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第8章 第17話 人生の賭け事

「ふ……復讐……? ぼ、暴力とかするつもり……? ちょっとふざけて落としただけじゃん……」

「まさしくふざけるなって感じだけど、暴力なんか振るわねぇよ。個人的には一発くらいは殴ってやりたいけど、彼女とパートナーの前で乱暴なことはできないんで。まぁ俺がめちゃくちゃスッキリするだけのやつだ」



 俺はずっと気に入らないんだ、本当に。まったくもってありえない。



「お前からギャンブルを奪いたい」



 これは環境を整えたいという俺の夢とは関係ない。単純に気に入らないんだ。ギャンブルが。心の底から気に入らない。努力をせずに、利益だけをかすめ取ろうという魂胆が。



「今からお前に選択肢を与える。パチンコや競馬じゃない。本物のギャンブルってやつだ。この選択肢を与えられてそれでもギャンブルをするって言うのならしょうがない。俺の負けだ。だから最後に俺に一矢報いたいって言うのなら、ぜひそうしてくれ」



 そして俺は伝える。俺の努力への執念を。



「お前にはこれから金を稼いでもらうわけだが、理屈だけで言えば俺が負った怪我の治療費と慰謝料分の金だけでいいわけだ。だからとりあえず30万円くらいってとこか。これを賭け金とする」



 賭けという言葉を出した途端トラリアルの瞳が輝いたのがわかった。本当に気持ち悪い。ある種の病気だ。でも病気だというのなら、治してやらないと。



「ようするにこの金を減らすか増やすかだ。減らしたいなら、俺とギャンブルをしよう。俺がこれから1週間。死ぬ気でギャンブルを勉強する。ぽーかーとか、まーじゃんとか? なんか色々種類があるみたいだな、よく知らないけど。その結果お前の借金が帳消しになるかもしれないし、借金が数百万数千万に増えるかもしれない。それが嫌なら、元の10倍の300万円支払うまで働いてもらう」

「や……やるよギャンブル……! 勝てばいいんでしょ……!?」



 何も考えることをせずギャンブルと即答するトラリアル。これが嫌なんだ。だからこいつの生き方に、考えるという努力を与えてやる。



「いいんだな? お前は知らないだろうけど、俺は全国模試で1位を取っている。お前がよく知っている、あの環境でだ」

「ふ……ふーん……」


「その俺が死ぬ気で勉強するんだ。お前には絶対に負けない。そりゃギャンブルだから多少の運は絡むだろうが、完全に運任せってわけでもないんだろ? お前は必ず負ける。そうしたら借金は30万の倍の60万に。次負ければ120万。240万に480万、960万、1920万だ。6回負けただけで軽く2000万だ。いいんだな? それで」

「う……ぅぅ……!」



 ギャンブルが一概に悪いことだと思わない。だが世の中は結局頭がいい奴が勝つんだ。それこそが学歴社会の正体。その全ては努力に帰結する。認めたくない人もいるだろう。それが全てではないのかもしれない。でも実際にその現実に直面して。一度考えてみれば、簡単にわかる。



「できません……! 普通に働かせてください……!」



 努力に勝る行為はないのだということを。

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