死ななくてもね
神聖帝国ドラゴラとはいえ、国の全てを把握出来きはしない。
ましてや全土に広がった領地。
現存する悪魔族の数が不足している。
それを補う為保安は各自治領に任せ、どうしても困難な事柄のみ手を貸す。
どの国民も五百年前よりは豊かな生活を送っているが、格差が起こるのを防ぎきれはしない。
孤児は国に届ける義務があり、孤児院で手厚い保護を受けるが働ける片親の家庭は保護が薄い。
冒険者ギルドの登録は十才から。
十才になる前は冒険者になれない。
それでも稼ぎたい子供は死なずのダンジョンへ行く。
特にダンジョン入り口がある街の子供は迷いがない。
ダンジョンは初め迷路型。
迷路型を抜けると大きな湖が有り、その中央に何階までか明らかに出来ていない高く太い塔がそびえ建っている。
湖に船などはなく、泳ぐか魔術で渡るか。
湖には大型の魔物がウヨウヨいる。
迷路型は入った者より少し強い魔物が数多く出た。
瀕死になり回復出来ないと入った扉の前にダンジョンから吐き出される。
魔物に丸飲みされても入った扉の前に吐き出される。
吐き出された時、助ける為にギルド職員が昼間は待機しているが、夜間は誰もいないので夜間にダンジョンに入る者はほとんどいない。
死なないならと、このダンジョンに入る一般人や冒険者は多かった。
少しでも家計の足しにとダンジョンに挑む小さな子供も少なくはない。
デクスターの街タサに母親と暮らすユキヒョウ族のアイムもその一人だ。
ユキヒョウ族は脚力が強く、敵を蹴り殺す。
とはいっても六歳。
大人のようにはいかない。
数えきれなく入り口の扉に戻されている。
それでも出て来るゴブリンやアルミラージを二つ三つ倒せていた。
必ず取れる魔石と運良く出るかもなドロップ品。
最下位の魔物の魔石でもパンをいくつか買えた。
アイムの母親は心配している。
「死ななくても痛みは変わらない。
小さいのに無理をしないで。
お母さんもっと頑張って働くから。」
きつく抱きしめる母親の手はひび割れてガサガサしていた。
アイムは早く大人になりたかった。
オルラの街オラのケイラは祖母と二人暮らし。
人間族のケイラの祖母は小さなお店を営んでいる。
なんとかケイラと二人、暮らしていた。
「おばあちゃんに栄養のある物を食べてもらって長生きしてもらわないと。」
最近疲れが抜けない祖母に元気でいて欲しい。
そんな想いで死なずのダンジョンに入る。
武器は台所から持ってきた包丁。
人間族の八歳の男の子、力は無い。
スライムの中でも最弱なスライム一体を倒すのにも悪戦苦闘。
スライムの酸でケイラの身体が溶け始め外に吐き出された。
痛みで気を失っている。
吐き出される人々の為に待機していた回復魔術を使えるギルド職員が治療してくれた。
目を覚ますと、しこたま叱られトボトボ家に帰る。
そしてギルドから連絡を受けていた祖母にも叱られた。
泣いて抱きしめる祖母に小さな声で謝る。
「ごめんなさい。」
ゼゼロの街ゼゼ、ラーテル族のタイトも母子家庭。
防御に優れ力のあるラーテル族は五歳といえども、そこそこ強い。
家計の足しになるぐらいは魔物を倒して来る。
出て来る魔物はオーク。
肉がドロップするので助かっている。
母親はあまり心配しない。
ラーテルなら強くあれ。