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環境

〇悪亜




「出ていけクズ娘がぁっ!」

「上等だよこんなクソみてぇな家こっちから出ていってやるっ!」



 両親と大喧嘩をしたのがつい数時間前。着替えも持たず始まった家出は、すぐに限界を迎えた。



「クソ……あいつらビビりやがって……!」



 いつもつるんでいる連中は、あーしからの連絡に応じない。その理由はわかりきっている。今あーしと一緒にいることはとんでもなくリスキーだからだ。



 クソ兄貴……塵芥。あいつにハメられて虐めの現場がネット上に公開された。顔は出ているし、学校名だってバレバレ。まず間違いなく学校は退学になるだろう。その学校だってタダでは済まないだろうが。



「どうすりゃいいんだよ……!」



 行くところのないあーしは公園のベンチで項垂れることしかできない。棲む家もないし、食べる物もない。顔が晒されている以上バイトだって難しいだろう。年齢のせいで身体を売ることだってままならない。



 残された手段は万引きでもして少年院に入るか、このままホームレスか。……ふざけるな。なんでこのあーしがそんな惨めな目に……! それもこれも全部塵芥のせいだ。塵芥さえいなければ……!



「……悪いのはあーしか」



 あーしだってわかっている。塵芥に責任がないことくらい。どう考えても虐めたあーしが悪いってことくらい。



 でもだからって……しょうがないでしょ。あの環境にいて塵芥を虐めないなんてありえない。塵芥を虐げるのが当たり前の世界にいたんだ。逆に言えば、それをしなければあーしが生きることは叶わなかった。



「……なんでこんなことになっちゃったんだろ」



 昔はこんなじゃなかった気がする。子どもの頃は割と仲良かった気がするし、殴られていた塵芥を庇ったこともあった……ような気がする。全然覚えてないけど。



 でも小学生になって……そこでも塵芥が虐められているのを見て、それが当たり前なんだと思ってしまった。実際虫や魚を捕って食う塵芥は気持ち悪かったし、用務員に土下座して鶏の卵をもらうあいつの姿は、小学生のあーしにはひどく惨めに見えた。普通に考えてみれば塵芥が悪いわけではないのに、あいつが悪いとしか見えなくなっていた。



 ……今からでも、遅くないかな。塵芥に謝れば、私を許してくれたりしないかな。



「なんてね」



 そんな都合のいい話があるか。遅すぎるし、タイミングが悪すぎる。保身のために謝ってるとしか思われないだろうし、今さらあいつに。面と向かって謝れるわけがない。



 塵芥は今幸せの中にいる、んだと思う。少なくとも今まで以上にはいい環境にいるはずだ。



 その世界にあーしはいないしいらない。もうあーしと塵芥は。家族ではないのだから。……とっくの昔からそうなのかもしれないけど。



 あいつを見習う、なんてことはできないけれど。せめてあいつのことを反省してこれから……。



「……もしもし、イフ兄?」



 ここから離れた別の街にでも行こうと思っていると、一人暮らしをしているイフリートから電話があった。



「え? 家行っていいの? 行く行く!」



 良いことを考えたからだろうか。しばらく家に困ることはなさそうだ。これをきっかけに新しい人生を……と思えたのは。誰とでもない1人でいた時だけで。



 結局あーしは。別の環境に行くつもりが、元の悪人の巣窟へと逆戻りしていた。

第2章と第3章の間の話です。続編でアクアちゃんが出たので連動して登場です。


結局は環境次第というか。周りの人たちの影響で人は変わるというお話でした。


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