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第8章 第10話 新たな関係

「玲さん! 玲さん!」

「はぁ……っ、はぁ……っ」

「あっぶなー……そんなことできたんだ」



 顔を真っ赤にして何も言えないでいる玲さんと、その身体を抱きしめる俺。そんな俺たちを見下ろし、トラリアルは笑う。



「まぁいいや。じゃ、そゆことでー」

「ああああああああっ!」



 冷や汗を垂らしながらも窮地を脱出でき、逃走を続けようとするトラリアル。その身体へと、力強い拳が振り下ろされた。



「なんなのアクアちゃん。そんなタイプだったっけ?」

「私の恩人に! 手出してんじゃねぇよっ!」



 アクアの殴打をかわしたトラリアルが今度こそ逃げ出す。それを追おうとしたアクアだが、俺たちを横目で見て脚を止めた。



「膝擦りむいてるじゃん……大丈夫?」

「あ……はい……平気……です……ひゃぁ!」



 アクアに声をかけられ、ようやく平常心を取り戻した玲さん。だがさすが人見知り。俺に抱えられたことがよほど嫌だったのか、変な声を出して跳ね上がった。



「とりあえずあーし虎姉追うわ。玲様のこと保健室まで送ったげてね」

「ああ……わかった」

「待ってくだ……待って!」



 心配もそこそこにすぐ立ち去ろうとしたアクアを、脚を気にしながらも玲さんが呼び止める。



「誤解……してた……悪い人だって……。でも……れいを助けてくれて……ありがとう……」

「……私が悪い人ってのは間違ってない。ただあんたら家族には恩がある。だから少しでも返そうとしてるだけ……勘違いしないでね。私は別に……良い人なんかじゃないから」

「うん……!」



 目を背けながら語るアクアと、それを優しい笑顔で受け止める玲さん。アクアがどう思おうが思われようが知ったことではないが、玲さんの心労がなくなったのなら良かった。



「さ、保健室連れてくから車椅子乗って」

「だ……大丈夫……擦りむいただけだし……お義兄さんの方が脚悪いから……」


「俺こそ大丈夫。杖あるから普通に歩けるよ」

「須藤くん。これ使っていい」



 半ば無理矢理玲さんを車椅子に座らせると、応援団の中にいた江草さんが自分の車椅子から降りようとしていた。




「大丈夫だって本当に! 心配すんなよ!」

「でもな……ジン。さっきの女、雰囲気がやばかったぞ。俺が動くことができなかった……。先生……いや、警察を呼んだ方がいい」



 江草さんに断りを入れていると、なんと団長までもが応援を抜け話しかけてきた。



「警察なんて呼んだらトラリアルは逃げるし、先生は申し訳ないけど足手まといです。何より警察が介入したら体育祭が中止になりかねない……。みんながすごいがんばって作り上げた体育祭というこの環境を。あんな奴に壊されてたまるか」



 そうだ。元家族なんかに俺の幸せが壊されるなんて許されない。俺は俺の幸せを守るために。玲さんを傷つけたトラリアルを全力でぶっ潰してやる。

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