない為でもあったのだろうが……。

 故郷の皆に華々しく見送られ出発したのに結果を残せず、しかも大切な幼馴染である『勇者レオン』が死んでしまった。しかもその死の原因が自分にもあると思う中、帰ることが出来なかったのではないか。そう思ったセリはその話題には触れられないでいた。



「すまん……。ずっとセリに気を使わせちまったな。話すのが遅くなったが、エレナの両親はレオンが勇者に選ばれる半年程前に事故で亡くなってる。俺たちは『勇者一行』として出発する前にレオンの両親とエレナの墓に報告しに行ったよ。

それから『勇者一行』の家族は教会からその生活を保障される。天涯孤独になっていたレオンの家の墓の管理もしっかりすると、教会は約束してくれていた」


 ッ! ……まさか前世の両親ももうこの世に居なかったのだとは……。


 セリは少なからずショックを受け、目を閉じて深く息を吐いた。


「大丈夫か? セリ。……まだ俺がここに流れ着く前に、偶然故郷の知人に会ったことがある。奴の話によると、故郷の両親の墓の横にレオンの墓も作られたんだそうだ。教会は約束通りキチンと管理してくれているらしい。街の人達は『我が町の勇者レオン』と慕ってくれてずっと供えられる花が絶えないそうだ。

……いつか、一緒に行こう」



 ……レオン。父さん、母さん……。



 セリは流れる涙を止められなくて、言葉も出ずただ頷いた。


 そんなセリの横で、ライナーはセリが泣き止むまでそばに居てくれた。



 そしていつの間にかその場から居なくなっていたアレンとダリルは、家に帰るとご馳走を用意して待っていてくれたのだった。



 その日の夜は『お疲れ様会』として、またしても飲み会となったのである。……セリだけはジュースだったけれど、みんなで楽しく飲み明かしたのだった。




お読みいただきありがとうございます。


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