第2章 最終話 広がる未来
「ジンくんっ、あーんっ」
「あーん……何これうまっ! なんていう食べ物!?」
「卵焼きですよ。喜んでもらえてうれしいです」
アクアと袂を分かってから1週間が過ぎ、その間俺はずっと自室で寝転んでいた。その理由は一つ。めちゃくちゃ怪我をしたからだ。
「それにしてもかわいそうです……。ジンくんのかっこいいお顔が傷だらけなんて……」
「別にそんな心配しなくていいよ。たいして痛くないし、傷も残らないみたいだから」
嘘だ。本当は今も痛いし左脚もめちゃくちゃ痛い。でもそれを言って早苗を悲しませるのは絶対に嫌だ。それに痛いのは数々の虐めや虐待で慣れてるからな……。
「それにテレビをゆっくり見れたなんて生まれて初めてだ。むしろ怪我してよかったのかもな……」
「続いてのニュースです。先日東山高校で起きた事件ですが……」
「すいません、すぐに消しますね」
「いやいいよ、そのままで」
やたら大きなテレビ画面に、侑さんたちが録画した俺と斬波への暴力の映像が流れる。全員顔にモザイクがかかっているが、元の映像を知っていると不思議とくっきり浮かび上がっているように見える。
「東山高校で起きた虐め問題。そしてそれを隠蔽しようとした学校側。虐め被害に遭った生徒は既に転校していますが、実際にどのような虐めが遭ったのか。現在第三者委員会が調査中であり、学校はしばらく休校になるそうです」
この映像。実際にSNSに流したものでは、俺と斬波以外のモザイクは外していた。つまり俺を虐めていた連中。戸川や担任、そしてアクアの顔は世界中に晒されている。
「……ジンくん。私、このようなやり方はあまり好きではありません」
「だろうな。やりすぎだし何らかの法律に引っかかってそうだ」
「えーいいじゃん! ていうか私地上波デビュー! やったー!」
なぜか斬波は喜んでいるが、本来。これは許される行為ではないのだろう。でも俺はやりたかった。間違っていようが、奴らを地獄の底に突き落としたかった。そこに後悔はしていない。
「いえ……私もジンくんの幸せのためならこれもアリだと思っています。ただ、好きじゃないだけで……。それに学校から本来ジンくんに支払われるべきな賠償金も、実家が受け取るのでしょう?」
「たぶんな」
アクアは何とかしたが、実際あの問題が解決したわけではない。俺の親は、依然あのクソ親だということは。
「まぁいいよ。極端な話、あいつらが全員死ねば全部俺の金になるんだ」
「それでジンくんは幸せになるのですか?」
「冗談だよ。そんなことしたら早苗と一緒にいられなくなるだろ? まぁゆっくりやっていくよ。先はまだまだ長いんだ」
アクアはもう表立って何かはできないだろう。それでもまだ両親と。4人の兄弟が残っている。あいつらを叩き潰さない限り、俺の幸せは訪れない。時間がかかってもいい。むしろ元からそのつもりだったんだ。急いでまた怪我するのは御免だしな。
「よっと」
「ジンくん、立ち上がっても大丈夫なのですか?」
俺がベッドから立ち上がると、心配そうに早苗が寄り添ってくれた。でも大丈夫だ。
「そろそろリハビリしないとな。いつまでも迷惑をかけるわけにはいかないし……」
「迷惑だなんて思っていませんよ。それにジンくんがこれから通う風鈴学園はバリアフリーが整っています。ジンくんが思っているより世界は広いし優しいですよ? これから先はジンくんのことを虐げる人なんていません。だから無理しなくていいんです」
そうか……そういうことなら……。
「まだ頭痛いしやめとくよ。ほんとは脚も……」
「えぇっ!? ずっと大丈夫だって言ってたじゃないですかっ!」
「まぁ痛み止め? っていう薬もらってるから大丈夫ではあるんだけど……」
「大変ですっ! すぐにお医者さんに診てもらいましょうっ!」
「いやそこまではいい! ほんと大丈夫だからっ!」
「そうはいきませんっ! 絶対にジンくんを苦しめませんっ!」
脚に障害を負おうが。頭から血が出ようが。実の家族と縁を切ろうが、今の俺にはどうでもいい。
ただ早苗と。園咲家と。メイドのみんなと一緒にいるだけで、俺の人生は幸せなのだから。
これにて第2章完結になります! 少し短めでしたね! 申し訳ありません?
そして改めて総合評価10000ptありがとうございますっ! わずか10日程度でここまでいけるとは思いませんでしたっ! それとジャンル別日間2位にまた戻れました! 週間は変わらず1位、月間も5位になります。うれしい!
次回からは第3章! みんなと同じ学校編です! 今のところイチャイチャ編のつもりですが、状況を見てざまぁが入るかもしれません。お楽しみに!
それではここまでおもしろかった、続きが気になると思っていただけましたら☆☆☆☆☆を押して評価を、そしてブックマークといいねのご協力をよろしくお願いいたします!