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第1章 第6話 姉妹

「ま、まぁこれで早苗ちゃんとジンくんがアツアツだってことがわかったね」



 早苗さんのなれそめというか惚気話というかあらすじというか。長々とした話を聞き終えた長女のグレースさんが苦笑いで話を終わらせようとする。



「ど、どう思った? 玲ちゃんは」

「れ、れいは……その……」



 話に困ったのか、グレースさんは高1で三女の園咲玲(そのざきれい)さんに話を振る。顔立ちや髪型は早苗さんとそっくりだが、表情が常に困り気味なのと前髪が長いのが特徴的。斬波の話によるとかなりの人見知り。とりあえずこの場は話さなくてもと思っていたが、こういう形で話に入ってくるとは思わなかった。口下手だがそれ故に取り繕うのが苦手というらしい彼女。正直この場で一番話してほしくないが……。



「れいはこ、婚約者さんより……誘拐犯の方が気になる……。まだ捕まってないんだよね……?」



 ああそうだった……色々あって忘れてたが、誘拐犯を取り逃がしたんだった。またあのクソ両親に金が渡ってしまうのは嫌だが、俺を刺した責任は果たしてもらわないといけない。



「誘拐犯は警察と武藤家が探してるよ。だよね、寺門」

「はい。武藤家の威信にかけて必ず警察よりも早く見つけ出します」



 お父さんが後ろに立ついかにも執事っぽい老人に声をかける。武藤寺門(むとうじもん)。分家筋でありながら先代社長の秘書も務めていたという、実質的な武藤家のトップだ。ようするに俺を一番敵視している存在。お父さんから見られないのをいいことに正面の俺をずっと睨みつけてるもんな……。まぁ嫌われるのは慣れてるし構わないが。



「とりあえず必ず侍女と一緒に行動すること。武藤家のみんな、頼んだよ」

「かしこまりました、旦那様」



 お父さんの言葉に一斉に頭を下げるメイドたち。園咲家の子どもたちは幼少期から同い年の武藤家の子どもと共に過ごすらしい。だから早苗さんと斬波のように、姉妹の後ろには同い年のメイドが控えている。



「そもそも。斬波がおねぇから目離したのが悪いんでしょ?」



 改めて注意喚起、という感じで終わりそうな雰囲気に包まれた時、四女の園咲愛菜(そのざきあいな)が余計な一言を口走った。



「斬波は私のお願いで一人にしてくれたんです。斬波は悪くありません」

「だとしてもでしょ。まったく。武藤本家は何を教えてるのかしら」

「申し訳ありません。以後気をつけます」



 テーブルに肘をつき、優しそうなたれ目の早苗さんとは対照的なつり目で斬波を睨みつける愛菜さん。斬波が感情のこもっていない声で謝罪すると、金髪ツインテールの先を手で払った。



「それと。言っとくけどあたしあんたのこと認めてないから。なれなれしく家族面しないでね」



 斬波曰く中2の中二病患者。何か厳しいことを言われてもただのツンデレだから気にしなくていい……とのことだったが、面と向かって喧嘩を売られると買いたくなるのが俺の性。……駄目だ駄目だ。こういうとこから育ちが悪いって言われるんだぞ。早苗さんのためにも我慢しろ。



「おねぇも目覚ましなよ。どうせおねぇがお嬢様学校の制服を着てたから助けただけだって。見るからに貧乏人、って顔してるし」

「失礼だよ姉さん! 早苗姉さんの恩人に向かって!」



 顔のことを言われて意外と見る目あるなーと思っていると、姉妹の中で唯一黒い髪を持つ少女が立ち上がった。



「なに? あんたもこういうホストっぽい奴がいいわけ?」

「顔なんてどうでもいいでしょ。姉さんが選んだんだもん。悪い人のわけないよ」



 小学6年生、園咲杏子(そのざきあんず)。斬波曰く姉妹で唯一真面目な人間で、黒髪につり目というお父さんの特徴を唯一受け継いだ子。そのことから昔からの付き合いの関係者は彼女を後継者に、と言う人が多いらしい。本人たちは気にしていないようだが、後継者争いというのもめんどくさそうだ。



「……なによどいつもこいつも。絶対後悔するんだから」

「申し訳ありません、お義兄さん。愛菜も悪気はないんです。ちょっと年頃で感情表現が上手くできないだけなんです」

「いえ、全然気にしてないので大丈夫ですよ」



 ……感じ的には早苗さんと似ているが、空気が全然違うな。早苗さんはただ敬語を使っているだけの天然だが、この子は敬語を使うことで距離を開けている。ある意味でいえば愛菜さんより敵対的だ。こういう奴が一番厄介。早めに仲良くなっておきたいところだ。



「ねー! おなかすいたー!」



 ちょっとピリッとした空気が流れていると、六女。小学3年生の園咲来海(そのざきくるみ)さんが大声を上げる。



「そうだね。それじゃあそろそろ朝食にしようか」



 お父さんがそう言い、ようやく会場が和やかな空気に包まれる。



 長女。大学2年生。グレース。

 次女。高校2年生。早苗。

 三女。高校1年生。玲。

 四女。中学2年生。愛菜。

 五女。小学6年生。杏子。

 六女。小学3年生。来海。



 チャラい奴がいれば天然もいて、人見知りもいればツンデレもいる。それに加えて真面目ちゃんと、普通の子ども。



 全員個性的で、厄介この上ない。この6人姉妹全員と仲良くするのは、中々に骨が折れそうだ。

ジャンル別日間2位にまでいけました!!! 本当にありがとうございます!!! 引き続きがんばりますので応援よろしくお願い致します!!!!!


明日ももしかしたら複数投稿するかもなので、ぜひブクマしてお待ちください! おもしろかったり、期待できると思っていただけましたら☆☆☆☆☆を押して評価もよろしくお願いしますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[一言] 見返りも求めず人助けして一生物の障害追ったのに四女のこの態度クズ過ぎやろ なによりそれを五女以外の連中が注意すらしないってのが怖いわ こっからご都合主義全開でみんな仲良しハッピーエンドにな…
[気になる点] 従者すら制御しきれてないのに身請けとかされても普通に迷惑だよなぁ
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