第11章 第12話 意味のない
〇ジン
「ねぇジン、ひさしぶりだね。一緒に寝るの」
「ここまで近いのは本当にひさしぶりだな」
一つのベッドに入り、会話を交わす俺と斬波。暗くてよく見えないが、斬波の表情は明るく見える。
「まだ12時だね。ジン全然眠くないでしょ」
「いや今日は疲れたからそこそこ眠いな」
「疲れた……?」
「なんで怖い顔してんだよ」
あぁそういえば未来とホテルにいたなと思い返していると、斬波が口を開く。
「こんなの早苗が見たら怒っちゃうね」
「そうかな。怒らないんじゃないか?」
「怒るよ。絶対ね」
「まぁ確かに。斬波が他の奴と寝てたら怒るかもな」
「だから私は早苗と付き合ってないって」
「そう……だな……」
早苗の話をしていると、少しずつ眠くなってきた。そこに斬波の声がじんわりと耳に届いてくる。
「ジン……本当変わったよね……」
「だから環境が変われば変わるって……」
「……じゃあ私や早苗と一緒にいる時より、侑や杏子と一緒にいた方がよかったってこと?」
「別にそういうんじゃないって……。なんとなく……わかるだろ? なんかそういう感じなんだよ……」
「ふふ。全然わかんないよ。なんとなくはわかるけどさ」
「やっぱわかるんじゃん」
ただ会話をする。意味のない会話を。本当に、意味のない。ただの雑談を。
「ねぇ、ジンって今幸せ? 早苗と一緒じゃなくても幸せでいられる?」
「どうだろうな……幸せだと思うよ。ずっと前も言ったと思うけど、早苗が運命の相手、ではないだろうし。相性いいか悪いかで言えば悪いだろうし、早苗と別れても誰かとは付き合って結婚するだろうし。早苗だってそうだろ……? 別に俺とじゃなくてもいい。好きな相手と一緒にいられれば幸せなんだよ」
「冷たいねジンは」
「事実だろ。だからどっちでもいいんだよ早苗と付き合わなくたって……。ただ今の俺は早苗と付き合いたいだけで、時間が経てばそれも変わると思う。結局は時間だよ」
「早苗は……どう思ってるんだろうね」
「何となく……わかってるんじゃないか。時間はないって」
結局やはり、意味はない。ただ普通の話。普通の話をしながら夜は更けていく。早苗のことを考えながら。