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第2章 第8話 妹

「お前らっ! 死んでもあのクソ女共からスマホを奪い取れっ!」

「みんな、ジンがあそこまで身体張ったんだ。少しでも不利な条件を渡さないためにも無傷制圧、いけるよね。勤務開始!」



 アクアと斬波の指示に従い、男子生徒二十数人とメイド4人の乱闘が始まる。作戦立案の段階ではこの状況を避けることを前提にしていた。俺が下手に出れば間違いなく調子に乗って暴力を振るってくる。その様子を撮影して、解散。後日SNSで拡散が俺が考えた作戦だった。



 だが斬波は言った。「私が襲われればもっと重い罪を着せられるんじゃない? もちろん触らせるつもりはないけどさ」。



 侑さんは言った。「なんならその場でネタバレしちゃおうよ~。そっちの方がスカッとするって~」。



 瑠奈さんは言った。「ルナたちこーんなかわいいのに結構強いんでー。喧嘩になっても絶対負けませんよー?」



 熱海さんは言った。「なるべく大勢を連れてきましょうっ! 大丈夫です! 私たちが上手くフォローしますっ!」



 それでも反対ではあった。だが半ば無理矢理押し切られ。そして完璧に上手くいっていた。



「何なのこれ……! ありえないでしょ……!」



 危なげもなく、圧倒。メイドたちは男複数を問題なく制圧しかけていた。さすがは名家直属の付き人。ただ暴力を振るうだけの奴らには負けやしない。



「舐めんなよ……クソゴミどもがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」



 そんな中、アクアが動く。車椅子に乗って身動き取れない俺に向かって。



「クソ女どもぉっ! 一歩でも動けばこいつを殺す……! さっさとスマホを渡せぇっ!」



 俺の背中に回ると首に腕を回し、メイドたちにそう脅迫する。だが彼女たちは制圧をやめない。これが唯一俺が押し通した無理だからだ。



「やっぱり妹の不始末は兄貴が責任をとらないとな」



 俺は全身を使って身体を捻り、車椅子を転がした。俺も倒れたが、同時に俺に密着していたアクアも床に倒れる。



「なぁ覚えてるか……? 俺たちがガキの頃……お前が。親父に殴られ続けていた俺を庇った時のことを……」

「あぁ!?」



 あぁ……痛いなぁ……。今倒れたのも、頭を蹴られ続けたのも、もちろん刺された左脚も。ずっとめちゃくちゃ、痛い。それでも俺は、立ち上がる。



「あの時俺は決めたんだ……。どれだけ痛くても、どれだけ苦しくても。お前が虐げられてる時、俺が絶対に守ってやるって。大切な人は絶対に守るって、決めたんだ」

「だから何だってのよ……!」



 左脚は依然動かない。立ち上がるので精一杯で一歩踏み出すこともできやしない。



「別に何でもないよ……ただの子どもの頃の思い出だ。今のお前は俺を守らないし、今の俺はお前を守らない。俺たちはそういう風に育ってしまったんだから……いつまでもそんなガキのようにはいられない」

「当たり前でしょ……あんたなんか大嫌いなんだから……!」



 それでも拳は握れる。立ち上がれる。立ち向かえる。



「だけど礼は言っとくよ。お前のおかげで今の俺がある。今までは考えもしなかった、誰かに大切にされる自分に。おかげで俺はお前とも戦える」

「はっ! あんたの脚は! 努力でどうこうなるもんじゃないでしょっ!?」



 アクアが立ち上がり、俺の頬を殴りつける。痛い。痛い……が!



「脚が動かなくても! そんなの関係ねぇよっ!」



 俺はその場から一歩も退かず。アクアの顔面に、俺の顔面をぶつけた。すなわち頭突き。そしてアクアは、



「お……ゃん……」



 最後に言葉にならない言葉を残し、床に崩れ落ちた。



「ジン……こっちも終わったよ」



 白目を剥いて倒れるアクアを見下ろす俺に、斬波が近づいてくる。気づけば周りにいる男子生徒はみんなアクアと同じように床に崩れていた。



「ジンさん、こっちも終わりました!」

「証拠、たくさん。これでこの学校も終わりですね」



 杏子さんのメイドの風花さん、来海ちゃんのメイドの冬子ちゃんが教室に入ってきて俺に駆け寄る。



 2人に頼んでいたこと。それは校長室と職員室への侵入。身体が小さい2人だからこそできることだ。



「校長室で虐め調査のアンケートの改竄が行われていました。動画も撮ってあります」

「ありがとう……ここまで上手くいくとはな……」



 これで東山高校は実質終わり。アクアも倒せたし、俺の目的は全て達成した……と思っていると、斬波が難しそうな顔をしていた。



「ジン……これでよかったの? 妹さんが……」

「……いいんだよ。俺の家族はみんなだけだし、妹は。みんなの主人だけだ」



 こうして俺は。アクアと完全に袂を分かった。

総合評価10000pt突破! ありがとうございますっ!!! 引き続きがんばりますのでどうぞ変わらぬ応援よろしくお願いしますっ!



そして次回更新で第2章終了になります! と言ってもエピローグ的なお話ですが。その後早苗さんとの学校生活編になります!


それではおもしろい、続きが気になると思っていただけましたら、☆☆☆☆☆を押して評価を、そしてブックマークといいねのご協力よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 妹ちゃん昔は少なからずとも兄妹愛みたいなのがあったのか。 毒家族と暮らしていると歪んじゃうし覆水盆に返らずか。
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